もがいていた。
私に気づいてもらえるように。
名前を呼んでもらえるように。
私はもう10年近く同じ夢をみている。
伝えたいことがあったんだと思う。
あなたをもっと知りたかったけど、怖かったんだ。
たくさん私を愛してくれていることを知っていたけど、それに気づくのはいつも誰かの言葉からだった。
必死に追いかけているのは私だけだと思っていた。
どうして私に言葉をくれなかったんだろう。
何も言わずに抱きしめてくれたけど、いつもいつも怖かった。
思い出した。
いつかの夜。
あなたとここへきたんだ。
風が気持ちいいねっていったけど
あなたは何も言わずにただ微笑んでた。
私はまた不安になってうつむいて、次の言葉を探してた。
昨日の夜。
夢の中で私は今ももがいていた。
なにか言葉をかけてほしくて、ずっとずっともがいていた。
言葉で伝えなかったのはきっと私の方だ。
愛してもらうことばかり考えて、愛し方を知らなかった。
あの夜の偶然がなければ私たちの今はきっと違っていたんだろう。
でも。
あの偶然が私たちの未来だったんだと思う。
どうかあなたが今も幸せであるように。