玄関にささったままのカギ

実家のトートーメー(仏壇)を我が家に引っ越す計画がおじゃんになった。

旧暦の12月30日までに引っ越す算段だったが、

トートーメーを守っている91歳母は気乗りしないようだ。

 

ユンジチだからその年にやると問題なくやれると説明したが、

そうしてもらうと助かると理解を示す一方、

93歳父が亡くなったときのことも考えているようで、

この家から送り出すという強い信念も示したりする。

 

やるかやらないか、

気持ちが行ったり来たりして埒が明かないのだ。

 

ユンジチとは旧暦で月が13回あること。仏壇や墓の行事をやるのに好都合の年といわれている。

 

それにアルツハイマー型認知症の母を、

いつまでも一人暮らしさせておくわけにはいかない。

父のいる老人ホームは幸い夫婦部屋もある。

父も面会のたびに「あんたもおいで」と母を誘っている。

 

要介護1にもなって入居の資格も得たが、

トートーメーを守らないといけないので家を出るわけにはいかない、

と口癖のように言っている。

 

トートーメーを引っ越して、

それから母を父のいる老人ホームに入居させる、

これが真の狙いだが話し合いは決裂した。

 

認知症とはいえ、

まだしっかり一人暮らしができている母。

その意向を無視してまで、

これまで長男嫁として守ってきたトートーメーを引っ越すわけにはいかないのだ。

 

取り上げたら認知症がひどくならないか、

一抹の不安もある(過日実家を訪ねたら、玄関のカギ穴にカギがささったままになっていた)。

 

だからここは長男の私が一歩引き下がることにした。

 

母は週3回のデイサービスと週1回のヘルパー訪問、週1回の健康センター通い、週1回のコープ配達、毎日の新聞配達の見守りで外部の目が届く態勢はできている。

 

それに週1回は、

父の洗濯物をホームに届けるために私が実家を訪ねることになっている。

 

私には要介護2のパーキンソン病の妻もいる。

こっちの方が手は掛かるが、

妻も私の大変さを理解しているので、

私の身体が続く限りはこの態勢で行くしかない。

 

社交恐怖症の18歳息子もこのうち、

父の手助けができるようになるでしょう。