※今回の記事は作品となんの関係もない前書きが書かれているので、読み飛ばして頂いて全然大丈夫です!






久しぶりにブログを更新できてとても嬉しいです!



前回のブログでも書きましたが、僕は今「うつ」を患って現在休職中の身でして。


心を病むとはこのことかと思い知らされたんですが、それまで大好きだった映画を以前のように楽しめなくなってしまったんですね。もっと言えば、



映画を観ることが怖くなった。



と言ったほうが正しいかもしれません。



映画の登場人物達はみんな何かしらの葛藤やトラブルを抱えていて、追い詰められ、絶望したりしながらも、最終的には主体的な行動を取って自らの殻を破り、クライマックスに向かっていきます(行動の結果が彼らにとって良いにしろ悪いにしろですが...)。



彼らの取る行動が、たとえ倫理的には許されない間違った行為だったとしても、僕の目にはとても眩しく映りました。少なくとも彼らは自らの自由意志の元、自らの責任において行動することを決断し、前に進む勇気を示したわけです。



僕は子供の頃から周りの目ばかり気にして生きてきました。親や先生を困らせないように、友人を傷付けないように、同僚や上司に迷惑を掛けないように。



他者を優先し、低姿勢で謙虚に。確かに周囲の人々からすれば僕はいわゆる「良い人」と思われていたかもしれません。でも実際には僕はものすごく利己的な人間だったことに気が付きました。



僕が他者に対して取っていた行動の目的の全ては、ひとえに自分を守るためでした。他者との関わりの中で傷付くことが極端に怖い僕は、自分の行動の理由や結果の責任を他人に委ねていました。




自分や世界に向き合い、勇気を振り絞って一歩を踏み出す登場人物達を見ていると、自分がものすごくみじめな存在に思えてしまって。何度も泣いたのに、何度も決意したのに、それでも勇気が出せなくて。幸せになる努力をするよりも、不幸せでいる苦労をするほうがずっとラクだから。





正直自分のブログすら見るのもイヤになってたんですが、妻から「映画好きな友達がブログ楽しみにしてるみたいだよ。」と言われましてね。数ヶ月ぶりに管理画面を開いてみたら予想以上に多くの方が閲覧して下さっていたり、「いいね」を付けて下さったり、新たにフォロワーになって頂いた方がいてビックリしまして。




自分の本音を言える場所として始めたブログですが、それを見てもらえる、聞いてもらえるだけでも嬉しいのに(読んだ方がどう思われるかは別にして)、多少なりそれを楽しみにしてくれる人がいるということが分かって、なんだか涙が出そうなくらい嬉しくなりまして...




上手く言えませんが、ずっと他者との関わり=恐怖だと思っていた僕ですら、幸せを感じるためには他者を必要とするんだなぁなんて思ったりしました。



とにかくこんなブログでも誰かの為になるのなら(もちろん僕の自由意志で)、書き続ける意味はある。僕にとっても前に踏み出す勇気がもらえるということで、今日からまたマイペースに更新していきたいと思います。




前置きが非常に長くなって本当にすみません...
m(_ _






それでは本題に。










パラサイト 半地下の家族
※ネタバレです。
原題 Parasite
製作年 2019年
製作国 韓国
上映時間 132分
監督脚本 ポン・ジュノ
製作 クァク・シネ、ムン・ヤングォン 他
脚本 ハン・ジヌォン
撮影 ホン・ギョンピョ
編集 ヤン・ジンモ
音楽 チョン・ジェイル
出演 ソン・ガンホ、チェ・ウシク、パク・ソダム、チャン・ヘジン、イ・ソンギュン、チョ・ヨジョン、イ・ジョンウン、パク・ダヘ、チョ・ヒョンジュン 他




あらすじ
半地下のアパートで貧しいながらも逞しく暮らすキム一家。ある日、長男のギウの元に裕福なパク一家の娘の家庭教師にならないかという話が持ちかけられ、ギウは身分を偽ってパク家の元に。パク家の人間を与し易い相手と見て取ったギウは次第に自分の家族をパク家の家政婦やドライバーとして引き入れ、収入を得ようと画策するが...





いや、ちょっと待って下さい。



おそらく多くの方が、



「パラサイトの感想て...今さらかよ。


と思われたはずです。確かに去年から今年にかけて映画ファンを始め、そうでもないライトな観客層まで話題を独占した作品なので、世間の興味が「鬼滅の刃」に移る中、なぜ今感があるのはわかりますが、結局僕は令和という時代にも関わらず、「NANA」とかいう僕にとっては非常にどうでもいい作品の感想をアップするような人間であるという言い訳だけさせてもらいましょう(ファンの方に恨みはありませんし、あくまで個人の意見です)。




公開当時は劇場で鑑賞したんですが、自分の中で韓国映画熱が再燃したこともあり、ブルーレイで二回目を鑑賞しました。







ありがとぉー!!




