食人族
※ネタバレです。
原題 Cannibal Holocaust
製作年 1981年
製作国 イタリア
上映時間 95分
監督 ルッジェロ・デオダート
製作 ジョバンニ・マッシーニ
脚本 ジャンフレンコ・クレリチ
音楽 リズ・オルトラーニ
出演 ロバート・カーマン、フランチェスカ・チアルディ、ガブリエル・ヨーク、ペリー・ピルカネン、ルカ・バルバレスキー 他
あらすじ
ドキュメンタリー映画製作のためにアマゾンの密林に向かった4人のチームが消息を絶つ。人類学者のモンロー教授率いる捜索隊はジャングルの奥地で彼らの白骨死体と撮影フィルムを発見するが、フィルムには身の毛もよだつ恐ろしい内容が記録されていた...
予告だけでもアメブロ的にアウトになりそうなので、タイトルバックだけ。リズ・オルトラーニのテーマ曲が素晴らしいです。
久しぶりの鑑賞です。
いつ観ても思うんですが、本作が日本でそれなりにヒットしたっていうのがビックリというか、今だったら間違いなくシネコンではかからなそうな作品。
ドキュメンタリータッチのどこか乾いた残酷描写は今観てもすごくリアルで恐ろしいです。人間が解体される場面はもちろんなんですけど、動物が殺されるシーンは、たぶん今だったら絶対カットされるだろうし、動物愛護団体も黙ってないでしょう(当時もかなり物議をよんだらしい)。
未開人に食われる4人ははっきり言ってどうしようもないクズではあって。「相手は文明人じゃないから」っていう理由で家畜を面白半分に殺したり、少女をレイプしたり、家に閉じ込めて火をつけたりとやりたい放題。
4人が殺されるシーンは、かわいそうというよりも、むしろ「ざまーみろ!」と言いたくなる、カタルシスすら感じるシーンだと思います。食人族=敵という風には描かれていません。
ラストシーンでモンロー教授が、「真の野蛮人はどっちだ...」と呟きますが、本作は文明人と未開人を並べて見せて、「どちらが野蛮なのか?」というよりも、「どちらも野蛮である。」という真実を、ただ突きつけてくるという、まさにフェイク・ドキュメンタリーで撮るという意義がある作品だと思います。
動物を殺して食べたり、レイプしたり、差別したりっていうのは、人間が本質的に持つ残酷な側面であって、真実です。僕らが本作を観て嫌な気持ちになるのはその真実から目を背けたいからだと思います。
僕が本作をたまに観たくなるのは、決して残酷描写が見たいからとかではなく、自分も人間である以上、こういう暴力的な部分を持っているということを忘れないようにするためです。
それこそ義務教育で、「人を差別したり、暴力をふるうことは悪いことだ。」ということは教わってきましたが、そんな表面上当たり前なことを言われても何も響かないというか。それよりも、「人は誰しも暴力的な本質を持っている。だから誰でも残酷になり得る。」ということを知って、常に考えておくことの方がよっぽど大切で。
キワモノ映画と思われがちな本作は、そういう意味でもものすごく教育的な作品だと思いますよ。もちろんこれを体育館に小学生を集めて上映しろっていうのはちょっと違うかもしれませんが(笑)
さらに本作が素晴らしいのは、「人間は残酷である。」という真実を見せておきながらも、人間に絶望するような話ではないということで。
主人公のモンロー教授は、未開人の風習に戸惑いながらも、なんだかんだお酒をふるまってもらったりして、ほのぼのとした関係を築くことができていました。
「人間は等しく愚かで残酷だが、それでもわかり合うことはできるはず。」
「コミュニケーションの可能性」これこそが本作のもっとも重要なテーマだと僕は感じます。
その他細かいことだと、リズ・オルトラーニの音楽は素晴らしい!
テーマ的にも、フェイク・ドキュメンタリーという作風的にも、どうしたってヤコペッティ作品を連想する本作ですが、リズ・オルトラーニは多くのヤコペッティ作品で音楽を担当してます。目を覆いたくなるような暴力描写と流麗な音楽が絶妙なコントラストを醸し出していて、なんとも言えない気持ちになります。
本作を初めて観たのはたぶん大学生くらい。当時ははっきり言って怖いもの見たさでレンタルして、ゴア描写に「うげ~...」ってなってただけだったんですが、今鑑賞するとなかなかに奥が深い映画で、ハッとさせられるメッセージが込められています。
あくまで個人的な感想ですし、未見の方の中には「下品で悪趣味な作品」というイメージを持たれている方もいると思います(たしかに否定はできませんが...)。それでも誤解を恐れずに言うなら、僕にとって本作はとても勇気をもらえる感動的な作品なんです。オススメです。
個人的評価
10/10