医大の診察日が来た。

先生がエコーを見ながら静かになる。

この時間が1番緊張する。



『膀胱は、先週より小さくなってます。』



思いがけない言葉が先生の口から出た。



でも私はなぜかエコーを見て、違和感を感じた。

どんな違和感かは分からないけれど、

これまで見てきた赤ちゃんと違うものに見えた。



先生の口が開く。



『ただ...赤ちゃんの心臓が止まってしまってます。

亡くなって、おしっこを作らなくなったから、

膀胱が小さくなったのでしょう。』



そうか。赤ちゃん、亡くなったんだ。



泣くわけでもなく、取り乱すわけでもなく、

ただ冷静に先生の話に耳を傾けた。



『おふたりが産むと決断していたとしても、

先週お話しした胎児治療ができるのはまだ先のことでしたし、

今回はこの子を助けることは、どうしてもできませんでした。』



と言われた。



赤ちゃんは14週から15週の間の、

どこかのタイミングで息を引き取ったことになる。



赤ちゃんの最期の瞬間、

私は何をしていただろうか。

家族でご飯を食べてるときだったのか。

夫と並んで眠っているときだったのか。

産むか堕胎するか悩んでいるときだったのか。


せめていつ頃亡くなったのかだけでも知りたかったけれど、

赤ちゃんの状態を見てもそこまでは分からないらしい。



1週間後に入院することになった。

子宮頸管を広げて陣痛促進剤を投与し出産する。



看護師さんから入院に関する説明を受けている間、

悲しいとか辛いという感情は不思議と起こらず、

ただ今後の流れを理解することに必死だった。