●本来の憲法9条はアメリカと同じであって、自衛権行使の軍隊の保持と自衛のための軍事力の行使を認めている

 

 (1)直近の2つの拙文「敵基地攻撃能力は抑止力にならない。日本は軍を保持して戦略的攻撃力を持たねばならない」(2021.9.25脱・10.29アップ)、「私たちは軍隊を保持して中国、ロシア、北朝鮮の侵略から国と国民を守らねばならない」(2021.10.11脱・11.13アップ)に続いて書いていきたい。

 

 私たちは本来の憲法9条を正しく認識しなくてはならない。それが、中国、ロシア、北朝鮮の侵略から国と国民を守るために不可欠な第一歩であるからだ。本来の憲法9条は自衛権行使のための軍隊の保持を認めているし、自衛のための軍事力の行使を認めている。また、国連安保理決議に基づく多国籍軍に参加して、軍事力を行使(武力行使)して制裁を行うことを認めている。また、国連平和維持活動(PKO)に参加して、国連基準の武力行使を行うことを認めている。GHQが1946年2月13日に、日本政府に手渡した憲法9条案はこういう内容であったのだ。つまり、アメリカのそれと同じである。原文が残っているから明白である。憲法の専門家は知っている。

 

 (2)ところが、日本側が日本語訳を誤ったために大混乱が生まれた。憲法9条2項の日本語訳を、自衛権行使のためであっても軍隊の保持を認めないと読めるものにしてしまったからだ。しかし、1946年8月1日の「芦田修正案」によって、事実上GHQの9条案と同じものになった。それが、可決成立したのである。GHQで憲法9条案を作ったケーディス大佐が、芦田均氏にアドバイスを行うことによって、「芦田修正案」となっていったのである(2021.6.3アップの拙文参照)。GHQのマッカーサー元帥も1950年に再三、日本国民に向けて、「憲法9条は当初より、自衛権行使のための軍隊の保持を認めたものである」と声明を出している。また元帥は後の日本政府の憲法調査会に対しても、その旨の書簡を提供している。芦田均氏も1957年12月5日に憲法調査会で修正した目的を証言している。

 

 (3)私たちは本来の憲法9条とは(1)の内容であることをしっかりと認識しなくてはならない。そして吉田茂内閣が1952年11月に閣議決定した「憲法9条の統一見解」、すなわち「憲法9条2項は自衛目的であろうとも軍隊の保持を認めていない」とする見解は、憲法9条をまさに反日解釈したものであり憲法9条に違反していること、また憲法98条2項「日本国が締結した条約及び確立した国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする」に違反していること(例えば、国連は加盟国に軍隊の保持を義務付けている。軍隊を持たない国は国連に加盟できない。国連憲章2条、4条、42条より)、従って憲法98条1項「この憲法は、国の最高法規であって、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない」によって無効であることを、私たちは深く認識しなくてはならないのである。「憲法の支配(法の支配)」とはこれである。

 

 だから正義を行う内閣が、「吉田内閣の憲法9条の統一見解は本来の憲法9条や憲法98条2項を全面否定したものであるから、憲法98条1項の規定によって無効である」と閣議決定すれば、直ちに無効となり、本来の憲法9条が確立するのだ。一日で済む。また一日で自衛隊を軍隊にできる(閣議決定)。私たちは一日でも早く、これを実現しなければならない。

 

 (4)侵略国家から日本の国と国民の安全を守る要は、軍隊である。外交は軍事の裏付けがなければ機能しない。一般国際法(=国際慣習法)は、自衛権行使要件を「国家また国民に対する急迫不正の侵害」としている。そして、主権国家は自衛権を軍隊によって行使するとする。だから、軍隊を持たない国(日本)は自衛権を十全に行使することはできない。厳しく制約された形でしか行使できない。日本政府はそれを「必要最小限度の実力行使」「専守防衛政策・戦略」と称してきた。

 

 アメリカなど軍を持つ普通の国は、「国家、国民に対する急迫不正の侵害がある」とき、自衛権を行使して侵略国の基地をはじめ軍事・政治・経済中枢に対して反撃する戦略的攻撃を実行できる。しかし日本はできない。日本を軍事攻撃しても、日本から報復攻撃されるリスクがないため、中国・ロシア・北朝鮮は日本侵略を狙うのだ。つまり「専守防衛」では敵国の侵略を抑止できないのだ。もちろん防衛もできない。日本の専守防衛政策・戦略は反国防、反日なのである。今日まで日本に対する本格的軍事侵略が抑止されてきたのは、同盟国アメリカがいるからに過ぎない。日米安保条約である。

