●ガザの独裁支配者ハマスは、住民を人間の盾として利用してイスラエルを攻撃している。しかし、国際社会はハマスを非難せず、逆にイスラエルをジェノサイド国家だと非難する

 

 (1)イスラエル軍や警察は2005年9月末にはガザから全面撤退しています。つまり、ガザを占領しているのはハマスです。ハマスはガザの住民を独裁支配し、搾取しています。「ハマスは17年間、破壊しかもたらさず、今回の最悪の事態を招いた」「これほどの惨状になるとは考えずに攻撃を仕掛けた」と、2月2日付読売新聞はガザ住民の声を伝えていました。また、「パレスチナ政策調査研究センター」が行ったガザでの世論調査(2023年12月発表)では、「23年10月7日のハマスのイスラエル急襲を間違いだ」と答えた者は37%になりました。「ハマスにガザを統治してほしい」と答えた者は38%に過ぎませんでした。「ファタハのパレスチナ自治政府」と答えた者は16%でした。これは昨年12月時点の調査ですから、現在では37%は倍になっているでしょうし、38%は半減していることでしょう。多くのパレスチナ人が独裁侵略者ハマスを非難しているのです。

 

 ハマスは昨年10月7日にイスラエルに越境軍事侵略し、イスラエル民間人を狙って1200人を惨殺し、255人を人質としてガザに拉致しました。ハマス戦闘員はこの「惨殺の様子」(3月8日アップの拙文「イスラム主義テロ組織ハマスを壊滅すべし/イスラエルは国連パレスチナ分割決議で合法に建国」に、飯山陽氏の著書から引用してあります)をSNSに撮ってガザや西岸等のハマス支持者に見せつけています。この異常なハマスは、イスラエル殲滅を目指すイスラム主義テロ組織です。彼らはこれを「パレスチナの大義」と言う。しかし、パレスチナ人のほとんどはそんなことは考えていません。このハマスを軍事的、資金的に強力に支援しているのが独裁侵略国家イランです。イランは現在世界を解体するイスラム主義世界革命を目指しています。また独裁侵略国家ロシア、中国、北朝鮮、シリア、トルコもハマスを支援しています。もちろん、イランと連携しています。ハマスの幹部政治局員はカタールで高級ホテル暮らしをしているが、そのカタールもハマスを支援しています。

 

 (2)イスラエルは自国の安全保障のために自衛権を行使して、ハマス壊滅と全人質解放の軍事作戦を展開しています。イスラエルは「国際人道法」と言われる「ジュネーブ条約第1追加議定書」(1977年)を守り、攻撃目標をハマスの軍事拠点に限定しています。ハマスのようにこの第1追加議定書違反の民間人(文民)を目標にはしません。そして軍事目標を攻撃する際にも追加議定書第57条を厳守して、戦闘区域を設定して非戦闘員たる民間人(文民)にそこから退避するようにあらゆる方法で通告しています。攻撃の巻き添えを出さないようにしています。それを最小限にとどめるように努めています。

 

 (3)それにもかかわらず、軍事目標攻撃で民間人の巻き添えが発生するわけは、ハマスが意図的にそうなるようにしているからです。ハマスは、追加議定書第58条(攻撃の影響に対する予防措置)の(A)(B)(C)に完全に違反して、軍事拠点の司令部、諜報拠点、武器庫、食料等貯蔵庫、武器製造工場、幹部や戦闘員の隠れ家、ロケット発射場所等を意識的に病院、学校、モスク、民間住宅の中やその地下や住宅地や公園に設けています。ハマスはそうすることで、イスラエル軍の攻撃を回避しようとする。また、もし攻撃がなされると自らは地下へ逃げ、他の者は巻き込まれて死亡しますが、ハマスはそれを利用して、「イスラエルは民間人、とりわけ女性や子供を無差別に攻撃するジェノサイド国家だ」と国際社会にアピールして、イスラエル非難の国際世論を作り上げて、イスラエルを孤立化させていくのです。また、国際社会の同情を買って、パレスチナ支持と援助資金をせしめていくのです。これがハマスの「人間の盾」戦術です。援助資金や物資はハマスが独占し、ガザの独裁支配のために使います。ガザ住民には分配しません。ガザの貧富の格差は激しい。西岸のパレスチナ自治政府でも全く同様です。

 

