転院した近所の脳神経外科には男性職員がいた。

行っている仕事から判断すると、看護士さんではなく夜の介護士要員として働かれているようだった。

身体は大きくはないけど、力仕事を走り回ってこなしていた。


私は仕事が早番の日は帰りがちょうど母の夜ごはんの時間なので、必ず職場から病院へ。

横に座って食べるのを手伝って、歯磨きをサポートして、車椅子を押して病室でベッドに寝かせ、

少しおしゃべりして水を飲んでもらって帰るのがお決まりだった。

その頃もう自分で全く動けない母を、車椅子からベッドへ移動させるのはなかなか大変だった。

だから、その男性職員がいるときはいつもお願いしていた。


ある日、いつものように力いっぱい母を抱き上げ、ベッドに寝かせてくれた時、

母が途中で「痛い、痛い」と。

でもその時点で既に母を抱えていた彼は、そのままいつも通りベッドへ。

その後、特に何も言わず忙しそうに去って行った。


母を見ると、天井を見ながら目に涙をいっぱい溜めてこらえてた。

私はただ寄り添うことしか出来なかった。

母のこんな顔を見たのはその時1回だけだった。

でも、きっと病気になってから、こんな思いは何百回もしたはずだ。

私に見せなかっただけで。


それからしばらくして、私は介護の学校に通い始め、見よう見まねでベッドへの移動を手伝うことができるようになった。

時にはパジャマのパンツを引っ張ってビリっと音がしたり、時には一緒に倒れたりしながら。

母は「ダメダメだね」って言いながら笑ってた照れ