 

 日本国家と国民は日本が主体となって安全を守らなくてはならない。常識だ。しかし、日本の歴代内閣は吉田内閣の「憲法9条解釈の統一見解」を継承してきたのだ。政府は「憲法尊重擁護の義務を負う」(憲法99条)が、逆に最も重要な憲法条項のひとつの本来の憲法9条を否定してきたのである。これは、まさしく国家反逆の憲法違反行為である。反日の政治大犯罪である。日本は本当に異常な国家、国民なのである。私たちはこのことを認識しなくてはならない。憲法99条「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負う」。

 

 (5)政府は意識的に本来の憲法9条を国民に隠した上で、反日解釈した憲法9条で国民を反教育してきた。洗脳である。政府の見解や国会答弁は、新聞やテレビ等のメディアによって国民に届けられてきた。与党議員も同じ主張で国民を洗脳してきた。文脈はもちろん違うが、反日左翼(共産主義勢力)の野党(共産党、社民党、立憲民主党)や朝日新聞やNHKも、また反日左翼が支配する憲法学界や日本学術会議会議も、「憲法9条は軍隊の保持を禁止している」「自衛隊は違憲存在だ」と国民を洗脳してきた。反米右翼も「アメリカは日本に軍隊を持たせないために、日本を弱体化するために憲法9条を押し付けた」と国民を洗脳してきた。

 

 憲法学の専門家、政治家、官僚で、GHQの憲法9条案、芦田修正論、マッカーサー元帥の日本国民宛の声明を知っている者は決して少なくはなかった。京都大学の佐々木惣一法学部教授は芦田修正論を支持して憲法学の本を書いていた。『改訂 日本国憲法論』(1952年2月1日発行。有斐閣)である。しかし、吉田内閣の「統一見解」(1952年11月)に対して、公然と、「それは憲法9条を否定する解釈であり、憲法98条1項により無効である!」と批判して、誤っている政府と戦っていく真のエリートはほとんど現れなかったのだ。

 

 つまり、立憲主義・憲法の支配(法の支配)の思想が知識人にも無かったのである。憲法は政府(行政・立法・司法の拡大政府)と国民の「統治契約」である。だから政府は憲法に支配されて統治(内政、外交・軍事、立法、司法)を行う義務がある。憲法前文にある「そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであって、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基づくものである。われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する」が、これである。憲法を意識的に否定する政府は「悪の政府」であり、国民によって交代させられるのである。しかし、知識人ですら立憲主義・憲法の支配(法の支配)を獲得できなかったのである。

 

 立憲主義・憲法の支配は文明先進国の原理であるが、日本にはない。この思想が獲得されていなければ、国民は従来からの「政府はお上である」「政府が決定したことが正義である」の誤った思想に支配されるままになってしまう。つまり、吉田内閣をはじめ歴代内閣の「憲法9条2項は自衛目的であっても軍隊の保持を認めていない」が「正義」になってしまうのである。だから、GHQの憲法9条案や芦田修正論を知っている知識人も、批判の声を上げることを止めた。そのために、芦田修正論があることもほとんどの人が知らないことになっていった。GHQの憲法9条案についてはなおさらであった。

 

 (6)日本国憲法は、自民党政府、保守勢力、反日左翼、憲法学界、反米右翼によって徹底的に歪められ否定されてきた。憲法9条や憲法98条2項、憲法98条1項は完全に否定されてきた。憲法前文も歪曲され否定されてきた。しかし、1995年2月に西修氏が『よくわかる平成憲法講座』(TBSブリタニカ)で、芦田修正論を明らかにした。国際政治学者の篠田英朗氏が『憲法学の病』(新潮新書2019年7月)で、GHQの憲法9条案を明らかにした。日本の安全と生存をなんとしても守らんとする私たちは、今こそ全力で戦っていかなくてはならない時である。

 

 (7)中国・ロシア・北朝鮮は事実上、同盟関係にある。3国は日本やアメリカを攻撃できる核・化学弾頭・非核の長射程ミサイル(移動式)を多数実戦配備している。迎撃が困難な超音速滑空兵器も開発配備している。核爆発EMP(電磁パルス)兵器(高高度での核爆発で半径2200kmの超広範囲に強力な電磁波を発生させて、パソコン、電車、自動車、飛行機、船、多くの兵器、電力網、通信網、衛星通信、ガス、水道などあらゆる電子機器を破壊するか、誤作動させる兵器)も完成させている。3国はこれらの兵器で日本の同盟国アメリカを逆抑止することができると考えたならば、日本を軍事攻撃してくるのである。

