悪魔のいけにえ
※ネタバレです。
原題 The Texas Chain Saw Massacre
製作年 1974年
製作国 アメリカ
上映時間 83分
監督・製作・脚本・音楽 トビー・フーパー
製作総指揮 ジェイ・パースレイ
脚本 キム・ヘンケル
撮影 ダニエル・パール
編集 ラリー・キャロル、サリー・リチャードソン
美術 ロバート・バーンズ
音楽 ウェイン・ベル
出演 マリリン・バーンズ、アレン・ダンジガー、ポール・A・パーテイン、ウィリアム・ベイル、テリー・マクミン、エドウィン・ニール、ジム・シードー、ジョン・ドゥーガン、ガンナー・ハンセン 他




あらすじ
テキサスの田舎町で墓が掘り起こされ、遺体の一部が持ち去られるという事件が頻発していた。主人公のサリーは、兄のフランクリンや数人の友人らと共に家族の墓の無事を確認がてら帰郷する。途中、彼らはヒッチハイカーの男を拾っただったが、その男は自傷行為を始めたうえ、フランクリンをナイフで切りつけた。そんな彼らはガソリンを分けてもらうために立ち寄った一軒家で想像を絶する恐怖に直面する。





今なおカルト的人気を誇り、ホラー映画の最高峰の一つとされている本作。鑑賞するのはすごく久しぶりなんですが、




やっぱりチョー怖い。




一軒家には道行く人間を殺しては喰っているソーヤー一家が住んでいました。一家のメンバーは売店を経営している長男、イカれたヒッチハイカーの次男、チェーンソーを振り回して人間を解体する三男レザーフェイス、ほぼ腐りかけのゾンビみたいなじいちゃん。




結局サリー以外のメンバーはレザーフェイスに解体されまして、サリーはソーヤー一家と地獄の晩餐を共にするも隙をついて窓から脱出。ヒッチハイカー弟と揉み合ってたら弟はトラックに轢かれ、後から追ってきたレザーフェイスのチェーンソー攻撃をかわしつつ、たまたま通りかかった車に飛び乗ってなんとか生還しました。






久しぶりに鑑賞した本作ですが、すごくびっくりして。



というのも僕が本作に対して持っていたイメージがひっくり返されたから。



僕は世代的にマイケル・ベイのリメイク版のイメージがあるからかもしれませんが、派手な殺人シーンや、スプラッター描写など、直接的な残酷表現やいないいないばぁ的なベタなホラー演出がこの作品の肝だと勘違いしていました。




まずレザーフェイスが登場し、本格的に登場人物たちへの攻撃が始まるまでの導入や予兆の場面がすごく怖い。冒頭の暗闇に映し出される死体とカメラのフラッシュ、シャッター音。これだけで得たいの知れない不気味さを感じとることができます。特にこのシャッター音は、全編を通して音楽がほとんど使われていないドキュメンタリータッチなだけに、やたら耳に残る不快さがあります。
その他にも、道端に放置された動物の死体、ラジオから流れる墓荒しのニュース、荒れ果てた家に巣食う蜘蛛など、決定的なことが起こるまでの恐怖演出が非常に作り込まれていると思いました。




また映像のざらついた質感もドキュメンタリータッチの本作にとてもマッチしていると思いましたし、ソーヤー一家の異常性を物語る骨で造られた家具など美術に関しても本当に素晴らしいです。




僕なりに本作の怖さを一言で表すなら、





「かもしれない」という怖さ。




先に書いたように本作では過激で、直接的なスプラッター描写というのは実はほとんどありません。




ソーヤー一家は道行く旅人を殺していることは事実ですが、その肉を喰ったり、墓も掘り起こして肉を調達したり、バーベキューにして売ったりという直接的な描写や説明は実は無いので、セリフの端々や、あくまで匂わす程度の描写に止められているから、観客は主人公たちの目線に入って想像するしかないわけです。




「墓を掘り起こして遺体の一部を持ち去ってる犯人ってこいつらなのかもしれない...」

「その肉を何に使ってるの?もしかして...」

「さっき食べたバーベキューの肉って...」




そういうことを説明されたり、実際に人肉を喰っている描写があってももちろん怖いでしょうが、
判断を観客に委ねる、





想像させる余白のある怖さ。




派手な残酷表現やびっくり箱的な怖さではなく、練り込まれたプロットの怖さ、力。これこそが本作の恐怖の本質であり、映画として非常に志が高い作品なのではないかと。




また肝心のソーヤー一家も、異常者であることは間違いないんですが、どこか人間くさい長男がサリーを拐う時に電気を消し忘れて店に戻るシーンは、そういうこと気にするんだ!?って思ったし、レザーフェイスが次々にやってくる訪問者に疲れはて、「ふぅ...」と一息入れるシーンは恐ろしい場面の中でも少し笑っちゃうというか。






やってることが異常なだけで、僕らと同じように悩むし、落ち込む。この世界のどこかにこういう一家が本当にいるような気がする。その実在感も先に書いた「かもしれない」怖さにつながっていると思います。





演技に関しても、特に主人公サリーを演じたマリリン・バーンズの叫びの演技は本当に圧倒的で、フィクションであることを忘れさせるような真に迫った恐ろしさがありました。





そしてサリーを取り逃がしたレザーフェイスが朝焼けをバックに悔しそうに、まるで舞い踊るようにチェーンソーを振り回すラストシーンは、恐ろしくも目を見張る美しさで、ニューシネマ的な余韻も残す素晴らしいシーンだと思います。近年で言えばトッド・フィリップス監督の「ジョーカー」 を少し思い出しました。




本作はカルト的ホラー映画であると同時に、映画が持つ普遍的なおもしろさ、ダイナミズムがつまった大傑作だと思います。





個人的評価
10/10


ではまた。



二作作られた破壊王マイケル・ベイ製作のリメイク。二作目のが怖かった印象。



2013年に新たに作られた続編。意表をつく展開にびっくり!賛否分かれると思いますが僕は大好きです。オリジナルの二作目もある意味意表をつかれましたが(笑)