時計の日付が変わろうとする頃、私は三馬鹿トリオと

クソ坊主の部屋にLEDライトを片手に向かっていた。

当然、病棟の電灯は消えているが、別に気にならない。

夜勤でこの時間帯の巡回は慣れているし、いよいよ計画を実行に

移すことを考えると、嫌でも気合が入る。

私は、暗闇で獲物を狙う猛禽類fフクロウになっていた。

いよいよ、病室に来た。

偶然の一致か、2階の96号室。私は、ニヤリと笑った。

三馬鹿トリオのイビキは10時の時と変わっていない。

仕切りのカーテンのすき間から確認すると、ぐっすり眠っている。

お利口さんだ、今度ヨシヨシしてやろう。

肝心の獲物の坊主はと、息を潜めてカーテンをソット開けると

枕を抱いてスヤスヤと眠っている。

私は、音を立てずにカーテンの中に忍び込んだ。

おあつらえ向きにこちらに背中を向けて寝ている。

行方不明になっていたこの憎い仇が私の勤める病院に入院、

しかも私の担当になるなんて運が良すぎる。

私は、神に感謝した。

もとも、この男にしてみれば、悪魔の仕業と呪うであろう。

いよいよ、復讐するときが来た。

その手段は、今日この時までメッチャ考えた。

階段から突き落としてやろうか、いやいやそれは生ぬるい、

屋上に呼び出し真っ逆さまに突き落とす。

それとも、点滴にジワリジワリと毒を混ぜようか、

食事に毒を入れて一思いにやろうか。

お風呂場で浴槽に沈めてやろうか、濡れタオルで口と鼻をふさいで

窒息死させようか。

あのナルシスト女を空き部屋に連れ込み、ボコボコニして、

間接的に精神的に追い詰めてやろうか。

色仕掛けでたぶらかし、きわどいところで逃げ出し、

レイプされかけたと、訴えようか。

考えられることはすべて考えたが、結局、病院に迷惑をかけるのは

絶対にやめようと決心した。

日本の警察は、優秀だ、絶対に、捕まる。

私もプライドを捨てて、自ら手を汚し、こんな男のために

人生を狂わすのは馬鹿らしい。嫌である。

しかし、このまま何もしないで大人しく退院させるのは、

断じて阻止する。

私は、クソ坊主の掛布団をめくり、腰椎のあの場所に狙いを定めた。