 

 日本は3国の軍事攻撃を抑止し得る、軍事戦略と戦力(兵器)を早急に構築しなければならない。日本は国家存亡の危機に直面している。私たちはこのことを認識しなければならない。

 

 そのためには、日本は敵国に対して戦略的攻勢・攻撃を実行できる前提になる軍隊を保持することが必要不可欠である。私たちは「政府の現在の憲法9条解釈は、自衛権行使のための軍隊の保持を認め、急迫不正の侵害に対して、軍事力を行使することを認めている本来の憲法9条を、真っ向から否定するものであり、憲法違反である。反日である。国家反逆の政治的大犯罪である。憲法98条1項によって無効のものだ。正義の内閣を早急に創り出し、閣議決定で本来の憲法9条を確立して軍隊を保持しなければならない」と主張して、日本の安全と生存を守るための国民運動を必死になって創り出していかなくてはならないのである。本来の憲法9条はアメリカのそれと同じである!

 

●立憲主義・憲法の支配を否定する権力者・政府は打倒されなければならない。正面から批判することこそが変革力を持つ

 

 (1)私たちは「政府=お上」の認識を断固否定しなければならない。日本は立派な憲法を持っている。憲法は政府と国民の「統治契約書」である。憲法9条を反日解釈して否定してきたのは、日本政府である。そのために、日本は軍隊を持てず、国と国民の安全を守れない事態になっている。日本は国家存亡の危機に直面している。政府や議会は憲法尊重擁護の義務を負うのに(憲法99条)、義務に反することを続けてきた。立憲主義・憲法の支配を否定する権力者・政府は国民によって糾弾されて倒される(交代させられる)のだ。これが文明国の立憲主義の原理である。「政府=お上」は江戸時代の観念である。私たちは自己批判して思考枠組みを大転換しなくてはならないのだ。

 

 (2)中国が侵略大国として台頭し、ロシアも侵略を再開させ、北朝鮮も核戦力を増強させてきた今日において、本来の憲法9条を否定して日本に軍隊を持たせないようにし、反国防の「専守防衛政策・戦略」の維持を、中心になって推進してきた人物が安倍元首相である。彼は日本の対中国防、対露国防、対北朝鮮国防を解体してきた人物だ。彼は拉致被害者を取り戻すことなど、最初から考えてもいない。「偽りのポーズ」をとって国民を騙しているだけだ。

 

 (3)安倍首相(当時)の私的諮問機関「安保法制懇」(座長は国際海洋法裁判所長で元外務次官の柳井俊二氏。構成員は14人)は、2014年5月15日に「報告書」を首相に提出した。「報告書」は従来の自民党政権と安倍政権の安全保障政策の誤りを指摘して、根本から克服していくべきことを「提言」したものであった。

 

 ①報告書は「あるべき憲法9条解釈」として「芦田修正論」を主張して、これまで政府は芦田修正論を採ってこなかったが、閣議決定で芦田修正論を決定すべき旨を提言した。だが、安倍首相(当時)は当日の記者会見で、「芦田修正論は採用しない!」と拒絶したのだ。完全な反日行動、憲法違反行為であった。もし安倍氏が提言を受け入れていたら、日本の国家安全保障政策は土台から変革されていった。日本は中国・ロシア・北朝鮮の侵略を抑止できる国防戦略とそのための兵器を構築・配備していくことができるようになっていった。しかし、この方向は安倍氏の思想性と正反対のものであり、初めから望むべくもなかったのだ。

 

 ②報告書は、自衛隊法に「領海・領土保全侵害排除規定」を盛り込むことを提言していた。平時の国防である。敵国からの領海侵害や領土侵害が生じようとしたら、直ちに自衛隊が武器を使用して排除できるようにするためである。しかし、安倍氏はこれも拒絶した。尖閣諸島も守る意思はないということだ。

 

