バーティカル・リミット
※ネタバレです。
原題 Vertical Limit
製作年 2000年
製作国 アメリカ
上映時間 124分
監督製作 マーティン・キャンベル
製作脚本 ロバート・キング
製作 マーシャ・ナサティア
製作総指揮 マイク・メダボイ、ロイド・フィリップス
脚本 テリー・ヘイズ
出演 クリス・オドネル、ロビン・タニー、ビル・パクストン、イザベラ・スコルプコ、ニコラス・リー、アレクサンダー・シディグ、スティーブ・ル・マルカンド、ベン・メンデルソーン、ロバート・テイラー、スコット・グレン 他

あらすじ
ピーターとアニーの兄妹は、数年前の登山中に父親を失い、自信を無くしたピーターは写真家に、アニーは父親の影を追い登山家となる。アニーは数人のチームとK2登頂を目指すが嵐にあい、クレバスに閉じ込められてしまう。ピーターはかつての父親の友人であり凄腕のクライマー・ウィックらと共に決死の救出に挑む。




本作は個人的にかなり思い入れがある作品で、たぶんですけど、同年に公開されたウィリアム・フリードキン監督の「英雄の条件」のビデオに本作の予告が入っていて、それがすごくおもしろそうで。


レンタル落ちビデオを買ってテープが擦りきれるまで繰り返し観ていた思い出があります。




山岳アクションですがフィクション・ラインはかなり高め。たぶんプロの登山家の方からすれば呆れるような場面も多いかと。


それでもその畳み掛けるような迫力のアクションとサスペンスは今観ても見ごたえがあります。


登場人物が文字通り宙吊り(サスペンス)な展開になる場面はかなりハラハラ。


あと、サスペンスを盛り上げるための間の取り方が上手いです。登場人物が、何か壊滅的な状況が起こる一歩手前にそのことにフッと気がつく瞬間の怖さ。ド派手なアクションが満載されている中の、一瞬の「静けさ」みたいなものがかなり効果を発揮しています。


特に好きなシーンが、救出チームのシリル倒れそうになったリュックを押さえようとする場面。彼がリュックを地面に置いて飲み物を飲んでいる時にフッと風が吹いてリュックが倒れそうになる。それを手で押さえようとしたら...というね。ものすごく恐ろしいシーンでしたけど。


この場面、ちょっとシリルを俯瞰的ドキュメンタリーっぽく撮っているのが怖いです。まさに今目の前で水飲んでただけなのに、「あっ!」ていう。ほんの少しの油断が死に直結するという戦慄するようなショットでした。


それから本作の一番の見せ場であろう、ピーター崖から崖に跳び移るシーン。ここは劇場で観たかったなぁ。走っていくピーターの背中越しにカメラも追っていって、彼がまさに空中に飛び出す瞬間の浮遊感は当時劇場で鑑賞した方だけが味わえるもの。かなり迫力あります。


まあ別々の場所で起こっているアクションシーンを同時進行的にカットバックで見せられるのはちょっと過剰に感じなくもないけど、それはそれで楽しくもあり。





登場人物が脇役に至るまでみんな魅力的だというのも本作のポイント。


主人公のピーターアニーが父親の死を巡る兄妹の確執を乗り越えていくサブプロットには素直に感動したし、悪役のエリオットを演じたビル・パクストンは、「調子のいいクソ野郎」をやらせると抜群の素晴らしさ。亡くなられたのが残念でなりません...


ピーターのメンターとなるウィックを演じたスコット・グレンド渋な演技、存在感もさすが。さらに彼がピーターを導くキャラクターでありながら、彼もまたピーターに教えられ成長するという展開もよかったです。


他にも、ハシゴも登れないのに救出チームに志願する男勝りなモニク、従兄弟を救うため命をかけるカリーム、ベースキャンプから救出チームを支えるスキップなどなど皆好きなんですが、僕が一番グッときたのは、


シリル&マルコム兄弟ですよ。



ベースキャンプで全裸で日焼けをするようなイカれ兄弟なんですけど、それでも登山家としては一目置かれているみたいな雰囲気がすごくカッコいいんですよ。


ピーターが救出チームの志願者を募る場面でも、みんなが怖じ気づく中、ヘラヘラしていた2人が急に「これでいいのか!?」「行くぜ!」となる瞬間、僕はもう惚れてましたよ。


ちなみに細かいですけど、序盤の単なる説明要員だと思ってたヘリパイロットのおじさんがわりとその後に活躍するのも好き。




さらに作り手のキャラクターへの愛情もすごく感じるんですよね。役目が終わったキャラクターは死んで退場っていう事務的な感じではなくて、生き残ったキャラクターがちゃんと「死んでいった仲間の想いをつないで生きていくんだ」という意思を感じる熱い物語にもなっていて。


ラストでピーターが命を落とした仲間の写真を眺める場面は目頭が熱くなりました。




個人的にすごく好きなシーンが、ピーターがモニクの骨折した指を真っ直ぐにするために、わざと話をふる場面。ピーターの優しさが表現されてるし、その会話自体がモニクの心情も表しているという、上手い説明セリフの使い方だと思います。


かなりフィクショナルアクション大作なので、正直あんまり突っ込みどころがどうこうは言いたくないんですが、一個だけ言わせてもらうと、


ニトロの扱いがさすがにずさん過ぎるだろ。

実際のニトログリセリンがどういうものかはさておき、とりあえずちょっとした衝撃や日光で大爆発する液体爆薬ということで。このニトロ関係の描かれ方はかなりヒドイと思います。


ニトロがいかに危険なものかを観客に説明するためとは言え、軍の保管庫のニトロが漏れだしているというのはいくらなんでも雑すぎるし、挙げ句の果てにはそれを出しっぱなしにして、日光で保管庫ごと爆発ってバカなの?


大体、こんな危なっかしい代物を担いでK2に登るっていうのも納得できない(軍隊いるのに普通の爆薬とか無かったの?)し、それで氷を爆破して救出って、使用量間違えたらアニーたちまで粉微塵ですよ。


実際、ニトロが爆発したせいで死ぬキャラクターが多いので、よけいに「そもそもこんなもの使わなきゃいけないの?」という気持ちになって...





あと一つだけ!


個人的には悪役のエリオットがちょっとかわいそうだなと。子供の頃は「死ねや( ゚д゚)」と思ってましたけど(苦笑)


彼は「他人を犠牲にしてでも助かりたい!」という人間で、たしかに褒められたもんじゃないんだけど、それでも「それもまた人間じゃん!」という気持ちにもなって。


エリオットは瀕死のトムを殺しちゃうけど、そのことを知ったアニーのことまでは殺そうとはせずに、むしろ助けようとしてて。ホントにクソ野郎だったら口封じに殺しちゃいそうなもんですよね?最終的にエリオットに恨みがあったウィックも彼を許してたし。


別にエリオットに生き残って欲しかったとまでは言わないけど、少なくともラストでピーターが眺める犠牲者の写真の中に、エリオットの写真もあるぐらいのバランスでもよかったんじゃないかと。

出た!「ワイルドバンチ」歩き!年代的には「アルマゲドン」パロディですかね。


なんかゴタゴタ書いちゃいましたけど、全体的にはケレン味たっぷりの楽しい楽しい山岳アクション大作なので。


たぶん何も知らずにテキトーな気持ちで観たら「何これ!?スゲーおもしろいじゃん!」となるタイプの映画というか。午後ローとかでもやってほしいですな。

個人的評価
7/10

僕の登山体験記はこちら↓




こちらはケレン味いっさい無し。目をそらしたくなるくらい怖い!


ではまた。