…side広臣



仲直りしたくて
謝りたくて会いに行ったのに

家の中は
まるで泥棒が入ったような
酷い有り様



泣き腫らした酷い顔の愛が
そこにはいて
部屋の片隅で膝を抱えて
泣いていた



中学の時の記憶が
不意に蘇った



両親の喧嘩で傷ついた愛を
放っておけなくて…

ずっと一緒にいた



あれから十年以上経って
すっかり大人になった



だけど親のことになると
昔と何も変わらない



昔、抱えてしまった
傷は今も癒えなくて



時間だけいくら経過しても
きっと変わらない



余計にしこりのように
心にこびりついて大きくなってしまって
許したくても
簡単には
許せないんだろう



本当は誰よりも
愛している人だから…



そして
誰よりも一番に愛して欲しかった
人だからから…



そんな狭間で
ずっと苦しんでいたんだな



会いに行かないと
俺にハッキリと告げた



だけど本当は誰よりも会いたい

そんな心の叫びが
俺にはちゃんと聞こえてきたんだよ



何とかしてやりたい…



中、高生の頃の俺はまだ
全然ガキで

気の利いた言葉の一つも言えず
ただ一緒にいてやる事しか
出来なかった



でも今なら…
何かやれる事があるはず



あいつの力になってやりたい



支えたい…



俺なりに色々と考えた






きっと
これしかない…


思い当たることは
一つしかなかった



愛はまた
怒るかもしれない



勝手な事しないでって
言われるのは間違いないだろう



でもお前にだけは
後悔してほしくなかったんだ



そうは思っていても
スケジュールは想像以上にタイトで

気持ちとは裏腹に
アホみたいな仕事量を平気で
ブチ込まれている




一人で動いているわけじゃないから
簡単に自分の都合で調整なんて効かない



思うようにすぐには
動けない事がずっと
もどかしかった



余命宣告

早ければ一ヶ月…



もたもたしてる暇なんて
一秒もないのに…



焦りだけが募った



合間でまめに愛には連絡を
入れていた



もう落ち着いたから
大丈夫だよなんて…



言ってはいるものの
やっぱり心なしか元気がない



仕事にはちゃんと行ってるし
ご飯も食べれてるよと
笑っていたけど…

普段なかなか素直になれないやだから、
大丈夫と言われる度に
胸が締め付けられた



なるべく一緒にいてやりたいと
思っていたのに…



それすらままならない状況に
余計に腹が立ったんだ…