 ③報告書は、一般国際法における自衛権行使要件は、「国家又国民に対する急迫不正の侵害」であると述べ、日本は「国家に対する武力攻撃が発生したとき」にしか自衛権行使を認めておらず、極めて狭すぎると主張した。そして自衛権行使要件は国際法に基づくべきであることを提言した。一般国際法によれば、北朝鮮による「繰り返された拉致」は、「集積」されることで「武力攻撃」とみなされ、自衛権行使要件に該当する。そもそも、現在多くの拉致被害者が北朝鮮で拘束されており、これは「国民に対する急迫不正の侵害」であるから、自衛権発動事態なのである。だが、安倍氏はこれも拒絶した。

 

 ④報告書は、憲法9条1項が放棄した武力行使は、我が国が当事国である紛争を解決する手段としての武力行使であり、日本が国連安保理決議に基づく集団安全保障措置(軍事制裁)へ参加して武力行使することに、憲法上の制約はない。積極的に貢献すべきと提言したが、安倍氏はこれも拒絶した。

 

 ⑤報告書は、日本は集団的自衛権を行使できる。集団的自衛権こそが重要であると提言したが、それも安倍氏は拒絶した。――

 

 安倍首相(当時)は2014年7月1日に、「国の存立を全うし、国民を守るための切れ目のない安全保障法制の整備について」という文書を閣議決定した。この文書では前記「報告書」の提言は全て排斥されていたのだ。安倍氏の述べる言葉は「字面で国民を欺くもの」ばかりである。この文書も憲法9条と憲法98条2項(条約及び国際法規の遵守。つまり一般国際法の「自衛権行使要件」等)に違反しているから、憲法98条1項によって無効である。これが法の支配だ。

 

 (4)識者も自衛官元将官らも、安倍首相が「報告書」の提言を拒絶したために、自らの主張を抑え込んでしまった。そして最高権力者の安倍首相に積極的に迎合していったのであった。保身のためであるばかりでなく、名を売る私益のためでもある。立憲主義・憲法の支配(法の支配)の思想が獲得されていれば、起こりえないことだ。「首相(お上)の決定が正義である」と認識されているわけである。このような「安倍応援団」ともいうべき多くの識者たちも、国民によって厳しく批判されるべきである。私たちは前記(1)を深く認識する必要がある。

 

 (5)「安保法制懇」は安倍首相の私的諮問機関であったから、「糾弾」ではなく「提言」という形をとるしかなかった。だから、その効果は、日本の思想状況においては限られていた。私自身はいろいろ知識を学んだが。

 

 もしも、「安保法制懇」が社会における有志によって結成された団体であって、法的な内容は同じものであっても、私が厳しく糾弾しているような、安倍首相と安倍政権を糾弾して戦う文書形態として書かれて、同志を求めて社会に向けて発表されていたならばどうであっただろうか? きっとはるかに大きなインパクトを発揮して、社会を動かしただろうと思う。共同文書に賛同して名前を連ねたいという同志が段々と増えていったであろう。

 

 立憲主義・憲法の支配の地平からなされる、憲法違反を実行している権力者・政府に対する正面からの糾弾こそが、変革力を持つのだと私は信じている。私は無名だが、社会的に名を知られていてしっかりした肩書きもある人たちが、共同声明文を発表して政府と戦ってほしいと切望している。日本は国家存亡の淵に立っているのだ。

 

 一言付け加えておきたい。安倍首相(当時)はイニシアチブを発揮して、自民党の憲法改正項目を決定した。そのひとつは、現在の憲法9条2項の反日解釈(軍隊保持の禁止)を維持した上で、軍隊ではない「実力組織」の自衛隊を憲法に盛り込むというものだ。安倍首相は「自衛隊の役割と権限を変えない」と何度も国会で答弁している。この憲法改悪は、日本には決して軍隊を持たせないためである。もし、この憲法改悪が実現したら、日本はもう永遠に自衛隊を軍隊にできない。実現しなくても、この運動こそが、日本が閣議決定で本来の憲法9条を確立して軍隊を保持することを阻止するものである。日本に対中・ロシア・北朝鮮国防をできなくさせるためである。日本侵略を狙う中国・ロシア・北朝鮮が大歓迎しているものだ。それなのに、多くの保守派識者や元自衛官将官は、安倍氏のこの憲法改悪を支持してしまう。本当にどうかしている。安倍氏は言葉で頻繁に保守の演技をするが、その思想を疑ってみるべきである。

(2021年10月31日脱)

 

(◎私の文をボランティアで入力してくださるという同志の方がいらっしゃれば、このブログを管理してくださっている荒木和博様へご連絡いただけないでしょうか)