【問1】 図1は厚生労働省のサイトで公表している「世帯の所得の分布」(2017年)のグラフです。ただし、一部、文字を伏せているところがあります。
図1の(ア)と(イ)には「平均値」と「中央値」のどちらかが入ります。さて、(ア)と(イ)のどちらが「平均値」でしょうか、どちらが「中央値」でしょうか。また、「最頻値」はいくらでしょうか。
まず一番わかりやすいのは「最頻値」でしょう。値が最も多くなるところ、すなわち棒の高さが最も高いところ、この場合は「300万円〜400万円」がそれに当たります。数学の教科書的には、その幅の真ん中の値をとって「350万円」となります。
次に「平均値」と「中央値」について考えてみましょう。グラフに各所得区分ごとの割合が書いてありますから、上から順にもしくは下から順に足していけば、中央値がおよそわかります、平均値については2000万円以上が一括りになっているために、グラフから平均値を求めることはできません。
それはそうと、平均値と中央値ではどちらが上でどちらが下でしょうか。グラフの形から判断してください。
答えは、グラフの下の方、すなわち「442万円が中央値」で、グラフの上の方、すなわち「560万円が平均値」です。グラフの右の方、すなわち少数だけれども非常に高額の所得を得ている人たちがいる影響で、平均値は中央値より大きくなります。
端的に言えば、少数の大金持ちが平均値を釣り上げているわけです。でも大金持ちと言っても人数は少ないですから、中央値にはほとんど影響を与えないのです。
ところで、最近「相対的貧困率」という言葉を聞くようになりました。皆さんもテレビなどで「子供の6人に1人が相対的貧困」という言い方を聞いたことがあるでしょう。
ところで「相対的貧困」とはどういうものかというと、世帯の所得などが全体の「中央値の半分以下」であることをいいます。ということは、全体がどれだけ豊かになろうと、豊かさにバラツキがあれば、必ず相対的貧困は存在することになります。
でも冷静に考えてみると、「子供の6人に1人が相対的貧困」と言われても、その数字が大きいのか小さいのかよくわからない。それがどれだけ大変なことか、あるいはそうでもないのか、実はよくわからない。
では、上の所得グラフから「中央値の半分以下の割合」を求めてみましょう。中央値442万円の半分は221万円です。それ以下の割合を計算すると、100万円未満の5.6%と100万円以上200万円12.3%を足して17.9%。さらに200万円以上300万円未満の13.3%のうちの約5分の1にあたる2.6%を足すと20.5%。これが所得が中央値の半分以下の世帯の割合とみなすことができます。
これをもって相対的貧困率としてもよいでしょう。「子供の」というより「大人の相対的貧困率」と言ってもよいものでしょうけれども、「家計の所得」を元に計算すると、「5人に1人が相対的貧困」ということになります。