出産を終え、眠れない夜を過ごして迎えた翌日。
副作用の高熱も朝には治まり、経過も順調だったため無事に退院できることになった。
朝一番で死産届を役所に提出しに行った夫から電話がかかって来た。
『火葬の日はいつが良いかな?』と。
私はなるべく綺麗な身体の状態で旅立たせてあげたかったのと、
長く一緒にいればいるほどお別れが辛くなると思い、火葬は明日にお願いすることにした。
だから、一緒に過ごせる日はこの日1日だけになる。
夫が病院に迎えに来て、時生くんのお棺とともに車に乗り込む。
看護師さんとずっとお世話になった主治医の先生が深く頭を下げてくださった。
不安だらけだった私たちの、どんな質問にも時間をかけて丁寧に応えてくれた先生。
本当に感謝の気持ちでいっぱいだった。
家に着いてからまもなくして、両親(時生くんにとってのじいちゃんとばあちゃん)たちが会いに来てくれた。
『うちの、可愛い孫ちゃんだもんね』
という言葉が小さい小さい時生くんを受け容れてくれたようで嬉しかった。
みんなで一緒に、お棺いっぱいにお空に持っていくお土産を詰め込んだ。
じいちゃんばあちゃんがたくさん作ってくれた折り紙。チャンピオンの靴下。
夫の実家のお庭で育った花たち。
アンパンマンのお煎餅、私たちからのお手紙。
『良いなぁ、時生。こんなにいっぱい。』
じいちゃんが話しかけてた。
両親たちが帰った後、気が抜けたのか、
とたんに悲しみが襲って涙が出そうになった。
なるべく時生くんの前で泣きたくない。
『ママは、僕じゃ嫌だったのかなぁ?』なんて思われてしまいそうだったから泣きたくなかった。
だから時生くんから見えない隣の部屋に行って、 夫と抱き合いながらふたりでワンワンと泣いた。
その日の夜も身体は限界だったのに、眠れなかった。眠ってしまうのがもったいなかった。
夜中の1時過ぎに時生くんを眺めながら過ごす。
可愛い、可愛い。
首を少し傾げて笑ってるようなお顔も、胸の前でしっかり組まれた小さなおてても。
朝方は時生くんのお棺をトントンと叩いて、寝かしつけたような気持ちになれた。
私の方がリラックスして、こっちが寝かしつけられてるようだった。
もう2度と戻って来ない、贅沢な夜だった。