時計は7時10分。
サラリーマンは新聞を読みながら、モーニングコーヒーを嗜んでいる時間だろう。
いつものように、塩素の匂いが漂った荷物を手に取り、ドアを開ける。
眩しい、天気は快晴。心が安らかになる。
自転車に乗った時、ふと違和感に気づいた。
鍵がない。どこにも鍵がないのだ。
心が不安と恐怖でいっぱいになり、雲行きが怪しくなる。
「やばい」 「終わった」
人は人生の境地に立つと、語彙力が皆無になる。しかし、そんなことを言っている場合ではない。
まず、最優先にやることは、部活への連絡だ。
でないと、槇山主任の目が赤くなり、怒号が飛び散る。
連絡を終え、昨日の行動を振り返る。
家に鍵を置いたことは覚えている。
それ以外はYouTubeだけだ。
家中ありとあらゆる所を探した。
リビング、タンス、ベッドなど。
あるわけのない洗濯機にまで探し求めた。
ない。ない。ない。
もういい、今日はゆっくりしよう。
と思い、ふとカバンを手に取った瞬間、身の覚えのある感触がした。
固唾を呑み、手にしたものは"鍵"だった。
今までに見たことないほど、光り輝き、胸が高鳴った。
もし、ルフィがワンピースを手にしたらこのような感じだろう。
数十分の出来事で人間の喜怒哀楽全てが現れた1日であった。
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