天衣紛上野初花
今回は、『天衣紛上野初花』の中の、「松江邸玄関先の場」の中から、宗俊の台詞を取り上げてみました。
昨年、国立劇場で上演されましたが、と通し狂言は、中々全部を拝見できることは珍しいですよね。昨年は、国立劇場で行われましたが、観劇された方はいますか?
河竹黙阿弥=作/河竹登志夫=監修
通し狂言
天衣紛上野初花 (くもにまごううえののはつはな)
質屋の上州屋に姿を見せた、お数奇屋坊主(江戸場内で大名の用事を勤める坊主)の河内山宗俊ここで河内山は、奉公に出た上州屋の娘が松江公に言い寄られて困っているという揉め事を知り一儲けできると悪事を働かせる。松江公の屋敷に「北谷道海」と名乗る僧が現れた。上野寛永寺(将軍家の菩提寺)からの使いだという。 実はこの僧は河内山。寛永寺の意向で上州屋の娘を実家に帰すようにと、松江公に詰め寄り、拒む松江公を脅し、しぶしぶ承諾させる。意気揚々と引き上げる河内山を玄関先で呼びとめ、正体を見破る家老 北村大膳。河内山はこれを悠然とかわし、松江公を罵倒しながら帰路につくのであった。
「松江邸玄関先の場」
【大膳】 いかほど白を切らるるとも、のがれぬ証拠は覚えある。左の高頬に一つのほくろ。
ト宗俊、ぎっくり思い入れ。
宗俊 大膳はそれを知っていたのか。ははははは……。そうか。いかにも宮の使えと偽った、おらァ、お数寄屋坊主の河内山宗俊だよ。
【大膳】 それ、いずれも。
ト近習六人、身がまえて立ちかかる。
【宗俊】 何でえ/\/\、仰々しい、静にしろい。こんなひょうきん者に出られちゃァ仕方がねえ。こうなったら何もかも言って聞かせる。こういうわけだ、聞いてくれ、よゥ。
悪《あく》に強きは善にもと、世のたとえにも言う通り、親の嘆きが不憫さに、娘の命を助けようと、腹に企みの魂胆を練塀小路に隠れのねえ、お数寄屋坊主の宗俊が頭の丸いを幸えに、法衣《ころも》でしがを忍が岡。神の御末の一品親王、宮の使えと偽って、神風よりゃァ御威光の、風を吹かして大胆にも、出雲守の上屋敷へ仕掛けた仕事の曰く窓。家中一統白壁と、思いのほかに帰りがけ、とんだところへ北村大膳。腐れ薬をつけたら知らず、抜きさしならねえ高頬のほくろ。星をさされて見出されちゃァ、そっちで帰れといおうとも、こっちはこのまま帰らねえ。この玄関の表向き、おれに騙りの名をつけて、若年寄へ差し出すか、それとも無難におさめたけりゃ、お使え僧でこのまま帰すか、二つに一つの返事を聞かにゃァ、ただこのままにゃ帰られねえよ。
【大膳】 引かれ者の小唄とやら、出るままの悪口雑言。騙りと知れし上からは、縛り上げて頸打ち落し、松江の手並を見せてくれるわ。
【宗俊】 おっとどっこい、そううまくはいくめえぜ。たとえ騙りの名はあっても、お城を勤めるお数寄屋坊主、この河内山はご直参だぜ。たかが国主であろうが大名風情に裁許を受ける覚えはねえ。それとも自由にこの首が、落されるなら落してみろ、どうだ。容易に首は落されめえ。
【大膳】 しからば騙りの次第をいい立て、このまま上へ差し出し、おのれが首を落させくれるわ。
【宗俊】 そりゃァそっちの料簡次第。騙りといって差し出せば、どうで命に関わる凶状。地獄へ行って抜かれても、この三寸の舌先で、おれが喋ったことならば、それは持ち前浄玻璃の鏡にかけて身上の知行高に疵がつこうぜ。さ、それを承知でやる事なら、騙りといって差し出してくれ。
【大膳】 さァ、それは。
【宗俊】 それともお使僧でこのまま帰すか。
【大膳】 さァ。
【宗俊】 騙りといって差し出すか。
【大膳】 さァ。
【宗俊】 さァ。
【両人】 さァさァ/\/\。
【宗俊】 おい、江戸っ子は気が短けえんだ。早くしてくれ、よゥ。

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昨年、国立劇場で上演されましたが、と通し狂言は、中々全部を拝見できることは珍しいですよね。昨年は、国立劇場で行われましたが、観劇された方はいますか?
