今年の春は季節の進み具合が異様と思えるほど早く、
四月の花が三月に咲き、五月の花が四月に咲いています。
平年と同じスケジュールでは花の写真も撮り遅れ、
何か目に見えぬ力で背中を押される思いがします。
早春に梅が咲き始める頃は冬を脱した感動を覚えますが、
晩春の百花繚乱に入ると、花見という行為にも少々疲れを
感じ、むしろ新緑に心が洗われます。
この時季になると、あの人の言葉を思い出します。
幅広い層に支持される仏教詩人・坂村真民は
次のような言葉を残しています。
花は一輪でいい
一輪にこもる命を知れ
坂村 真民 1909~2006
日本の仏教詩人
熊本出身、愛媛県砥部町に「たんぽぽ堂」と称する居を構え、
国語教師として教鞭をとりつつ、詩を書いた人です。
この名言の深意に潜むものは「花の数」ではありません。
一輪の花が咲くということは一体どういうことなのか、
よく考えてみましょうという問い掛けなのです。
この広い宇宙空間に生命が成立する惑星・地球があり、
その地上に咲くべくして一輪の花が咲く………………。
その現象そのものが奇跡であり、その命の成立を知ること
が大切なのだと坂村真民は言いたかったのです。
重力、大気、光、水、土、温度…………、それらすべてが
完全に揃ってようやく硬い蕾が割れ咲くのです。
一輪の花も、一人の人間も、ある意味では同じ存在です。
身の回りのファクターに支えられ、生かされているのです。
皆様、人生の様々な場面で歩き疲れたら、立ち止まり、
足元のたんぽぽを見て下さい。そこに答えがあります。