シオリ(ナナ)の話し | Animal Life Saver

Animal Life Saver

福岡県大牟田市を中心として、どうぶつ愛護活動をおこなっている団体です

代表の石村です。

先日、モカが他界した話しをしました。

ここ数ヶ月間はずっと、寝たきりの犬たちがいて、昨年12月は3頭並んでのお世話でした。

 

 

保護した親子犬も室内にいましたので、11頭の犬たちが所狭しの状態でした。

 

 

モカの前に他界したのは、シオリ(ナナ)という老犬でした。
さらにその直前にはカールという子が他界しましたが、カールについてはまた後日。

今日はシオリ(ナナ)という子の話しをさせてください。

 

 

シオリ(ナナ)は、3年前に南筑後の保健所に大牟田市から収容され、お迎えもなく期限切れのところを引き取ってきました。

 

 

何故かこの子とは、ずっとどこかで会った気がしていました。

シェルターに預かって、シオリという名前を付けました。
それから2ヶ月ほど過ぎてからのことでした。
毎日、顔を見ていて、やはり、どうしても気になって、数万枚の写真を過去に辿って、やっとこの子の姿を見つけました。

それはその日から、遡ること14年も前の写真でした。
現在からなら、17年も前の写真です。

最初は、とても信じられませんでした。

 

 


この子は、当会が結成される以前、大牟田市動物管理センターから、私が個人で預かって知人に譲渡した犬でした。

人から身体を触れられるのが怖くて、ビクビクしながら逃げ回る子でした。

収容直後は、首輪がギュウギュウに喰い込んでいました。
子犬の頃に首輪されて、そのまま調整されることなく、育ってしまったからでした。
もう一歩で、死んでいてもおかしくありませんでした。

それが原因で、首のしなやかな動きはできず、他の犬たちに比べると、ギクシャクしたような身のこなしの犬でした。

その後、知人のお宅に引き取られてからは、ナナという名前をもらい、それは大切にされていました。
昔から犬好きのご家族で、室内犬として可愛がってもらっていました。
なぜかそこのお母さんにだけは、ナナが身体を触らせました。

そちらに引き取っていただいたのは、それが第一の理由でした。

普通はここでハッピーエンドかと思いますが、お引き渡し後数週間目に、なんと子犬を4頭産みました。

 

 
 
 

子犬たちが産まれるまで、誰も全く気が付きませんでした。

新しいご家族のもとで、美味しいものをたくさん貰って、「太り始めた」と連絡と写真は頂いていたものの、まさか妊娠していたとは誰も疑いませんでした。。

その子犬たちが成長して、無事に貰われてしまうまでの話しもあるのですが、長くなりますので割愛します。

その後、ナナは避妊手術も無事に終えて、しばらくは平和に暮らしていました。

いつの間にか、私は団体を作り、多忙な毎日を送っていました。
毎日の仕事と、犬猫の相談事、ポスター貼りや捕獲作業。

脳味噌は常に容量オーバーでした。
様々な事を、手帳に書いていても、たくさんの案件が溢れてしまいました。
(それは、現在も続いております。)

当時のそんな案件の一つに、ある日、「ナナが家から脱走してしまった」という連絡が入っていました。

捜索に行きたくても、とても時間が作れませんでした。

幸いナナは、そのお宅の付近の空家の床下に出入りしていることが判っていましたので、時間を掛けて馴らしてもらい、捕獲してもらえるようにお願いしていました。

交通事故なども心配ない場所でしたので、動物管理センターに収容される以外は、不安なこともありません。

また、動物管理センターは、ずっと副代表の岡村さんが通っていましたので、ナナが収容されればすぐに判ります。

気に掛けてはいましたが、その後、ナナが収容されることも無く、他の様々な犬猫たちを心配している内に、いつの間にかナナについては失念してしまっておりました。

それから、実に14年後の再会です。
その間、文字通り数え切れない犬猫たちに関わった私たちには、ナナのことが30年も昔の出来事だったような遠い記憶になってしまっていました。。。

全く、写真で照合するまでは、見たことあるような気がする程度にしか、思い出せなかったのですから。

 

 

 

 
※目の周りが白くなっていて、違う犬にも見えますが、体の斑点や動きから、間違いなく年老いたナナです!!

