●ウクライナ軍の反転攻勢によりプーチンは9月30日、ウクライナ東・南部4州をロシアに一方的に併合し、「自分たちの国家と国民(つまり4州)をあらゆる手段で守る」と核兵器使用を宣言した

 

 (1)ウクライナ軍は米欧から最先端兵器を含む多くの軍事支援を受けて、8月下旬から攻勢に転じた。ウクライナは南部へルソン州の州都へルソンを奪還する作戦を行う構えを見せて(実際、ドニエプル川に架かる橋を高機動ロケットシステム「ハイマース」で攻撃破壊してヘルソン市の補給線を断った)、ロシア軍の機甲戦力の一部を東部から南部へ移動させることに成功し、9月6日から東部ハルキウ州で奇襲攻撃を開始していったのである。そしてロシア軍が支配していたハルキウ州のほとんどを解放した。ハルキウ州だけで9月に450もの集落を奪還した。南部での作戦は陽動であった。プーチンは9月21日、戦況悪化を受けて予備役の部分動員30万人を命じた。また東・南部4州を併合する意図を明らかにした。

 

 偵察型のドローンが大きな戦力になっている。ウクライナのフェドロフ副首相兼デジタル化相は9月29日、「偵察型ドローンでロシアを上回ったことが9月以降の反転攻勢に寄与している。当初はロシアのドローンの運用能力が我々を上回っていたが、各国の支援もあり今は我々が優勢だ。ロシアは各国による経済制裁の結果、部品供給が滞り、失ったドローンを補充できない」と述べた。また「ドローンと様々な技術(人工知能)を組み合わせることで、人間の目では不可能な攻撃(人工知能でロシア軍の装甲車や戦車などの種類、どの兵器で攻撃すべきかを判断する)や防御ができる」と指摘した。

 

 ウクライナ軍は偵察型ドローンやアメリカの衛星情報や対砲レーダーなどでロシア軍の位置や動きをリアルタイムで正確に把握することで、米国など各国から供与された「ハイマース」や155㍉榴弾砲とGPS誘導弾、攻撃型ドローン「バイラクタルTB2」、自爆型ドローン「スイッチブレード」「フェニックスゴースト」などで、ロシア軍の指揮所、弾薬庫、火砲部隊、兵站部隊、防空ミサイル、装甲指揮車、戦車、装甲車、装甲輸送車を攻撃破壊している。

 

 (2)プーチンは東部のルハンスク州とドネツク州、南部のザポリージャ州とへルソン州の親露派武装勢力に、9月23日~27日にロシア併合を問う「住民投票」を実施させた。銃を持った兵士が選管職員に付き添って戸別訪問し、投票を強制した「偽りの投票」である。28日に投票結果が公表された。プーチンは29日にザポリージャ州とへルソン州の独立を承認した(東部2州は2月に独立を承認済み)。9月30日、プーチンは演説した。「いずれも併合支持が80%~90%台に達した。4州をロシアに併合する。4州の住民は永遠に我が国民になる。我々は自分たちの領土と国民をあらゆる手段で守る」と。プーチンはウクライナ軍が4州の奪還をめざして軍事攻撃を行えば、核兵器を使用することを正当化したのである。

 

 プーチンは演説後、4人の親露派代表とそれぞれ「併合条約」に調印した。ロシア下院は10月3日に、上院は10月4日に全会一致で「併合条約」を批准し、関連法案も可決したのである。

 

 (3)バイデン大統領は9月29日、「米国はロシアの主張を決して、決して認めない。住民投票は全くの偽りだ。結果はモスクワで捏造された」と非難し、調印を受けて30日、「ロシアの詐欺的な併合の試みを非難する。世界の平和な国々を侮辱するものだ」とする声明を発表した。そして米政府は大規模な対露追加制裁を発表した。国連のグテレス事務総長も29日、「武力の行使や威嚇による領土併合は、国連憲章2条4項と国際法違反だ」と非難した。EUの欧州委員会(執行機関)も28日、ロシアが「住民投票」に基づき強制的に併合をすすめることへの対抗措置として、露製品の禁輸拡大を柱とする追加制裁案(約9700億円)を発表した。