河竹黙阿弥=作/河竹登志夫=監修
通し狂言
天衣紛上野初花 (くもにまごううえののはつはな)
質屋の上州屋に姿を見せた、お数奇屋坊主(江戸場内で大名の用事を勤める坊主)の河内山宗俊ここで河内山は、奉公に出た上州屋の娘が松江公に言い寄られて困っているという揉め事を知り一儲けできると悪事を働かせる。松江公の屋敷に「北谷道海」と名乗る僧が現れた。上野寛永寺(将軍家の菩提寺)からの使いだという。 実はこの僧は河内山。寛永寺の意向で上州屋の娘を実家に帰すようにと、松江公に詰め寄り、拒む松江公を脅し、しぶしぶ承諾させる。意気揚々と引き上げる河内山を玄関先で呼びとめ、正体を見破る家老 北村大膳。河内山はこれを悠然とかわし、松江公を罵倒しながら帰路につくのであった。
「松江邸玄関先の場」
【大膳】 いかほど白を切らるるとも、のがれぬ証拠は覚えある。左の高頬に一つのほくろ。
ト宗俊、ぎっくり思い入れ。
宗俊 大膳はそれを知っていたのか。ははははは……。そうか。いかにも宮の使えと偽った、おらァ、お数寄屋坊主の河内山宗俊だよ。
【大膳】 それ、いずれも。
ト近習六人、身がまえて立ちかかる。
【宗俊】 何でえ/\/\、仰々しい、静にしろい。こんなひょうきん者に出られちゃァ仕方がねえ。こうなったら何もかも言って聞かせる。こういうわけだ、聞いてくれ、よゥ。
悪《あく》に強きは善にもと、世のたとえにも言う通り、親の嘆きが不憫さに、娘の命を助けようと、腹に企みの魂胆を練塀小路に隠れのねえ、お数寄屋坊主の宗俊が頭の丸いを幸えに、法衣《ころも》でしがを忍が岡。神の御末の一品親王、宮の使えと偽って、神風よりゃァ御威光の、風を吹かして大胆にも、出雲守の上屋敷へ仕掛けた仕事の曰く窓。家中一統白壁と、思いのほかに帰りがけ、とんだところへ北村大膳。腐れ薬をつけたら知らず、抜きさしならねえ高頬のほくろ。星をさされて見出されちゃァ、そっちで帰れといおうとも、こっちはこのまま帰らねえ。この玄関の表向き、おれに騙りの名をつけて、若年寄へ差し出すか、それとも無難におさめたけりゃ、お使え僧でこのまま帰すか、二つに一つの返事を聞かにゃァ、ただこのままにゃ帰られねえよ。
【大膳】 引かれ者の小唄とやら、出るままの悪口雑言。騙りと知れし上からは、縛り上げて頸打ち落し、松江の手並を見せてくれるわ。
【宗俊】 おっとどっこい、そううまくはいくめえぜ。たとえ騙りの名はあっても、お城を勤めるお数寄屋坊主、この河内山はご直参だぜ。たかが国主であろうが大名風情に裁許を受ける覚えはねえ。それとも自由にこの首が、落されるなら落してみろ、どうだ。容易に首は落されめえ。
【大膳】 しからば騙りの次第をいい立て、このまま上へ差し出し、おのれが首を落させくれるわ。
【宗俊】 そりゃァそっちの料簡次第。騙りといって差し出せば、どうで命に関わる凶状。地獄へ行って抜かれても、この三寸の舌先で、おれが喋ったことならば、それは持ち前浄玻璃の鏡にかけて身上の知行高に疵がつこうぜ。さ、それを承知でやる事なら、騙りといって差し出してくれ。
【大膳】 さァ、それは。
【宗俊】 それともお使僧でこのまま帰すか。
【大膳】 さァ。
【宗俊】 騙りといって差し出すか。
【大膳】 さァ。
【宗俊】 さァ。
【両人】 さァさァ/\/\。
【宗俊】 おい、江戸っ子は気が短けえんだ。早くしてくれ、よゥ。

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