シン・エヴァンゲリオン 劇場版
※ネタバレです。
製作年 2021年
製作国 日本
上映時間 155分
総監督・企画・原作・脚本 庵野秀明
監督 鶴巻和哉、中山勝一、前田真宏
エグゼクティブプロデューサー 緒方智幸
コンセプトアートディレクター 前田真宏
総作画監督 錦織敦史
作画監督 井関修一、金世俊、浅野直之、田中将賀、新井浩一
副監督 谷田部透湖、小松田大全
デザインワークス 山下いくと、渭原敏明、コヤマシゲト、安野モヨコ、高倉武史、渡部隆
CGIアートディレクター 小林浩康
CGI監修 鬼塚大輔
3Dアニメーションディレクター 松井祐亮
3Dモデリングディレクター 小林学
3Dテクニカルディレクター 鈴木貴志
3Dルックデヴディレクター 岩里昌則
2DCGディレクター 座間香代子
動画検査 村田康人
色彩設計 菊地和子
美術監督 串田達也
撮影監督 福士享
特技監督 山田豊徳
編集 辻田恵美
音楽 鷺巣詩郎
テーマソング 宇多田ヒカル
音響効果 野口透
録音 住谷真
台詞演出 山田陽
総監督助手 轟木一騎
制作統括プロデューサー 岡島隆敏
アニメーションプロデューサー 杉谷勇樹
設定制作 田中隼人
プリヴィズ統括制作 川島正規

出演 緒方恵美、林原めぐみ、宮村優子、坂本真綾、三石琴乃、山口由里子、石田彰、立木文彦、清川元夢、関智一、岩永哲哉、岩男潤子、長沢美樹、子安武人、優希比呂、大塚明夫、沢城みゆき、大原さやか、伊瀬茉莉也、勝杏里、山寺宏一、内山昴輝、神木隆之介 他

あらすじ
絶望に打ちひしがれるシンジは、アスカ、レイと共に放浪していたが、ケンスケに助けられ、トウジやヒカリらと再開する。一方、ミサト率いるヴィレはネルフとの最終決戦が目前に迫っていた。



僕は1990年生まれということで、エヴァンゲリオンという作品にはそれなりに、というかかなり思い入れがあるのは間違いなくて。

初めてテレビ版を観たのが5、6才の時で、ちょうど初号機が暴走する回。あまりの恐ろしさにトラウマになり、高校生になるまで観れなかったという...。

高校生の時には完全にドハマリして、しかも新劇場版が公開されたこともあって、思い返すと死にたくなるんですが、自分なりの考察なんかをノートにまとめてみたり、コンビニで売られてた「エヴァンゲリオン完全考察」みたいな謳い文句の文庫を買って少ない小遣いを無駄にしてみたり

とりあえず大学生までは新劇場版は必ず公開初日に観るぐらいの熱量はあったんですが、社会人になって、さらにここまで時間が空くとさすがにどうでもよくなってくるというか...。

ていうか、そもそも僕は前作「Q」が当時はあんまり好きではなかったというのもあるかも。そりゃあシンジくんがウジウジするのは毎度のこととはいえ、「破」でかなり成長した雰囲気だっただけに、「またか...」という気持ちにもなり。さらにこちらも毎度のことながら訳知り顔で、さも「重要人物でござい」みたいな雰囲気で登場するカオルくんにしたってねぇ...。シンジに対して「いいよ...キミとの音。」だの、「僕はキミに会うために生まれてきたのかもしれない。」だのとかなりキテる発言を繰り返したあげく、あっさりゲンドウに引っ掛かって爆死するという、「お前らいい加減にしろ。」と思うのも無理ないじゃないですか。

そんなこんなで今回のシンエヴァに対しては完全に熱量低めで、正直配信が始まったら観るかぐらいのテンションだったんです。

でも、なんだかんだエヴァはリアルタイムで観てきたし、これで終わりかという感慨も少しはあったのでね。さらに劇場での公開終了が7月21日僕の誕生日ということで、勝手に運命めいたものを感じまして、駆け込みで2回観てきましたよ。

まずお断りさせてもらいたいんですが、僕の本作に関する感想では深い考察的な内容は書くつもりはないです。それこそ学生時代はあーだこーだと考えを巡らせたもんですが、ぶっちゃけそういう部分はどうでもいいです。

とりあえず観終わった直後の率直な感想としては、

皆さん本当にお疲れ様でした。

というしみじみした感慨を覚えましたよ。

後半のメタ構造な描写含め、キャラクターはもちろん、スタッフの方々や誰より庵野監督に対するねぎらいの気持ちが湧いてきて。たぶん本作を観て一番感動するのはエヴァに携わってきたひとたちなんだろうなぁと。
僕も言いたいことは色々あるんですが、まずは前半「第三村パート」は素直にビックリしましたよ。コンバットRECさんとライムスターの宇多丸さんもラジオで言ってましたけど、「このまま2時間半農業だったらどうしよう...」ってガチで思いました。

でも僕はこの前半はかなり好きでしたね。特に前作の「Q」では上映時間が短かったこともあり、全体的にスケール感がなくなっちゃった印象があって。今回の「第三村パート」では多様な人々の暮らしが確かにそこにあるという実感も感じられて、すごく世界が広がった感がありました。

まあ、シンジがウジウジモードなのはアスカも言っていた通りいつものことではあるんですけど、それでもシンジ「なんでみんなこんなに優しいんだよ!」って言った時は、なんとなく自分が「うつ」で苦しんでたときを思い出して、思わず涙しちゃいました。

それから綾波レイ(仮)農業奮闘記とかは若干エヴァのパロディっぽくて楽しかったし、すっかり大人になったトウジケンスケヒカリに関しては、何故か3人が画面に登場するだけで泣きそうになるぐらい、なんだか感極まってしまいました。

後半はいよいよヴィレネルフの最終決戦になるわけですが、ぶっちゃけクライマックスのシンジゲンドウ直接対決に関しては、「やっぱりそこなんだ。」という気持ちにならなくもないというか。

そりゃあ最後はシンジが父親と対峙して乗り越えるっていうのはシンプルに考えやすいクライマックスだし、別にそれ自体がダメと言ってるわけではないんですけど、正直「25年もかけてやる話かね?」って思っちゃう僕はいじわるですか?