 

 ウクライナ政府は「併合」を認めず、調印があった30日にもウクライナ軍はドネツク州の露軍支配地域に攻め込み、同州北部の鉄道の要衝リマンで露軍を包囲し、補給路を全て掌握した。ロシア国防省は10月1日、「包囲を逃れるためリマンから撤退した」と発表した。リマンはウクライナ軍にとって、ルハンスク州攻略の足がかりとなる要衝であるが、あっさり奪還したのである。ウクライナ軍は30日、露軍が展開する南部ヘルソン州の州都ヘルソンから10キロ圏内に迫った。ウクライナ軍はルハンスク州に攻め入り、10月5日時点で6集落を露軍から奪還した。ゼレンスキー大統領は5日、南部ヘルソン州でも3集落を奪還したと表明した。ウクライナ軍幹部は6日、南部ヘルソン州で10月に入って29の集落を解放したと明らかにした。

 

 9月30日、カリーヌ・ジャンピエール米国大統領報道官は、「米国は核で脅されてもウクライナへの支援をためらわない」と述べた。米国はウクライナ軍の4州への攻撃を、ロシアが「自国に対する攻撃だ」と言ったとしても、ウクライナへの巨額の軍事支援を継続し、領土保全に向けウクライナ軍の攻撃を後押しする構えである(10月1日付読売新聞)。バイデン大統領は4日、ゼレンスキー大統領と電話会談を行い、新たに約900億円の追加軍事支援を行うと表明した。高機動ロケット砲システム「ハイマース」4基や155ミリ榴弾砲10門と砲弾7万5000発などだ。日本政府も10月7日、遅まきながら4州併合への措置としてロシアの関係者81人と9団体の資産を凍結させる追加制裁を決定した。

 

●プーチンは核兵器を使用してウクライナ軍を壊滅させ、首都キーウを核攻撃してゼレンスキー大統領に降伏を迫る

 

 ⑴ここから本題になる。プーチンが4州を併合したのは、戦術核兵器や化学兵器などの大量破壊兵器を使って戦局を大逆転させ、そして侵略戦争に勝利するためである。ロシアは2020年6月、「ロシア連邦の核抑止分野の国家政策の基本原則」を発表した。ロシアが核兵器を使用する4つのケースを挙げたものだ。その一つに、「ロシアが通常兵器による攻撃で国家の存続が脅かされた場合」がある。つまり、ウクライナ軍が4州を奪還するために攻撃してきたとき、4州はロシア国家になったのだから、ロシアは核兵器を使用することができるのである。

 

 現在、戦闘はウクライナ軍が完全に主導権を握ることになっている。ロシアが通常兵器だけで戦うならば4州は早晩奪還されることになる。米欧は軍事支援を続けるし、経済制裁も継続し強化されるからだ。ロシアは経済制裁で半導体を入手できず、兵器の増産ができない。ロシアにとっては「ロシア領土を奪われる」ことになる。この事態を許したら、独裁者プーチンといえども「指導者失格」となり、立場を失うことになる。だから、プーチンは絶対に戦術核兵器や化学兵器を使っていく。プーチンは2月24日の侵略戦争開始のときから、「いざとなったら核兵器を使って勝利すればよい!」と考えていたのだ。

 

 プーチンは2月7日の仏のマクロン大統領との会談で、「ロシアは核保有国だ。もし、NATOがウクライナに直接軍事介入して、ロシアと戦争になったら、(核戦争になるから)その戦争に勝者はいない!」と述べて、NATOが直接介入したら核戦争になるぞ!と威嚇したのである。バイデン大統領は2月10日、米国テレビとのインタビューで「米軍をウクライナに派遣する考えはない。米国とロシアが撃ち合いを始めれば世界大戦になる」と述べたのである。プーチンは「米国とNATOは世界大戦・核戦争になることを恐れて、ウクライナに直接軍事介入することはない」と確信して、2月24日に侵略戦争を開始していったわけである。だから、「もしも戦況が悪くなれば戦術核を使えばよい。勝利はロシアのものだ!」と考えて、戦争を始めたのである。