 ハマスが正常なガザの統治者ならば、ハマスの戦闘員には軍服を着せて民間人(文民)と明確に区別できるようにします。そして、民間人を保護し、戦闘に巻き込まれないように避難させます。シェルターも作ります。しかし、ハマスは大人の男女だけでなく、子どもの男女にも、「侵略占領者のイスラエル殲滅、パレスチナ解放のために、パレスチナ人は魂と血を捧げるのだ!」と洗脳教育をしています。国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA・アンルワ)の学校でです。アンルワガザ支部はハマスが支配しています。ハマスはガザの独裁支配者、占領者であり、「パレスチナ人はハマス(前衛)のために命を捧げよ!」と洗脳して、人間の盾戦術をとるのです。民間人を意図的に犠牲にして、それで国際社会の同情を買い、イスラエルを孤立化しようとしているのです。

 

 巻き添えになる民間人の典型は次のようなケースです。3月8日アップ拙文で、飯山氏の著書を引用しましたが、ハマスはイスラエル軍の標的となる軍事目標の場所にわざわざ子どもや女性を100人規模で移動させるのです。地上戦が始まる前の段階であれば、ハマスは動けます。始まってからでもイスラエル軍から遠く離れた地域であれば動けます。ハマスは任意の臨時のロケット弾を発射する場所近くに子どもや女性を多数移動させ配置させる。イスラエル軍が反撃すれば巻き込まれることになります。英BBCは家族をそのようにして殺されたガザの女性が、「全部ハマスの犬どものせいだ!」と叫び、背後にいた男が彼女の口を塞いだ映像を放送しました。

 

 一方で、固定した軍事拠点は秘密保持が絶対に必要なので、ハマスの信頼できるメンバーの所有する建物や住宅の中や地下に設けられます。これは一般のパレスチナ人には隠される。ハマス戦闘員(男性)は民間服を着た便衣兵でも、戦闘区域になっているため、姿を隠します。堂々と出入りしたら軍事拠点と判明してしまう。だから戦闘員の家族や親族でハマスの狂信者になっている女性や子どもが軍事拠点間の連絡等を担うことになります。戦闘員がSNSを使ったら傍受されてしまうからです。この行為は、追加議定書第51条(文民たる住民の保護)の第3項にある「敵対行為に直接参加すること」です。だから彼女らは「文民としての保護」は受けられないのです。つまり、イスラエル軍の攻撃対象に含まれます。イスラエル軍が偵察してハマス戦闘員が潜んでいる建物や住宅を突き止めて攻撃した時に、戦闘員だけでなく、その家族や親族等の女性や子どもが死亡したとしても、「文民の巻き添え死」では決してありません。「女性や子どもへの無差別攻撃」ではありません。彼女らがもしハマスメンバーであれば、一般民間人でもありません。イスラエルは戦闘区域を設定して攻撃しています。民間人には退避を勧告しています。戦闘区域に残る者は、ハマス戦闘員とその家族や親族と、ハマスが子どもを人質にとって退避させないようにしている民間人となります。後者は「文民の巻き添え死」ですが、ハマスに責任があります。私たちはこうしたことをよく認識しなくてはなりません。

 

 (4)イスラエルは第一追加議定書など国際法を守って自衛権を行使しています。しかし、国際社会はハマスのプロパガンダ(嘘宣伝)を受けて、「イスラエルは国際人道法に違反して、無差別にガザのパレスチナ人、とりわけ女性と子どもを攻撃し殺害している」、さらには「イスラエルは、パレスチナ人に対するジェノサイド国家だ」との、反ユダヤ主義の声が大きくなっています。各国の左翼反体制派メディアがハマスと連帯して煽動しているからです。「ガザ保健当局」とはハマスのことです。それなのに、保守系の読売新聞でも、ガザ保健当局の発表を正しいものとしてそのまま報道してしまいます。ガザ保健当局は前記(3)の事実と真実を完全に隠し、否定する。そして、イスラエル軍による女性と子どもの死者数を大幅に水増しして、プロパガンダしています。さらに、イスラエル軍によって殺害されたハマス戦闘員すら「無差別攻撃されたガザの住民(つまり民間人)」にしてしまいます。国連のグテレス事務総長も、ガザ保健当局の報告に基づいて何度もイスラエルを非難しました。そしてグテレスは6月13日、年次報告書「子供と武力紛争」を公表し、「イスラエルは昨年5698件の子供に対する重大な人権侵害を行った」と指摘しました。しかし、国連は中国(独裁侵略国家)によるウイグル民族に対する迫害、ジェノサイドを非難したことなど全くありません。現在の国連加盟国の大多数は非民主主義国家です。

 

