好きで見ているドラマの参考文献に、このタイトルがあって「あっ」となった。


昔、書店員だったころ文庫を担当していて、しょっちゅう背表紙を見ていた。
売れた記憶はないけど、ずっと定番として棚に並べるべき1冊だった。
何度も何度も目にはしていたのに、一度もその内容を知ろうとは思わなかった。
そのタイトルに、さっき再び出会った。

どんな事件だったのか知ろうと思って、検索したら出てきたこの記事を読んだ。
ぜんぜん、ほんとに露ほども知らなかった。
10年以上前、わたしはこの現場界隈を歩くことがわりと多かった。
とはいえ夜はさすがに怖い場所だと知っているので、明るい時間帯しか歩いたことはない。
でもなんかたとえばNHKホールから渋谷駅に戻る途中、松濤のあたりを通るんじゃなかったか。なんかそんな記憶がある。
豪邸が並ぶ静かな街をライブが終わったあと歩いていると、わたしはこんなとこを通っていいのかと不思議な気持ちになっていたのを思い出す。

それより10年以上前に、すぐ近くの円山町でこんな事件があったということなんて、まったく知らなかった。お地蔵さんがあることも初めて知った。



壊れてしまったんだろうなぁ。
境遇的に共感できることはなにひとつないから、亡くなったこのひとのことを理解するのは難しいけど、想像だけはした。
今よりよっぽど社会で女性が生きていくのが難しかった時代に、きっとこのひとの気持ちを理解できるひとなんてほぼいなかったんじゃないか。

じぶんが殺されると悟ったとき、彼女はどんな気持ちだったのか。
わたしにはなんとなく、そこに至るまでの過程が、もしかしたら彼女が求めていたことなんじゃないかと思えたりもした。
絶望しか見えなくなった人間て、たぶんみんな緩慢に死に向かっていくもののような気がする。
それがどのような手段かはひとそれぞれだとしても。

救いがない。
しんどい。

なんだか今、この事件のことを知れてよかった。