 

 ロシアは戦略核以外の戦術核を約2000発保有している。中距離核、短距離核(射程500キロメートル以下)、戦場核(核砲弾や核地雷等)だ。戦術核には爆発威力が極めて小さい核もある。爆発威力が1キロトンの超小型(超低出力)核の場合、空中爆発の場合の被害は半径1キロ以内である。約2キロ四方の範囲だ。1キロトンの核の地表爆発だと被害は2.5分の1となり、約0.8キロ四方となる(髙田純著『核爆発災害』150頁の表と151頁の記述参照。中公新書2007年4月発行)。ロシアは1キロトンから5キロトン程の小型(低出力)核兵器も大量に持つ。

 

 ⑵プーチンは攻撃目標に応じて様々な出力の核兵器を使って、ウクライナ軍の壊滅を図っていくであろう。ウクライナ軍の指揮中枢施設や、戦車などの前線部隊、ハイマースや155㍉榴弾砲の後方火力部隊、兵站部隊、防空ミサイル部隊、空軍(空港)等を壊滅させていく。ウクライナ軍に奪還された要衝リマンやハルキウ州南部の要衝イジュームも再び占領していく。プーチンは米欧NATOの軍事支援の兵器・弾薬を運ぶ鉄道を核兵器で破壊する。そのための道路(橋)も破壊する。ウクライナの航空戦力と防空ミサイル戦力を壊滅すれば、ロシアの航空戦力がウクライナ領内で空爆できるようになる。航空機による空爆が可能になれば、プーチンは核兵器以外では最大の威力を発揮する兵器と言われている「燃料気化爆弾」(「サーモバリック爆弾」)も使用するだろう。「爆発ガスの素」の封を切り、爆発ガスが発生・膨張して点火して爆発するもので、2000~3000度の高熱と数気圧~12気圧の爆風・衝撃波で人間を大量に殺傷する爆弾だ。

 

 なお、核兵器を使用すると、残留放射線によって、約1ヵ月は危険な期間「核ハザード」になる。ロシア軍もその期間はそのエリアへは進軍できない。だが超小型核なら迂回すればよい。

 

 プーチンはその後に、ゼレンスキー大統領に降伏を迫る。拒めば、首都キーウの端の一角を小型核で攻撃する。降伏するまでそれを繰り返す。プーチンはNATO諸国にも、ウクライナへの軍事支援を続けるならば小型核兵器で攻撃することもありうることを告げて威嚇する。NATO諸国は武器を供与しており、実体として交戦国であるから(中立国ではない)、プーチンはいつでも攻撃することはできる。NATOは軍事支援をためらうことになる。ゼレンスキー大統領は降伏することを余儀なくされるのではないか。

 

 これらのことは拙文、「米国・西側はプーチンに小型核兵器を使わせないために、直接介入して核抑止力を公言せよ!」(2022.5.11脱、7.17アップ)で主張したことである。米国・NATOはプーチンの、「直接介入したら世界大戦になるぞ!それは核戦争ということだ!勝者はない!」の脅しに負けてしまっているのだ。

 

●プーチンはアメリカと核戦争はしないし、できない。それは口先の威嚇(ハッタリ)に過ぎない

 

 (1)バイデン大統領は10月6日、ニューヨークで開かれた民主党のイベントで、「(プーチンがウクライナで)戦術核兵器を安易に使用すれば、アルマゲドン(世界最終戦争)が避けられなくなる」と語り、強い危機感を示した。サリバン国家安全保障担当大統領補佐官は、「使用した場合は破滅的な結果を招く」と強くけん制した(10月8日付読売新聞)。この意味ははっきりしないが、どうやら「もしロシアがウクライナで戦術核を使用したならば、米国はウクライナに対する軍事支援の内容を強化して、ウクライナとともに、ウクライナに侵略しているロシア軍は全てせん滅する」ということのようだ。米国は裏でロシアにそれを伝えているという。しかし、これまでの方針を根本から転換して、米国が直接ウクライナへ軍隊を派兵してウクライナ軍とともに、ロシア侵略軍をせん滅するというのではない。これまでは供与を控えてきた戦闘機や短距離ミサイルなどを供与して、ウクライナ軍がロシア侵略軍をせん滅できるようにする。それを後押しするということなのだ。

