雨。
これが雪にならないのが今年の冬。
真夜中、子どものころから好きなミュージシャンの訃報が目に飛び込んできた。
ずっと闘病していたことは知っていた。
快癒して、また3人揃って演奏しているところを見たかった。
何年前だろう、長年それぞれで活動していた彼らがまた3人でライブすると知って、それが目当てでとあるフェスに行った。
生で3人揃ってるのを見たのはそれが最初で最後になってしまった。
どんなに才能があろうと、環境に恵まれていようと、人間は脆い。
何度も何度も思ってきたことだけど。
お昼ごはんを食べながら、わたしが見たいだろうと気を利かせて母が録画してくれていたこれを見た。
たぶん、この仕事がどういうものか知らないひとが見たら驚いたり感心したりすることもあるかもしれないけど、わたしにとっては新しく得られるものは特になかった。
あ、そんなことなかった、ひとつあった。
「特に何か一言書くでもなく、ただ気になった語の横に線を引くというテクニックがある」
みたいなことを言ってて「まじか」とは思った。
それ、うちのプロダクションだったら「指摘の出し忘れか単なる消し忘れですか?」と連絡が来るやつ。
たしかに線が引いてあったら目には留まるだろうけど、その意図に気づけるひとってそうはいないんじゃないか。
気づかなくても目に留まればいい、ということなのかもしれないけど、わたしは「念のため」と書き添えてじぶんの考えを伝えることを選択する。
まぁひとそれぞれやり方は違うから、「そういうやり方もあるんだ」くらいに受け止めておく。
それ以外はほぼ共感することしかなくて、同業者ってやっぱりみんな同じこと考えて仕事してるんだと再確認した。
「できるのが当たり前で褒められることなんて滅多にない。でもミスはひとつでもあったら叱られる」
それはほんとにそう。
わりと仕事始めて初期の段階で躓いて、しばらく心を病むのも同業者のデフォルトとみた。
ていうか、文芸のいわゆるメインどころの仕事って誰がやってるんだろう、版元専属のひとなのかな、フリーランスかな、と常々思ってたけど、あれもこれもそれもこのひとがやってたんかい、と長年の謎が解けた感はある。
くっそー、売れっ子め。
などと言ってないでわたしはわたしの仕事をせねば。
今手元に同時に2本案件があって、1本は今日中に終わる予定なのだけど、もう1本はひさびさのご指名での依頼なのでしっかり時間をとって向かわないといけないのだ。
1本目もそこそこの分量があるのに、それが届いた日に「昨日の今日で申し訳ないんですが、先方からぜひ○○さん(わたし)にお願いしたいとのご指名で」と、担当Nさんから連絡があった。
今届いたばかりのこの案件に、手もつけていない状態で?とは正直思ったが、そんなことはおくびにも出さず、これにじゅうぶん時間をかけてもあまりあるだけの納期をいただけたこともあり快諾した。
ここ何作か続けて担当させていただいてるシリーズものなので、ここで途切れさせるわけにはいかんとも思ったりして。
ま、別にわたしがやらんでも同じことができるひとは山ほどいるので、そこらへんは何も心配してないけど、次にじぶんが担当することがあった場合、続けて読んでるほうが作業が楽、という利点があるので。
だいぶ文体にクセがある著者さんで、特に読み手が混乱しないように登場人物の呼称は統一するのが普通だけど、この方は場面場面で同じ人物をいろんな別称で表記したりする。
何作か続けて読んでるわたしでも「これは誰のことを言ってるんだ」となることが度々あるので、初めて読むひとなんて混乱しまくるに決まってる。
そういう意味でもやっぱりわたしが担当すべきなんだこの案件は。
とりあえず1本目の続きをやろう。
バンドやら楽器やらがたくさん出てくる物語で、ストーリーそのものはアレだけど、知ってる音楽用語がそこここに鏤められていて「はいはいはいはい」とか言いながら読むのが楽しい。
いろんなバンド名の正しい表記とか調べる機会が今までなかったので、これってここに「・(中黒)」入れるんだ!知らなかった!とかひとりで内心騒いでる。
表記といえば、アイスのピノって、正しい表記は「pino」だとずっと思ってたけど(商品のパッケージにもpinoって書いてあるし)、メーカーのサイトを見ると「ピノ」って書いてあるんですね。
じゃあパッケージにもでっかく「ピノ」って書いたらいいじゃない、と思ったりもしなくはないが、まぁどうでもいいです。
今日もどうぞ穏やかに健やかに。