 

すっかり疎遠になっていましたが、ナナを引き取ってくれた知人に連絡を取り、ナナに間違いないことを確認しました。

聞けば、脱走してから何年間も、ナナの安否を気にしてくれていたそうです。
 

ナナの脱走後に、その家から離れなければならない事情ができて、仕方なく引っ越してしまっていたそうですが、その後も何度も見に行き、無事は確認していたそうです。

近所の方がお世話してくれてあったので、何かあったら連絡をお願いしてありました。
一度だけ連絡があって以来、何年か過ぎたころには、お世話してくれていた方とナナは、両方とも行方がわからなくなっていたそうです。

一度だけの連絡によると、ナナは数年間、大きなオスの野良犬と行動を共にしていたそうです。
しかしある時から、またナナひとりだけになったそうでした。
ある日その方が、ナナが寝泊まりしていた空家の床下を覗くと、白骨化したオス犬の横に、ナナが添い寝をしている姿が見えたそうです。

その後の情報は無く10年以上過ぎた頃には、ナナはもう生きてはいないだろうと、関係者みんなが暗黙の内に、記憶の闇にしまい込んでしまっていたようでした。

なぜもっと心配してあげなかったのかと皆さんは思うでしょうけれど、うっかりしてしまうとは、本当にこういうことです。

何もできていなかった私が一番悪い。
本当にすっかり忘れてしまっていたのですから。

連絡を取った時点で、ナナを引き取ってくれた知人は、すでに犬を飼える状態ではありませんでした。
そのご家族の間でも、14年の間にいろいろなことがあった様子でしたので、ナナを今後どうするかは、私から相談することはありませんでした。

ナナは長い間、放浪していました。
仲間もいなくなり、たったひとりでした。

ご飯をもらえる宛もなくなり。
お腹が減って、最後にとうとう覚悟を決めたのでしょう。
保健所の捕獲器に入ってしまいました。

幸運にも私たちの目に止まり、帰って来ることができました。
巡り巡って、もとの私のところに。

出発点の私のもとに、いつの間にか帰っていました。

これは偶然でもなんでもありません。
失念していたにせよ、この子が危ない時は、必ず助けるつもりだったのですから。

そして危ないところを拾い上げることができた。

無責任だった私が、一つの約束だけは守れました。


14歳のナナの余生は、私のもとにいてもらいたいと、心から思いました。

ナナが大切な友達のオス犬を看取った後、骨になっても寄り添ったように、今後は私がナナのそばに、最期まで寄り添っていたいと思いました。
健気なナナの素性を想うと、心から愛おしかった。

それからこの場所で3年が経ち、3ヶ月間寝た切りのすえ、昨年12月の23日に、17歳で永眠しました。


脳梗塞による半身不随だったので、褥瘡対策など大変でしたが、そのお陰で沢山抱き締めることができました。
抱き抱えていると、遠慮がちに振られる尻尾が、とても嬉しかった。

一緒にお世話してくださっていた犬チームの皆さんに、別れの当日、私から送ったメッセージが残っていましたので、以下に貼付けておきます。
※ナナは、当会が引取った時に、栞(シオリ)という名前を付けていたので、私と岡村さん以外の皆さんは、栞(シオリ)が通称でした。

『早朝3:00ころ、栞が逝ってしまいました。
 

私が起きて様子を見に来るのを待っててくれて、最期に会えたのを喜んでくれて、そのままほとんど苦しまずに眠りにつきました。
 

犬たちの地道で素直な気持が悲しすぎます。。』



ここでの3年間は、沢山の仲間犬たちとメンバーさんに囲まれて、決して淋しくはありませんでした。

 

 

 

 

また、沢山食べて空腹で辛いようなことは、決して無かったと思います。
太り過ぎて心配したくらいだったので。

 
 
 
 
 

そうして、長い間みんなに忘れられて一人ぼっちだったナナ(シオリ)は、今では決して忘れられない私たちのナナ(シオリ)となりました。

 
長生きしてくれて、本当にありがとう。
しっかり、寄添わせてくれました。

悲しくとも、私の願いを叶えてくれました。

 




とても長い話を、最後まで読んでくださってありがとうございます。




ナナ(シオリ)だけではなく、保護犬たちはどの子にも、いろんな物語があったはずです。

しかし、ここにいるからには、捨てられたか、裏切られたか、忘れられたか。
まず明るい話しではなかったことでしょう。

しかしまだまだこの先に、物語が続くなら。
ここで再出発できるなら、明るい話しにできるに違いありません。

そのためには、続けることが大切です。
まだまだ決して終われない。


どうか皆さんお願いいたします。
現在、当会は危うい状態にあります。

ここにいる犬猫たちに、これからも物語が続きますように。

この場所が失われませんように。

今後とも、どうかお力添えをお願いできましたら幸いです。

 

 

 


 

大変申しわけございませんが、当会の窮地に、応援をよろしくお願いいたします!!

心から恐縮ですが、どうかお願い申し上げます!!