私は怯んだ。
今時こんな業者が存在するのか?
なんでこんな睨みつけてくるのだ?
元請けは大手家電量販店Kだぞ?
それともこいつは前世で私になんかされた恨みでもあるんか?
今から密室にこいつを上げるというのか。
腰からは凶器のようなものをたくさんぶら下げている。
私がこの後何か間違えた対応をしたらそのクソ長いドライバーで頭を串刺しにされるのではないだろうか。
玄関で私を睨みつける業者男を前に、
私の心拍数は急激に上がり緊張で手が冷たくなった。
この男を私1人のこの部屋に上げてしまえば、
何かあっても力では到底かないそうにない。
しかし柔よく剛を制すというではないか。
そう、チ○ピラにはきんぴらだ。ダジャレではない。
母ちゃんのきんぴら作戦でこいつをいなすしかない。
私は咄嗟にそう思った。
「あらあら〜暑い中わざわざすいませんねぇぇ。
どうぞどうぞ、よろしくお願いしますねぇ〜〜」
と、きんぴらが上手な70代の自分の母親の口調を真似て業者男を家に招き入れた。
そう、70代母になりきるのが今回の「きんぴら作戦」である。