本当にポン・ジュノ監督を始め、スタッフ、キャストの皆さんに心から感謝したくなる素晴らしい作品でした。


キム一家。貧乏ですが生きる力はすごいのです。



階段や坂を登る、降りるなど、細かい伏線などについてはすでに多くの方が言われていることなので僕が今さら書くようなことは無いんですが、個人的にこの作品から感じたのは、



闇(現実)はそこにある。


ということでして。



序盤から印象的だったのが、キム一家が食卓を囲んで窓から外を眺めているシーン。初見時は特に気にとめなかったんですが、まるで一家が映画を観ているように見えて(窓越しの光景がスローモーションになったりして、フィクショナルな感じ)。



つまりはキム一家にとっては、半地下より上の世界はどこか現実味の無い、縁遠い世界であり、半地下こそ彼らが実感する厳然たる現実ということなのかなと。



中盤で、パク家で酒盛りをしていたキム一家が、パク一家にばれないようにテーブルの下に隠れるという、何とも滑稽で、かつスリリングな一連のシークエンスがあります。



テーブルの下には、ギジョンが急いで片付けたゴミが散乱し、キム一家が住む半地下さながら。ソファーに座るパク夫婦(地上に住む富裕層)と、ゴミだらけのテーブルの下に隠れるキム一家(半地下に住む貧民層)という対比になっているだけでも非常に上手いと思うわけですが、このシーンで大事なのは、



パク夫婦にはゴミまみれのキム一家は「見えない」という状況そのもの


だとも思ったりして。


これって韓国に限らないことだと思うんですけど、僕らが普段生きている日常にも、多くの人が見ようとしない、あるいは見えないようにプロテクトされている闇(現実)って確かに存在してますよね。



でもその現実は多くの人にとっては自分には関係の無いものだと思い込んでいて、地続きの世界だと信じていないものなんですよね。だから最終的に殺人犯になってしまうギテクがすぐ近くに潜んでいるなんて考えもしない(まあそもそもパク家に地下があること自体が知られてないわけですが)。



目を覆いたくなる現実というのは、まさにすぐそこにある。そこを容赦なく、かつ非常に巧みな語り口で仕上げた監督は本当にすごいと思いました。



それから、ミクロはマクロに通じるじゃないですけど、本作は、ある三つの家族の小さな話が、実は国全体、あるいは世界の縮図にもなっているとも言えるんですね。



貧乏なキム一家が裕福なパク一家にパラサイトして生きていくという展開から、さらにキム一家もまた別の家族に寄生されていくという展開になっていくわけですが、実はパク一家もまた寄生してるんですよね。



それはパク一家のいわゆるアメリカかぶれ感というか、これは日本もそうですけど、一つの国として自立しているように見えて、実はアメリカという大国に依存せざるを得ない私たちという風にも見えました。これはポン・ジュノ作品で言うと「殺人の追憶」でも描かれていたことですが。




それからパク夫婦の、いい人なんだけど無神経、もっと言えば差別的な一面がハッキリとではないにしろ、言動の端々から滲み出る感じの演出のバランスもすごく良かったなぁと。なんか自分にもこういう一面ってあるよなと思っちゃいました。




パク夫妻。いい人なんだけど、うーん...




でも何より本作が素晴らしいのは、そういう国や世界が持つ暗い現実を突き付けながらも、エンターテイメントとしてもものすごく面白いことだと思います。



ポン・ジュノ監督ならではのオフビートなコメディ演出もそうですが、キム一家のチーム犯罪物としてもすごく面白かったし(まあこんなに逞しい一家だったらこんなことしなくても貧乏から脱け出せるんじゃないかと思わなくもないですが)、地下への扉が現れてからの、まさに怒涛の急展開に僕はあっけにとられてしまい、「悪魔のいけにえ」的な話になっていくのか!?と思ってしまいましたよ。




「地下への扉」を見るとどうしても連想する「悪魔のいけにえ」




そもそも僕は登場人物の背中越しにワンショットが続いていく時の緊張感がすごく好きでして。近年で言うと、真利子哲也監督の「ディストラクションベイビーズ」や、デレク・シアンフランス監督の「プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ/宿命」の背中越しワンショットがすごく好きでしたが、本作でも何か得たいの知れない空間に否応なしに連れていかれるような恐怖感を感じました。




その他細かいところだと、編集や音の使い方もすごく上手くて。例えばダへが参考書をめくると、それに被せるように次のシーンの母親がお札を指ではじくカットに視覚的にも音的にも繋がるように作られていたり(裕福になるためには学歴が非常に重要視されていることのメタファー?)、キム一家が庭でハンマー投げをしてどっかの家の窓が割れて、次のシーンの頭にうっすら警報音が聞こえていたり(今の幸せがもう長くは続かないことの暗示?)。



あと、鑑賞後に言いたくなるフレーズが出てくる映画って大体良い映画だと個人的には思っていて。近年だと、「カメラを止めるな!」「よろしくで~す。」や、「エイス・グレード 世界でいちばんクールな私へ」「グッチ!」「日本で一番悪い奴ら」「はい、こんちわー。」などですが、本作にも真似したくなるフレーズが盛りだくさんでして。特に多くの方が言いたくなるのは、「リスペクト!」だと思いますが、個人的には「ジェシカ、ナイス。」がすごく笑いました。



オチに関しても、一瞬「なんかきれいにまとまっちゃったな~。」と思わせてからの、やっぱり「うわ~...」っていうラストカットはさすが。一方的に見ているだけの観客が、登場人物に見返される→映画(フィクション)と観客(現実)が一致するというのも、やっぱり「殺人の追憶」を思い出すような素晴らしいエンディングでした。




他にもいろいろ話したくなることがたくさんある作品なんですが、長くなりそうなので割愛。とにかく沢山のメッセージが込められている作品であるにも関わらず、それを押し付けがましくなく、まさに映画的に一級のエンターテイメント作品に仕上げた、そういう意味では「マッドマックス 怒りのデスロード」級の大傑作だと思います!




個人的評価
9.8/10



ではまた。ジェシカ、ナイス!(^◇^)b




連想したポン・ジュノ監督作品。ラストの好き嫌いは分かれそうですが僕は大好き。