川端康成「温泉宿」を読みました。

この、女性の肌の描写が、素晴らしいと思いました。
温泉宿にもらい湯して入浴している お咲 という名の娼婦の体を見て、同じく湯につかっていた お滝 という女中が感じたことを
次のように書いている

「真白な蛞蝓(なめくじ)のように、しとしとと濡れた肌 骨というものがどこにも感じられない、一点のしみもない柔らかな円さだ。蝸牛類のように伸び縮みしそうな脂肪で、這う獣だ。」

その前後にも、お咲 に対する お滝の印象が綴られている。

蛞蝓 とか 獣 とかいう気味の悪い言葉を使っているのに、
お咲 の 柔らかさや白さが美しさが、なまもののように光り、透明感をさえ感じさせる文章だと思った。

湯場の湿り気や、蒸気の匂いや、温みをも
文章から感じる。

言葉が、文字が、文章が、
色も、音も、感じさせ、触覚も、嗅覚も働かせる。

ただ、読むだけで、その場にいるような錯覚を起こす。


「温泉宿」は、印象を深く読者に植え付ける作品であると感じた。