ドームの駅に着くなり
たくさんのファンの子達で
溢れかえっている



三代目のロゴが入った
ツアーTシャツ

タオルやフラッグ



手作りで作ったのかそれぞれのメンバーの
似顔絵キャラクターを
ぶらさげて歩く人達



顔や腕にスポーツ観戦の時
見かけるような
タトゥーシールを張り付けて
歩いてる人までいる



三代目どころか芸能に昔から
なんの興味も持たなかった私からしたら
既にこの感じすらどこか異世界な
空気感に思えた



まだまだ開演前なのに
そこにはすでに
熱気を感じるほどの賑わいがあって
この後、始まるライブを
心待ちにしてのが
伝わってくる…



みんなとても楽しそうで
キラキラした笑顔が
やたらと印象に残った



関係者入り口から中へ通されると
くねくねっと少し細い道を曲がって
長い廊下を渡り
階段を上れば
目の前には大きなステージが
広がっていた



す、すごい…



東京ドームってこんな大きいんだ



独特の雰囲気に包まれた会場に
足がすくみそうになる



やっぱり何か場違いなんじゃないか…



落ち着かなすぎて
来なければよかった…
なんて
後悔しかけた矢先
ポケットの中で携帯が
小さく震える



臣からのLINE



"どうせ落ち着かなくてやたらソワソワして
来なければ良かった…
なんて思ってんだろ?w"



的確に言い当てられ
ビックリしすぎて
反射的に周りを見回した



もう一度軽く震える携帯に
視線を落とすと
続いてもう一件…



"余計なことは何も考えないでいいから
今日は俺の事、よく見てろよ!

そんで全てが終わったら
お前に話したいことがある

待っててほしい"



改まってなんだろう



ってか私の姿、見えてる、、のかな?

なんて



偶然であろう
絶妙すぎるタイミング



おかしな挙動になってしまった自分に
何だか笑えて来て
思わず顔が緩んだ



時間が経つにつれ段々とファンで
埋まってきている座席



改めて見てみると
すごい人数



この子達みんな、臣や三代目が大好きで
今日会えることを
楽しみにして
ここへ来ているんだ…



そんな当たり前のことを
今さら思った



そんな事を考えていると
会場中が暗転…



聞いたこともないような
割れんばかりの歓声に包まれる



たくさんの照明と
スモークの中から現れた7人



大きな音で音楽が響くと
会場の熱も一気に高まって
全体がひとつになる感覚



そんな中、待ってましたとばかりに
聞こえて来た
臣の歌声に更なる歓声が
湧き上がる



その瞬間、全身に波打つような
鳥肌がたった



なにこれ…



CDやテレビで
もう何度だって聞いたことあるはずなのに
そんなのとはまるで別物



心地のいい滑らかな歌声に
伸びやかで心にスーッと響く
綺麗すぎる高音



私の耳は一気に
魅了された



そしてモニターに映し出される臣は
自信に満ち溢れた顔をして
挑発的な笑みを浮かべている



何年も一緒にいて
今までたくさんの顔を見て来て
何でもわかった気になっていた



だけどこんな表情は
見た事ない



この大観衆が
さらに臣を妖艶にさせるんだ



こんな大きなステージでも
決して引を取らない
堂々とした姿で
歌い踊っている…




いつもの臣の姿は
そこにはなくて
完全にアーティスト登坂広臣の顔



なんかもぅ眩しすぎて
目が眩むような
眩いオーラを放っていてる臣は
違う世界にいる人なんだと思えた



2時間以上身動きがとれなくて…



ただただステージに姿に釘付けに
なっていた



あっという間に最後の曲も終わり
気がつけば辺りは明るくなる



ふと我に帰ると
次第に湧き上がって来た感情に
焦りが募る…



だけどその気持ちは
すぐに私への後押しへと変わった



今まで散々悩んでいた気持ちは
スーッと
どこかに消えいって



私はある決断をしたんだ…