 

 だが、これは前節の(2)で述べたロシアの核兵器を使用した大攻勢によって、実現しないものである。そして逆にプーチンに足元をみられてしまうものだ。

 

 (2)バイデン政権は深く反省して、これまでの方針を根本的に転換しなくてはならないのである。つまり、米国は直ちにウクライナ政府と「相互防衛協定」(批准の必要がない)を結んで、米軍をウクライナへ派兵して、共同してロシア軍と戦うようにするということだ。米国は英国や仏国やポーランドなどにも働きかけて、同じ対応をするように促していかねばならない。NATOの枠組みでは全会一致が原則なので出来ないので、同志の国々が個別にウクライナ政府と同協定を結んでいくのだ。またそれぞれが相互に防衛協定を結ぶ。第2のNATOのようなものだ。

 

 アメリカは本国からの増援部隊をウクライナや独やポーランドへ派兵していく。英国もそのようにしていく。仏、ポーランド等も臨戦態勢をとる。米英仏の核保有国は核戦力も即応態勢に置くようにする。米国と「核シェアリング協定」を結んでいる独、ベルギー、オランダ、イタリア、(トルコ)でも即応態勢をとる。そうしておいてバイデン大統領はプーチンに、「我々はウクライナ軍と共同してロシア侵略軍と戦う!もしプーチンが核兵器を使うならば、我々も核兵器で断固反撃する!ロシアは無益な犠牲者を出すことは止めて、直ちにウクライナ国境線外へ撤退せよ!クリミアからも撤退せよ!」と通告していくのである。

 

 そうすれば、プーチンは東・南部4州からすぐに軍隊を撤退させていく。クリミアについては渋るが、ウクライナと米欧が解放に向けた軍の態勢をとれば、やはり軍隊を撤退させていく。

 

 (3)1962年10月の「キューバ危機」の時は、ロシア(ソ連)はキューバに米国を攻撃できる多くの中距離核ミサイル等を配備した。しかしケネディー大統領が、「米国は核戦争も辞さず!」との強い姿勢を持って、核戦力を即応態勢に置いて、フルシチョフ書記長に「キューバから直ちに全ての核兵器を撤去せよ!」と要求すると、フルシチョフは6日後には「すべて撤去する」と回答して、そうしていったのである。

 

 ロシア国家の大原則は、自らは生存して、周辺の弱小国家を侵略・征服していくことだ。米国・NATOと全面戦争(世界大戦)をする意思は全く持っていない。やれば、アメリカの戦略核と英仏の戦略核によってロシアが壊滅してしまうからだ。それはロシアの大原則の否定であるからだ。自国が滅んだのでは他国を侵略する意味がない。ロシアは自殺になることは国家の大原則に反するから決してしない。これは中国でも北朝鮮でも同じである。

 

 2月24日前にプーチンが、「米国・NATOがウクライナに直接軍事介入すれば世界大戦になるぞ!それは核戦争ということだ!勝者はなくなる」と西側を脅したのは、単なるハッタリ(ブラフ)なのだ。しかし、米国・NATOはプーチンの情報心理戦に負けて直接介入しないことに決めたので、プーチンは侵略戦争を開始していったのである。私たちは以上のことを深く認識する必要がある。本拙文3節の見出しは前出の私の7月17日アップの拙文(5月11脱)の2節目の見出しと同じである。こちらも参照していただきたいと思う。

 

 (4)プーチンは今後は戦術核も使用して反攻を開始していくことになる。もしも米国・NATOが直接軍事介入してウクライナと共にロシアと戦うことをしないとしたら、前述したようにウクライナは敗北することになるだろう。その後には恐ろしい程の大虐殺、大弾圧が繰り広げられていくことになる。プーチンはロシアに抵抗したウクライナ人を決して許さないからだ。

 