それに、これも前からわかってることですけど、ゲンドウって結局は自分の個人的な願望の成就のために全世界の生命を巻き込んだとんでもないクズであることは疑いようがないわけで。そんなクズに「大人になったな。」なんて台詞を吐く権利があるんですかね?

それから後半の記憶世界シークエンスは、まあエヴァっぽいと言えばそうなんですが、こういうくだりも何回も観たじゃないですか。作劇としてもグダグダしてる感があるし。映画としての完成度で考えるなら、明らかにもう少し短いほうがよかったと思います。

でも、たしかに文句はたくさんあるんですけど、個人的にはそんなことはどうでもよくなるほど、感動感慨が大きかったですかね。

やっぱり一番強く思ったのは、

「おれ、こんなにエヴァ好きだったんだな...」

ということで。
いつの間にかシンジたちの年齢を追い越して、30過ぎになりましたけど、それだけに大人になったトウジケンスケヒカリの姿は特に感慨深かったですよ。しばらくエヴァは観てなかったですけど、その間も彼らの時間や人生は確かに流れていたのだという実感がありました。

そう、たぶん僕が今回一番涙腺を刺激されたポイントは、まさに「時間」にあったんじゃないかと思うんですよ。

特にそう感じたのが後半のシンジミサト抱き合うシーン。14年間で二人の間には大きなができてしまったけど、それでもこの二人には確かに強い絆があって(本作での三石琴乃さんの演技は5億点)。

それから初号機の中で14年間もシンジを待ち続けたレイとか、シンジに対する気持ちを伝えられないまま自分だけが成長してしまったアスカとか。それから出番こそ少なかったですけど、最後の戦いを前に物言わず拳を合わせるマコトとシゲルとか、とにかく全ての、特にエヴァの初期キャラクターたちがこれまで過ごしてきた「時間」だったり、「想い」みたいなものが凝縮された作品だったなと思います。

さっきは文句も書いちゃいましたけど、シンジゲンドウの親子関係にしたって、ハタから見ればどうなのって感じはあるし、もっと早く解決できなかったのかとは思うけど、実際あそこまで関係性をこじらせた親子が互いに本気で向き合うためには、25年という「時間」は必要だったんじゃないかなぁ。

実際エヴァの登場人物はみんな庵野監督自身投影でもあるわけで。「さようなら、全てのエヴァンゲリオン」っていうのは、つまるところ「全てのダメだった自分にさようならを。」という庵野監督成長を描いたということですよね。後半の記憶世界シークエンスにしたって、確かに「いつものエヴァ」っぽい内省的独りよがりなくだりにも見えるけど、どこかそういう部分を俯瞰的というか、客観的に捉えている視点が今回はあって。この辺は庵野監督がやっぱり成長したんだなと強く感じる部分でした。

ラストにしたって、これはもうエヴァとしてはこれ以上ない終わり方だったと個人的には思います。物語というのは登場人物が成長したら終わるっていうのは、ある種当たり前の結末ですけど、ここまで登場人物、つまりは庵野監督自身が、いつまでも成長できない物語だと、こんな当たり前のラストですら、えも言われぬカタルシスがありました。

とはいえ、個人的にはマリとくっつく必要はなかったんじゃない?とは思うんですよ。別にマリは好きだし、シンジが誰とくっついてもいいんですけど、一人立ちというか、母親や母親的存在から護られ続けてきた彼の成長をはっきり見せるなら、最後はシンジだけでもよかったなと。まあこれも庵野監督が結婚したりってのもあるし、現時点での庵野秀明ということなんでしょうから、とやかく言うことじゃないんでしょうが...。

そうなってくるともう作品としてどうこうというよりは、庵野監督が元気になって、前に進むことができて、本当によかったという気持ちの方が大きくて。もちろん作品特有の歪みや、作劇としては必ずしも上出来とは言えない部分はありつつも、どうしたって嫌いになれない作品でした。

ただ、僕が感じたような感動は、エヴァンゲリオンという作品をずっと追ってきたからこその感動であり感慨なので。少なくとも新劇場版は観ておく必要はあるし、テレビアニメ版旧劇場版からの引用なんかも随所にあるので、かなり間口は狭い作品であるのは間違いないかなと改めて思ったりはしました。

今回はなんだか疎遠になった友達に大人になってから再会したみたいな気持ちになる映画体験でしたな。あんなダメダメだったヤツが、久しぶりに会ったらスゲー大人になってたみたいな。

でも、成長したからといってもそこがゴールではないとは思うし、エヴァも、使途もいない普通の暮らしになったとはいえ、それでも泣くような目には散々あうわけですから。これからのシンジくんたち、そして庵野監督の幸せを祈りつつ、感想を終えたいと思います。

公開は終了したみたいですが、早速今月から配信も始まるみたいですので。未見の方はこれを機にイッキ観するのもよろしいかと。オススメです。

個人的評価
9/10

関連作品ということで、よろしければ。


ではまた。さよなら、エヴァンゲリオン(泣)