ひさびさに他者に対して『腹がたつ』という感情を覚えるなど。
誰かに共感してもらえるとも思えず、たとえプロダクションの担当に「これは不快なのでやめてほしい」と話しても「たいしたことじゃない」と一蹴されそうで言えずにいる、そういう些細なことで。
たしかにこの部分は捲るときに力が加わるに違いないけど、こんな風になるまで圧かけるか????
10年この仕事してきてじぶんが作業してこうなったことは一度もない。
なのに、ここ1年くらいで定期的にこの状態でゲラが届くようになった。
しかもこうなってるときは必ず体裁を確認するために文字数を数える際残してはいけないと言われている鉛筆の跡もある。
文字の横に「. . . . . . . . 」という具合に。
これ、わたしがこの業界に入るときにかなり序盤で師匠から「文字を数えるときは跡が残らないように鉛筆のお尻で数えなさい」と教えられたことで、実践の場でこの跡を残しているゲラに出会ったことはない。
誰なんだこんな作業をするやつは。
しかも、どうやらうちのプロダクション内の人間に違いなくて余計謎。
師匠がいるあの会社では間違いなくこんなことしてたら注意されるはずで、それが野放しにされているという実情って、どういう状態なんだ。
もしかしたら経験者を中途採用したとかで、変な癖があるまま実務に放り出したのか。
もしくは師匠が教える立場から退いたとか。
考えたところで正解がわかるはずもなく。
ただ、こんなに無頓着に自分勝手に汚い折り目をつけてしまうような人間は、きっと相当自己中で頭が堅くて思考が凝り固まってるに違いない。
というのはわたしの偏見。
とにかく、どこの誰かも知らないひとに対して、わたしは怒っている。
それとともに、じぶんが逆の立場になるようなことはしないようにしようと肝に銘じた。
じぶんが不快に感じることを他人にはしない。
いつもそれを心に留めているけど、誰かに怒りを覚えたときは特に、わたしはそれをしない、と思う。
もしかしたら、向こうはそれをわたしが不快に思うなんて想像もしてないのかもしれない。
たいしたことじゃないと思っているのかもしれない。
だとしたら、向こうに罪はないと言えるのか。
怒りを覚えるほうが馬鹿なのか。
わたしは想像しないできないほうが馬鹿だと思う。
よし、わたしはきちんと丁寧に心を込めて仕事しよ。
わたしはわたしのできることを可能な限りの最高な状態で、する。