 西側民主主義国は「核の脅し」に負けて、戦後の国際秩序を真っ向から否定する、力を信奉する野蛮なロシアのウクライナ侵略戦争を許してしまうことになるのだ。そうなったら、ウクライナ侵略戦争後の世界は全くの「無秩序世界」になってしまう。習近平は米国等を「直接軍事介入したら世界大戦になるぞ!それは核戦争ということだ!」と威嚇して、台湾を軍事侵略していくことになる。

 

 ゼレンスキー大統領は9月30日、4州併合を受けて、NATOへの加盟申請を表明した。SNSで公開した演説で、「ウクライナとNATO加盟国は『事実上の同盟関係』にある」と述べ、「迅速な加盟承認を要請する」と述べた。これに対して、米国のサリバン国家安全保障担当大統領補佐官は、「NATO加盟を巡る手続きは別の機会に検討すべきだ」と述べ、慎重な見方を示した。つまりこれは、直接ロシアと軍事的に戦うことになるのを避けたいとうことだ。そうなればNATOも機能しなくなっていく。たとえば、ロシアがNATO加盟のどこかの弱小国家に軍事侵略して、プーチンが「米国などNATO加盟国が直接参戦するならば、世界大戦になるぞ!それは核戦争になるということだ!」と威嚇すれば、米国など加盟国は直接参戦することをためらい、今、ウクライナにやっているように外部からの軍事支援をするだけになってしまうからだ。

 

 日米同盟にも同じことが言える。中国とロシアと北朝鮮が日本に軍事侵略するとき、「もし米国が直接介入するならば、世界大戦になり核戦争になるぞ!介入はやめろ!」と脅せば米国は介入しないことになってしまう。

 

 そうなれば世界は中国・ロシア・北朝鮮が軍事侵略を繰り返す無秩序の暗黒世界になっていく。今戦後の自由主義の国際秩序は岐路に立っている!

 

 (5)私たちは断じてそのような世界にしてはならない!だから(2)(3)である。私の主張に共鳴される方にお願いしたい。アメリカのしかるべきポストにある方にお伝えしていただきたい。

 

●中国・ロシアを最大の脅威と規定し、閣議決定で本来の憲法9条を支持して国防軍を持ち、自衛権を米国と同等に行使できるようにするのだ

 

 (1)岸田政権は年内までに、2013年12月に故安倍首相が策定した「国家安全保障戦略」等3つの安全保障文書を改定する。繰り返し主張してきたが、同戦略は反国防・反日の内容であり、土台から変革していかなくてはならないものである。日本は、日本侵略・支配を国家目標にしている中国とロシア(中国とロシアと北朝鮮は同盟国である)を敵国として規定しなくてはならないのに、同戦略はその逆を行っているからだ。

 

 故安倍氏は同戦略で中国について、「大局的かつ中長期的な見地から、政治・経済・金融・安全保障・文化・人的交流等あらゆる分野において、日中で『戦略的互恵関係』を構築し、それを強化できるよう取り組んでいく」と書いた。これは「中国の尖兵」が主張するものだ。日本を中国の従属国にしていく政策だ。ロシアについては、「安全保障及びエネルギー分野を始めあらゆる分野でロシアとの協力を進め、日露関係を全体といて高めていくことは、我が国の安全保障を確保する上で極めて重要である」と書いたのだ。「ロシアの尖兵」が書く内容だ。だから、日本は対中、対露国防はできず、それは解体されていった。

 

 故安倍氏は尖閣諸島を中国に、北方領土をロシアに献上してきた。安倍氏はゼレンスキー大統領とバイデン大統領を非難して、プーチンのウクライナ侵略戦争を擁護した人物である。私の前々回拙文「反日政策を実行して保守層を解体してきた故安倍元首相を美化する保守言論界」(2022.8.31脱、10.12アップ)の3節(11)参照。トランプ前大統領もプーチンのウクライナ侵略戦争を支持した反アメリカ的価値に立脚する人物であった。このような思想の安倍氏が、安全と存立を守るための「国家安全保障戦略」を作ることがないのは論理的にも明らかだ。

 