 国際刑事裁判所検察局は5月20日、ネタニヤフ・イスラエル首相に戦争犯罪容疑で逮捕状を請求しました。ガラント・イスラエル国防相に対してもです。国連の国際司法裁判所は5月24日、イスラエルに対して、ラファへの軍事攻撃を即時停止を命じる暫定措置を出しました。これはハマスのプロパガンダと、それを支持する国連と各国の反体制左翼メディアの主張、またそれとは異なるが、人道的立場から即時停戦を求める他の世論に迎合した、完全な事実誤認に基づいた誤った暫定措置です。本当は、西側先進国(G7)政府が情報機関の正しい情報を基に、ガザのパレスチナ人を独裁支配し搾取し、また「人間の盾」戦術でイスラエル殲滅を目指して戦う侵略者ハマスを糺弾し、イスラエルの軍事作戦を支持して、国際社会の間違った認識を批判して変えていかなくてはなりませんでした。しかし、西側先進国政府も、国内世論と国際世論に屈してしまいました。国際社会はこぞって「ガザの即時停戦」を求めていきました。

 

●バイデン大統領提出の安保理6月10日の「ガザ停戦決議」は完全な誤りである

 

 (1)バイデン大統領は5月31日、「イスラエルがハマスに『永続的な停戦』実現に向けた新たな停戦案を提出した」と述べて、3段階からなる停戦案を発表しました。しかし、イスラエル首相府はその直後、6月1日に、「①ハマスの軍事・統治能力の壊滅、②人質全員の帰還、③ガザがイスラエルの脅威にならない、の三つが永続的停戦の条件になる。これらの条件が満たされる前に停戦に同意することはない」と表明したのです(6月2日付読売新聞)。ネタニヤフ首相は、6月3日にクネスト(国会)で「バイデン大統領が示した提案は不正確である」「認識に違いがある」と主張しました。9日の声明で、「全人質の解放とハマス壊滅の目標を達成するまで戦い続ける」と改めて強調したのです(6月5日、12日読売)。大きな食い違いがあったのです。

 

 それなのに、バイデン大統領は6月10日に国連の安全保障理事会に、5月31日に示していた「停戦案」を決議案として提出して、採決を行っていったのです。しかも、バイデン氏は「イスラエルがすでに停戦案に合意した」と説明したのです。しかし、イスラエル代表は採決前の会合で決議案については触れず、「全ての人質の帰還とハマス解体まで戦い続けるという我々の考えは変わらない」と主張しました。採決は14カ国の賛成、棄権ロシアで可決でした。ハマスは採択された決議を「歓迎する」と声明を出しました。そういう内容だからです。

 

 (2)私はこの決議案の安保理での採決と採択を強く批判します。イスラエルが上記のように言っているのに、安保理に持ち込んで採決・採択したバイデン大統領は、明らかに大きな誤りをしたのです。批判されなくてはなりません。イスラエルとハマスの間だけの停戦案と、安保理がイスラエルとハマスに速やかに履行するように求める停戦決議では性格が全く異なります。前者なら、イスラエルはハマスが、イスラエルが出す永続的な停戦の条件になる3点を拒否すれば、戦闘を再開していけばいいだけです。イスラエルがバイデン氏に提案したものはそういうものです。しかし、バイデン氏が5月31日に示したものは違っていました。だからイスラエルは安保理決議は受け入れられず軍事作戦を続けていきますが、当然、国際社会はそういうイスラエルを批判するので、安保理は次の措置(決議)を考えていくことになる。つまり、この決議は、追い詰められたハマスを助けるものになります。

 

 バイデン大統領は11月の大統領選挙では、アメリカと世界を破壊させないために、トランプに絶対に勝たなくてはならないと考えてきました(5月19日アップの拙文を参照ください)。バイデン氏は、そのためには、イスラエルを批判してパレスチナを支持する民主党支持者の急進左派をつなぎ止めるためには、1日でも早くガザでの即時停戦を実現させなくてはならないと考えてきました。それがこの安保理決議になったのです。このままではハマスは、イランなどの同盟国家の支援を受けて、また国際社会からの同情の援助も得て、態勢を立て直していきます。そして、再びイスラエルに越境侵略テロ戦争を仕掛けていくことになります。

 

 (3)この安保理決議は、ガザのパレスチナ人を独裁支配し(パレスチナ人が公然とハマスに抗議すれば逮捕され拷問され命さえ失う)、搾取し、「人間の盾」戦術でイスラエル殲滅を目指すガザの占領者ハマスを、非難するようになってきた多くのパレスチナ人の希望ある未来を叩き潰すものでもあるのです。なぜならば、イスラエルによるハマス壊滅は、ガザのパレスチナ人の解放であるからです。ハマスの壊滅は、「平和で自由と民主主義の新生ガザ」を、パレスチナ人が自らを変革しながら創り上げていき得るものになるからです。

 

