報道カメラマンレベルな長いレンズを手にたくさんの方々が楽しそうに河津桜を楽しんでいた。

テキ屋がずらりと並んでいる。

焼き立ての今川焼きを食べながら老夫婦の会話を盗み聞きする。
喧嘩しているわけではなかった。
口調や表情では喧嘩している風情だったのに。
色んなことを削ぎ落とすと喧嘩口調になるのだろうか愛情というものは。

愛まで削ぎ落としてしまって情だけになっているんだろうか。

隣では可愛らしい女の子をモデルにその子の彼氏であろう男の子がカメラマンのようにあれこれポーズに指示を出してグラビア撮影のようなことになっている。

「かわいいよかわいいよ!いーね〜!」

声かけの感じが(知らないけど)篠山紀信かのようだ。


今川焼きを縦に食べてみようかとふと思いつき顎をゆっくりはずして縦たべに密かに挑戦中におじいちゃんに話しかけられた。


「ぜんぜん釣れないねぇ。何が釣れるのかねー」


1ミリも動かない浮きを見つめながら釣り糸を垂らすまた別の見知らぬおじいちゃんのすぐ横でわりと大きな声で私にそういうおじいちゃん。

釣り師はむっとした様子でこちらを振り返る。


「何が釣れるかじゃなくて何を釣ろうかってことじゃないですかねー」


論点をずらす手法を最近学んだのでそうやんわりピントをずらして今川焼きに集中した。