…side莉央



今日は私の28回目の誕生日



夕方まで仕事して
夜からは広臣とお泊まりデートだった



何ヶ所か訪れた現場では
その都度花束やケーキを
用意してくれて

沢山の人が
お祝いしてくれた



SNSですぐさま
写真を載せて投稿する



#マイバースデー
#みんなありがとう
#サプライズにビックリ💖



SNSに寄せられる
ファンの子からの温かいコメント



事務所に沢山のプレゼントも
届いていて
毎年周りの方々の
愛を感じる瞬間だった



だけど今年は特別



それは広臣…



彼の過ごせると初めての
誕生日だったから



特別な日は
特別な私で会いたい



待ち合わせは夜だったから
エステに行って
体の状態も万全に整えた



ディオールの新作ワンピースに
袖を通す



この前の展示会で頂いた
とっておきのパンプスも
下ろして
ヘアメイクも
仕事でお世話になっている
プロの方に頼んで…



うん!!我ながら完璧だ



待ち合わせより早く着いた
ホテルのレストラン



待たされるのなんて
大嫌いなわたしだけど
不思議と一つも嫌ではなかった



待ってる時間の
ワクワク感とでも言うのだろうか



彼の姿を想像して…

この後の事を想像して…



待ち時間がこんなに
心躍るものなんて
知らなかった



広臣と出会って
今まで感じたことのない想いを
沢山の知った



様々な事に
一喜一憂して



最大の喜びや
最低な感情にもなった



だけどその全てが
彼との事だと思うと愛おしくて



それだけでも私にとっては特別で
素敵な恋



そんな風に思っていた



こんな時ばかりは一流モデルとしての
莉央ではなくて

本当にどこにでもいる
一人の女の子
 


全ての鎧を下ろして
ただ大好きな人を思う



普通の女の子に
なれるんだぁ…






広臣は
少しだけ遅れてやってきた


臣「遅くなってごめん…」



こんな感じのレストランだからか
ドレスコードで現れた



長身の彼は
スーツがとてもよく似合う



ハイブランドのスーツを
身に纏った広臣は
息を呑むほど素敵で
私は目が離せなかった


臣「やべっ…w」


上から下まで
私に視線を送っている


莉央「えっ?何?
        私、なんか付いてる?」


臣「いやぁ、いつも綺麗だけどさ、、
     今日は更に綺麗だなって思って…

     ちょっとフリーズしたw」


莉央「フフッw
        もぉ〜何よそれw

         広臣こそ、物凄い素敵だよ💖」


臣「なんか改まっては
     照れ臭いなw」


まともに会うのは久しぶりだった
感情も手伝って
二人とも少し照れ臭そうに
微笑んだ



レストランの奥の
一席だけ設けられた
特別席



高層階で周りには眩いばかりの
素敵な夜景が広がっていた



見慣れていたはずの
東京の夜景も
彼とみれば特別感は遥かに増す



席に座るとシャンパンが運ばれてきて
順番にお料理が
並べられる


見つめあい
グラスを重ね合わせた



黄金に輝くシャンパンの泡が
パチパチと音を立てて
弾ける



それは心躍る私
その物のように思えた



広臣「お誕生日おめでとう!
        あっ、これ。
        莉央に似合いそうだなって思って…」



プレゼントの箱を開けると
ジュエリーが埋め込まれたクロスのモチーフの
可愛いブレスレットが
入っている



莉央「すごい可愛い💖ありがとう!!
        大切にするね!!」



仕事柄アクセサリーなんて
沢山持っているけど
広臣からの物は特別だった



すぐに着けてみようと
手間取っていると
すぐ横へやってきて腰を下ろす



長い腕を伸ばして
器用に金具を繋いでくれる



私の腕に光る
ブレスレットを見ては
よく似合ってるって言って
嬉しそうに微笑んでくれた




お料理はどれも本当に美味しくて

普段は気にして
あまり手をつけないケーキまで
今日はしっかり食べて
お酒も飲んだ



くだらない話も楽しくて…



ゆっくり顔を見て話が出来ている事が
何よりも嬉しかった



優しく微笑む広臣



だけど何だろう…



ふとしたと時に時折見せる
遠い顔…



舞い上がっていても
ちゃんと気づいていた



その意味はこの時の私には
分からなくて…



ただ少しだけ
不安にさせたんだ…





そのままホテルの部屋へと
移動する



なかなか予約が
取れないホテルだという事は
知っていた



随分前から動いてくれていた
その気持ちが嬉しかった



莉央「やばい、めっちゃ素敵なお部屋💖
        ありがとう!!」


思わず広臣に
抱きついてギューっとすると
両腕を彼の首元へ回す


莉央「ねぇ、一緒にお風呂入ろう?」


臣「ハハッwめっちゃはしゃぐじゃんw
     なんか珍しいな?」


莉央「だってね、今日めっちゃくちゃ
        楽しみにしてたんだもん!

        広臣は?楽しくない?」


臣「そんなことねーよ!
     楽しいよ!!」


莉央「っていうか、、
        なんかちょっと元気ない?」


臣「スケジュールビッチリだったから
      ちょっと疲れがたまってんのかな…

       ごめんな…」


莉央「そんなの気にしないで!

        忙しい中、ありがとう!
        嬉しいよ…」



私からそっと唇を
寄せた…



「広臣、大好き…」



そう呟くと
再び唇を重ね合わせようと
した瞬間



トゥルルル…



無機質な電子音が部屋中に
鳴り響いた



広臣「あっ、、、悪りぃ…」



熱くなりかけた身体は
もどかしさを残して
ピタッと静止して引き離される…



携帯を見た途端ハッとした表情へ変わり
少し離れた場所に移動して
話し始めた



さっきの柔らかい表情とは一転



険しい顔と
焦ったような声…



何かあったんだということは
すぐに分かった…