 しかし、安倍氏を応援する識者や新聞や雑誌は、事実に反する大仰な修辞で安倍氏を美化して高く評価してきた。印象操作による国民洗脳である。私たちはこれに対抗していかなくてはならない。故安倍氏の本当の思想は反日左翼であり、反日民族派や保守派の仮面を被って、謀略政治を実行してきたのである。日本共産党などの反日左翼は国家権力を持っていない。だからやりたくても反日政策を実行できない。それを、保守に偽装した反日左翼の安倍氏が実行していったのである。前記拙文で論述したので参照していただきたい。大きな声、多数の声が必ず正しいわけではない。私たちは「法の支配」を堅持して、日本の安全と存立を守るために、科学的・合理的に思考して是非を判断していかなくてはならないのだ。誤りは批判していかなくてはならないのだ。

 

 9月13日付読売新聞に「基礎からわかる安保3文書」という特集記事が載った。そこには、岸田首相は中国を念頭に、「ウクライナは明日の東アジアかもしれない。力による一方的な現状変更の試みは成功しないと示さないといけない」と述べており、中国に対する認識は見返される見通しだ、とある。ロシアについても、政府はロシアのウクライでの行為を国際法違反と強く非難しており、記述は大きく変わる方向だ、とある。「中国・ロシアの尖兵である故安倍元首相」よりも岸田首相の方がまともな対中・対露の安全保障政策を打ち出せるのは確かだ。しかし、私たちは岸田政権のそれをはるかに深化させる内容にしていかなくてはならないである。

 

 (2)岸田政権は「敵のミサイル発射基地などを自衛目的で破壊する『反撃能力』(敵基地攻撃能力)の保有を明記することを検討している」(前同)。安倍氏は2015年6月1日の平和安全法制国会(衆院特別委員会)で、共産党の穀田氏の「敵基地攻撃は論理的に可能か」との質問に、「我が国は敵基地攻撃を目的とした装備体系は保有していない。個別的自衛権でも想定していないのだから集団的自衛権の行使として敵基地を攻撃することはそもそも想定していない」と反日の答弁をした。反日左翼との連携プレイである。関連して、安倍氏は平和安全法制国会で、「重要影響事態」、「存立危機事態」を議論したときにも、「台湾有事」は一切口に出さなかった。南シナ海で中国がフィリピンと武力紛争を起こして機雷を敷設した事態についても、安倍氏は「重要影響事態にも存立危機事態にも該当しない」(6月1日委員会)と答弁している。明明白白たる中国の尖兵としての反日親中答弁である。

 

 (3)「敵基地攻撃能力の保有」は当然のことである。問題なのは、現在のその議論は極めて限定的なものであることだ。それは、日本は憲法9条の反日解釈を続けていて、自衛権行使であっても軍隊の保有はできない、としているからだ。だから「限定的な反撃能力の保有」となっている。だが、それでは全く抑止力にならないのだ!軍隊を持たない国家は「異常国家」だ。自衛権は軍隊によって行使するからだ(国際法)。もし日本が本当に軍隊を持っていないならば、自衛権は一切行使できない。国連にも加盟できない。だから日本政府は国連に対しては、こっそりと「自衛隊は軍隊です」と言ってきた。解決は簡単である。何度も主張してきたが、本来の憲法9条(GHQの9条案もそうだし、1946年8月1日の「芦田修正論」もそうだ)は自衛権行使のための軍隊保持を認めている!だから内閣が閣議決定で、「従来の憲法9条解釈は、本来の憲法9条にも国際法にも違反しているから無効である!」として本来の憲法9条を確立し、そして「自衛隊は軍隊だ」と閣議決定すればいい。わずか一日で日本は軍隊を保持できる。

 

