「この世の全ては、陰と陽のバランスによって成り立っており、そのどちらの気が強過ぎても 弱過ぎても、乱れが生じる」 という 陰陽の考え方と「自然界に存在する 全ては、木・火・土・金・水の元素に由来する」という 五行の概念が、 中国には古くからあって、 5〜6世紀ごろに日本に伝来して浸透しました。  この影響は、今日でも 日本文化の随所に見出すことができます。 

 

 

 

お茶でも、 折に触れて 陰陽五行との関連性を示しながら 指導する流派もあるようですが、 私が 表千家を学んできた過程で、 ことさら強く意識させられたことはありません。


関連する 五節句や七五三などの行事が 日本人の暮らしに 溶け込んでいるように、 表千家のお茶の中にも、 意識させぬまま 自然に溶け込んでいるように思います。

 

この概念に基づいて、 宮中では「水の季節の始まり」 といわれる 亥の月・亥の日に 火を入れるようになったそうです。(水は火を消すことができますから、 防火の観念からは、大量に火を使うようになるには最適な日ですもの)

そこへ、多産の亥にあやかるべく、亥の子餅食べていた 民間の習わしが 加わって、 茶家では、立冬前後の 亥の日に炉を開いて、亥の子餅を食べるようになった・・・と言われています。 

これなどは、お茶の中に自然に溶け込んだ 一つの例として考えることが出来るでしょう。  

 


また平素は、 何も考えずに 天板に仰向けて飾っている柄杓を 「桐木地の丸卓に限って何故伏る???」と思った途端に悩みが深くなって・・・陰陽の概念が このようなところにあったのか・・・と気付くこともあります。

 

 

 

桐木地の丸卓の場合

木地が ・ 丸が ・ 柄杓は伏せて

 

塗の丸卓の場合

塗が ・ 丸が ・ 柄杓は仰向けて

 

桐木地の四方棚の場合

木地が陽 ・ 四角が ・ 柄杓は仰向けて

 

塗の四方棚の場合

塗が ・ 四角が ・ 柄杓は仰向けて

 

このように、天板の三つの要素が、全て陰になったり、陽になったりすることはありません。 

 

桐木地の丸卓の場合、柄杓を仰向けて置くと、全ての要素が陽になり、 陽の気が勝ち過ぎてしまうため、柄杓を伏せることで陰に転じて、陰陽のバランスをとっています。