 (4)バイデン大統領は前節の4項の最後に書いた方向で闘って、米国と国際世論を変革していくべきでした。いくべきです。それだけでなく、集団的自衛権を発動してガザに米軍特殊部隊を投入して、イスラエル軍と共同してハマス幹部の掃討作戦を展開していくべきでした。いくべきです。イスラエルとハマスの戦いは、冒頭に書いたように、法の支配を守る自由主義諸国と、法否定の全体主義侵略主義国家との戦いなのです。ウクライナ戦争でも同じです。パイデン大統領は直接米軍をウクライナに投入すべきです(2023.6.28アップ拙文を参照してください)。

 

●パレスチナ人を独裁支配・搾取するハマスとパレスチナ自治政府を倒して、イスラエルと平和共存する、国際法を守る自由で民主主義の新しいパレスチナ政府を創り上げる

 

 (1)パレスチナ問題は、国際法を否定する左翼反体制派のイデオロギーが今も力を持ってしまっています。人類は第一次、第二次世界大戦を経て、侵略戦争の否定を国際法に明記しました。国連憲章の前文、第1条、第2条、第51条等です。国連は英国の委任統治領であった「パレスチナ地域」でのユダヤ人とアラブ人の紛争問題を、憲章第1条1項後段と第2条3項と4項に基づいて平和的に解決するために努力して、1947年11月に「国連パレスチナ分割決議案(ユダヤ人国家とアラブ人国家と国際管理地域に分割)」を賛成33カ国、反対13カ国、棄権10カ国で可決しました。しかし、アラブ諸国の全てとパレスチナのアラブ人は反対でした。ユダヤ人国家の存在を認めようとしなかった。ユダヤ人はこの決議に基づいて1948年5月にイスラエル国家を樹立しました。これに対して、アラブ諸国とパレスチナのアラブ人は、国際法違反のイスラエル殲滅の侵略戦争を仕掛けていったのです。第一次中東戦争です。それ以前にパレスチナ国家というものは一度も存在したことはありません。パレスチナ人とアラブ諸国が同決議を受け入れていれば、この時に初めてパレスチナ国家は成立して、イスラエル国家とパレスチナ国家は平和的に共存していけたのです。パレスチナ人とアラブ諸国は自らの誤りを深く認識することが必要です。国際社会もこれを認識しなければなりません。

 

 (2)PLO(パレスチナ解放機構)の国会にあたる「パレスチナ民族評議会」(PNC)が、1947年11月の国連パレスチナ分割決議を認め、受け入れたのはやっと1988年11月15日のことでした。この決議に基づいてパレスチナ国家の独立を宣言したのです。だからイスラエル国家の生存権を承認したということになります。そして、PLOのアラファト議長は1988年12月14日に、①国連安保理決議242(1967年11月)と338(1973年10月)の受諾、②あらゆる形態のテロ行為の放棄、③イスラエルの生存権の承認を声明しました。これらの上に、1993年9月13日にイスラエルとPLOとの間で「オスロ合意」(パレスチナ暫定自治原則宣言)が結ばれたのです。1994年にパレスチナ自治政府が作られ、95年4月から5年間の暫定自治が開始されたのでした。西岸の一部とガザです。

 

 しかし、パレスチナ自治政府はイスラエルに対するテロを再開しました。ハマスは1987年12月に設立されたのですが、イスラム主義テロ組織であり、そもそもイスラエルの存在を認めていません。一方のアラブ諸国では、エジプト、ヨルダン、アラブ首長国連邦、スーダン、モロッコがイスラエルと国交を結んできました。サウジアラビアもその一歩手前まで来ています。ガザのパレスチナ人と西岸のパレスチナ人を独裁支配し収奪し、イスラエルにテロ攻撃を行うハマスとパレスチナ自治政府こそが倒されなくてはならないのです。この二つの独裁政府を支援しているのがイラン、ロシア、中国、北朝鮮、シリア、トルコなどの独裁国家であり、国際社会の反体制派左翼勢力です。国際社会はハマスとパレスチナ人自治政府にお金を送ってはなりません。彼らは北朝鮮の独裁政府と同じです。パレスチナ人は独裁政府を倒して、イスラエルと平和共存する自由と民主主義の新しいパレスチナ政府を作り出していかなくてはなりません。

 

 (3)イスラエルの側も、上記のような国際法を守るイスラエルと共存する民主的なパレスチナ国家を必ず認めなくてはなりません。西岸への入植は直ちにやめなくてはなりません。

 

 私は同志に入力してもらっているのではなく、いわば人道的な立場で荒木さんに入力とブログの管理をしていただいています。だから執筆は月に1回、原則事務用箋8枚までです。2つのテーマで書かなくてはならないときはその枚数内で分けて書くことになります。今回がそうです。もう一つは裁判に関する文を書きます。十分展開できなかったのは、これらのためでもあります。ですから同志の方、お力を貸してもらえないでしょうか。

(2024年6月15日脱)