…side広臣



愛を見失った瞬間
体の力がふっと抜け落ちた



好きってたった
二文字が伝えられなかった



あんなにも一緒にいたのに
俺は…



愛のこと理解してやることも
応援してやることも
出来なくて…



頑張れって言葉すら
掛けてやれなかった



後悔の想いだけが次から次へと
溢れる



暫く立ち上がることすら
出来ないでいた…




















タッタッ…







タッタッタッ……







俯いた俺の視界に入った
見慣れた白いスニーカー



えっ?



体の細胞がいっぺんに
動き出す



「おみっ、、、?」



その声に反応して
ゆっくりと顔を上げた先



そこには
驚いたように目を見開いた
愛が立っていた




臣「愛っ、、、」


愛「なんで、、、?」

 
臣「……よかった。」



噛み締めるように目を瞑ると同時に
ホッとしたのか
深い息が漏れる…



愛「こんなとこで何やってるの?」



その言葉に思わず
我にかえった



臣「ちょっとこっち…
     こっちきて!!」



慌てて腕をつかんで
連れて行った先



愛「臣っ…
     ちょっ、ちょっと痛いっ…
     ねぇ、ねぇってば!」



訳わからないとばかりに
戸惑った表情のまま
言われるがままに連れてこられたのは
人通りの少ない場所
 


少し荒っぽく
引っ張り込むと感情のままに
言葉をぶつける



臣「お前、ふざけんな。
    何でなんも言わねーんだよ?
    いい加減にしろよ!!」



いつもの愛なら
威勢よく言い返してくる



だけど返ってきたのは
意外な言葉だった



愛「……泣いてるの?」



はっ?
何言ってんだよ



そんな訳ないだろって
言い返そうとした瞬間に
スッと一筋の
涙が溢れた


臣「…っ。
    泣いてなんていねーし。
    バカじゃねーの。」


慌ててそれを拭う


愛はただ黙って
見つめていた



臣「何でお前はいつもそんなに勝手なんだよ?
    黙っていなくなるとかあり得ないだろ?
   
    あんな形で喧嘩したままサヨナラなんて…

    ってかお前が居ないなんて
    あり得ないんだよ!!」
    


 愛「……どう言い意味?

      何でそんなに臣が怒るの?」


臣「何でって、、、そりゃ、、、」


愛「臣は残酷だよ…

    友達としか思ってないくせに、、、
    なんで…?!

    臣には関係な、、、っ」


臣「関係ない、、、なんて言うなよ?

    あるから!!
    少なくても俺にはある!!
    関係大有りなんだよ!!!」


愛「意味わかんないよ…。

    何でこんなとこまで来たの?
    何で泣いたりするの?

    私、、、無理。

    もうこれ以上は、、、もぅ無理だよ。グスン」



愛の目からは
綺麗な
大粒の涙が溢れる



人に泣いてる理由を問いておいて
お前だって泣いてんじゃん



途端に抑えきれなくなった俺は
愛の腕を引き寄せて
しっかりと抱きしめた



臣「ごめん、、、俺ももう無理。」


愛「臣っ…?」


臣「 俺っ、お前のことめちゃくちゃ
     好きだわ…。」


ピクっと反応したのは
抱き寄せた身体からも
伝わってきた



ゆっくりと身体を離して
見つめ合う



驚きと不安と期待が
入り混じったようなそんな顔



臣「今まであまりにも近くに居すぎて、
     側にいるのが当たり前すぎて
     自分の気持ちに気がつくまでに
     ずいぶん時間が掛かっちゃった…。

     居なくなるって思ってやっと気づくとか
     笑っちゃうよな…。

     お母さんのことがあった時だって
     お前を守りたいと思った。
     支えになりたかったし、
     幸せにしたいって心から思えたんだ。

     愛が誰よりも大切で、、、
     お前以上の奴なてどう頑張ったって
     あり得なくて…

     誰も愛の代わりになんてなれないんだよ。」


愛「ウソっ……。

    そんな訳、、、」


臣「こんなとこでまで来て
     ウソなんてつくかよ!!

     愛は?
     お前はどうなの?

     俺のこと嫌い?
     友達としか思えない?

     俺と離れて本当にお前は平気なのかよ?」
     

愛「平気な訳、、、

    平気なわけないじゃん、、、。


    私も、、、私だって…。


    臣のことが好き…。

    小さい頃からずっと、、、


    臣の事、友達なんて思ったこと

    たぶん一度もなかった。

    

    本当はずっと…

    ずっと……グスンッ


    一人の女の子として見て欲しかった…


    好きだって言ってほしかったよ…」



臣「愛っ、、、」



嬉しくて感情の昂りは

抑えきれなくて




もう一度抱き寄せると

さらに力強く抱きしめた




愛「でも、、、

    もう遅いよ…。


     私っ、、、南米に行くんだよ?」



臣「あぁ、、、知ってる。」



愛「やっと見つけた夢なの!

     変わりたいって、初めて前向きに思えたの…」



臣「…うん。」



愛「2年間も…

    もしかしたらそれ以上掛かるかも

    しれないのに…」



臣「分かってる!全部分かってるから。」



愛「だったら…」



臣「だったら何だよ?


    お前、昔俺のこと何年一人にしたと

    思ってんの?

    それに比べたら2年ぐらい余裕なんだわ!」




この前は急に聞かされて

ショックと驚きのあまり酷いことばかり

言ってしまった




だけど今なら…




失うことを考えたら

そんな事くらい

もう大した問題じゃなくて




今なら

ちゃんと言える気がしたんだ




臣「愛?こっち見て?」




顔を上げると

しっかりと視線があう




臣「行ってこいよ!

    お前のやっと見つけた夢、

    しっかり叶えてこい。


    俺はここに居るから。

    変わらないでこの場所でお前に

    負けないぐらい俺も頑張って、

    愛が帰ってくるのを待ってるから…。」


  

愛「そんなこと…泣」


臣「その代わり一つだけ
    約束してほしい事があって。」


愛「…約束?」


臣「今度は、今度こそはちゃんと…

    ちゃんの俺のいる場所へ
    帰ってこい!!

    ただいまって
    俺のもとへ帰ってこいよ?

     居なくなったりしたら
     承知しねーんだからなw

     お前には帰ってくる場所があるって事、
     絶対に忘れんなよ?」


愛「臣、、、臣っ…泣」



涙でグシャグシャな顔



それは然程俺も変わらなくて…



臣「お前、泣き過ぎw」


愛「グスンっ…

     臣だって…」



お互いにそれを指で優しく拭うと
思わずくすって笑って
涙と一緒に笑顔が漏れた



すぐ目の前には愛の愛おしい顔



熱を帯びた目で
見つめ合うと
鼻と鼻がぶつかるくらい
体温も鼓動も
リアルに感じる距離

 

自然と引き寄せあうように
そっと唇を重ね合わせた