 そうすれば、日本はアメリカ軍と同等に自衛権を行使できる。日本は「限定的な反撃」ではなく、「戦略的攻勢」の反撃ができる(拙文「敵領土への反撃力の保持には、閣議で本来の憲法9条を確立して軍隊を持たねばならない!」2022.2.27アップ参照)。すなわち、敵国領土のミサイル基地だけでなく、ミサイル貯蔵施設、空軍基地、海軍基地、陸軍基地、軍事司令部、、通信施設、武器庫、エネルギー貯蔵施設、軍需工場、発電所、政治指導者等々を攻勢的に攻撃できるようになる。軍を持つか持たないかは、日本の安全と独立・存立に決定的に影響するのだ。閣議決定で軍を保持することは、内閣の憲法上の第一の義務である。反日の安倍氏はこれを断固として拒絶した人物である。そして憲法9条を更に改悪して、日本に永久に軍隊を持てないように策動してきた反日人物である(拙文「憲法9条は自衛権行使の軍隊を認めている!閣議決定で一日で軍隊を持てる!」2022.7.16アップ。その2節(4)を参照)。政府は絶対にポピュリズムに陥ってはならない。法の支配から見て正しいことを、国民に説得していくのが政府の役割だ。

 

 (4)岸田政権は「非核3原則」を直ちに破棄しなくてはならない。アメリカは現在、全力を挙げて中距離ミサイルと短距離ミサイル(核弾頭と通常弾頭)を製造している。日本は米国の中距離・短距離の核ミサイルを日本に配備してもらうとともに、米国と「核シェアリング協定」を締結して、有事に日本の核となるものも配備していいくのである(平時の所有権は米国・米軍にある)。そして共同訓練を積み重ねていく。「非核3原則」(2013年12月の「国家安全保障戦略」でも謳われた)は、反日反米政策であり、反日左翼の政策だ。中国・ロシア・北朝鮮のみを利するものである。

 

 中国・ロシア・北朝鮮が日本を軍事侵略するとき、必ず核ミサイルを発射するのだ。この侵略を抑止するためには、日本も上の方法で核ミサイルを保持することが絶対に必要になる。私たちは反日左翼によるプロパガンダ闘争(核兵器は非人道的だ云々)を粉砕しなくてはならない。日本は核兵器で攻撃されないために、核を保有するのだ。自由民主主義国の核兵器は、平和な世界を守るための「正義の兵器」である。独裁侵略国家の核兵器は世界を侵略するための「悪の兵器」である。反日左翼は中露北の尖兵であり、国内の侵略勢力なのである。これらについては拙文「米国の中距離核戦力を国内に配備し、核共有して、中国・ロシア・北朝鮮を封じ込める」(2022.5.24アップ)を参照していただきたい。

 

 (5)私は「保守偽装の反日左翼の安倍首相の謀略政治」という拙文を2022.10.3にアップしてもらった。これは実は2015年11月26日脱で2015年12月18日に掲載された文である。「大森勝久評論集」というホームページに掲載された文だが、サービスの終了で現在は閲覧できないため、本「新・大森勝久評論集」(ブログ)に掲載してもらった。「拉致と戦う安倍首相」は「虚像」であること、本人と応援団が作り上げた「安倍神話」であることも述べたものである。また、日本人が「悪の政府(安倍首相)」と戦えないのは「法(国際法を含む)の支配」の思想がなく、「法の支配」を全否定する「法治主義」に洗脳されて、政府から自立した批判精神を備えた政治主体になれていないからだ、と主張した。

 

 「法治主義」という法思想は、国民に選ばれた政府を「最上位の存在」として、政府が決めた政策(憲法解釈を含む)・法律・命令等を「正しい」とするものだ。それらが「法の支配」に違反していても「正しい」とする。「法の支配」は、法に反する政策、法律、命令等はしてはならない。それは違憲であり無効だとする正しい法思想である。つまり「法治主義」は文明国家の原則の「法の支配」を否定するものであり、「人の支配」の一種だ。だから安倍氏は「芦田修正論」も平然と排斥した。保守系知識人も「法治主義」に支配されて、プーチンと同志の安倍首相を批判することもできなくなっている。ここまで腐敗は深く進行している。そういうことを書いた拙文である。参照していただけたら幸いである。引き続き、2015年と16年前半にアップしたが、現在は閲覧できなくなってしまった拙文を4点、順次掲載していく予定である。一読していただければ幸いである。

(2022年10月10日脱)