くノ一その一今のうち 閑話休題編
109『富士川 水鳥幻想』 そのいち
シューーーーーーーーーーーーーーーー
一羽の白い鳥が後ろから飛んできて、橋の上を西にわたしと百花の視線を奪っていく。
数秒で白鳥は小さくなって見えなくなるんだけど、それに反比例して景色が変になっていく……半ばまで渡った新富士川橋が透けてきて、隠れていた向こう岸が見えてきた!
向こう岸は右に富士山の子分みたいな山々、左は駿河湾に続く平地……なんだけど、ついさっきまで見えていた建物や送電鉄塔が見えなくなった。その代わりに、向こう岸には数キロに渡って白い幔幕やら無数の赤い幟やらがビッシリ並んでいる。
そんで、背中の通学鞄がゴソゴソ言ったかと思うと、鎧に身を固めた義経くんが実体化。
「「え?」」
お調子者の高校生ではなくて、大河ドラマの主人公みたいな姿に意表を突かれる。
「来るぞ!」
凛々しい姿で振り返ると、義経くんは後ろ、東側の岸を指さした。
そこには大河ドラマの撮影? 幔幕や白幡が並んで、まあ、AIとかで粉飾したら一万くらいには見えるかも、白旗組の半分にも満たない軍勢がいる。
バサバサバサバサバサバサバサバサバサバサバサバサバサバサバサバサ!!
すごい水音がして、百花と二人、いっしゅん身構ええる!
でも、すぐに分かった。
何千何万という水鳥がいっせいに羽ばたいて、西の方に飛んでいく。
すると、向こう岸の幔幕や幟がフワフワゆれて、倒れたり捲れたり、西の方に逃げ出したり。
え? え? なに?
変化が激しすぎて、わたしも百花もとっさに付いていけない。
「あれは平家の軍勢だよ。都から『頼朝追討』を旗印に攻め下ってきて、この富士川で鎌倉軍と睨み合ったんだ。それが、水鳥が飛び立つ音に驚いて、一斉に逃げ出した、その時のありさまだよ」
「なんか、平家て、メチャかっこ悪い……」
「平家の方が数が多いように見えるんだけど」
「多い方が勝つとは限らない……」
義経くんの表情が微妙——してやったり!——という感じでもあり——なにやってんだ!——といういら立ちも見える。
「義経くん、あんた、お兄ちゃんの頼朝のこと嫌いなん?」
「なんで(^^;)?」
「せやかて、ちょっと顔が怖いで」
「あ、ああ……」
ピンときた。
「これ、義経くんの仕業でしょ?」
「ええ! あんた、あれだけの水鳥操ったん!? 魔法使いか!?」
「そうじゃないわよ……噂を広めたのよね」
「え、どんな噂?」
「『源氏は朝駆けしてくる』って」
カチャ
図星だったんだ、鎧が鳴った。
「確か(忍者スマホを開く)……義経くんが旗揚げした頼朝のところに駆けつけたのが……治承4年の8月……で、富士川の戦いが10月」
「うわ、二か月後やったんやねぇ」
「ほんとうは、迎撃の指揮を自分が取りたかった。でも……奥州からやってきたばかりで、そんなのやらせてもらえないから、家来たちに噂を広めさせたんだ」
「源氏の朝駆け……それて、水鳥の音でビックリすること織り込んでたん( ゜Д゜)!?」
義経くんの肩が落ちた。
「ま、まあね……それで、追い打ち掛けたら、全滅させることはできなくても、何百人かは討ち取れる。それに尾ひれを付ければ、戦わずに平家は都を逃げ出していたはずだ」
「お兄ちゃんは追い打ちかけへんかったん!?」
忍者の感覚でも、ここは追い打ち一択、百花の反応は正しい。
「補給が続かないという理由だったんだけどね。都まで追いかける必要は無かった、ほんの一押しするだけで完全試合になるはずだった」
カチャ
また鎧が鳴った。
「あ、なんか、いつのまにかその気になってしまって……アハハハ(^▢^;)」
「ううん、めちゃかっこええよ!」
「うん」
「いや、のんびり行こう、のんびり……」
フッと力みが消えたかと思うと、五月人形みたいな鎧姿は富士学院高校の体操服。それも、少しゴムの緩んだジャージなんで、ちょっと腰パンになって、それを時々揺すり上げて橋を渡る。
その日は有名な三保の松原も近い清水区の神社に泊めてもらった。
☆彡 主な登場人物
風間 その(そのっち) 世襲名・そのいち ノッチと約めて呼ばれることが多い
風間 その子 風間そのの祖母(下忍)
百地三太夫 百地芸能事務所社長(上忍) 社員=力持ち・嫁持ち・金持ち
鈴木 まあや アイドル女優 豊臣家の末裔鈴木家の姫
中村 百花 薩摩の山潜衆の忍者
義経 藤沢の首洗い井戸で出くわした。
猿田毘古神 箱根から東を担当
忍冬堂 百地と関係の深い古本屋 おやじとおばちゃん
徳川社長 徳川物産社長 等々力百人同心頭の末裔
服部課長代理 服部半三(中忍) 脚本家・三村紘一
十五代目猿飛佐助 もう一つの豊臣家末裔、木下家に仕える忍者
多田さん 照明技師で猿飛佐助の手下
杵間さん 帝国キネマ撮影所所長
えいちゃん 長瀬映子 帝国キネマでの付き人兼助手
豊臣秀長 豊国神社に祀られている秀吉の弟
- 前ページ
- 次ページ
滅鬼の刃 エッセーラノベ
63:『武者のメモ・3・Yさんのボヤキ』
武者のメモに、こんなのがありました。
Yさんのボヤキ。
Yさんというのは、わたしも顔見知りの学食の経営者、いわゆる食堂のおっちゃんです。
学食は請負が普通です。民間の業者が入札で決まる……というのがタテマエですが、学食というのは儲かりません。だから、学校がツテを頼んでやってもらうということが多いように思います。ネットで見ると、役所や自衛隊の駐屯地でも請負なんだと出ていました。
以下、学食について武者の備忘録、メモなのですが、そのままでは訳が分かりませんので、エッセー風に書き起こします。
☆・挨拶が返ってこない。
放課後、武者がお茶を買おうと学食に向かうと、ベンチで休憩していたYさんが手を振っています。ベンチは学食とテニスコートの間にあります。
『武者せんせぇ』
「休憩ですかぁ」
お茶を買うと、武者はYさんの横に腰かけます。テニスコートは二面あって、手前が男子テニス、向こうを女子テニスが部活の真っ最中です。
カポーーン コロコロコロ……
受けそこなったテニスボールが転がってきます。
「ほれ」
ボールを捕ると、球拾いの一年生に投げてやります。
「ありがとう、おっちゃん(^^;)」
一年坊主はお礼を言ってボールを受け取ります。
「生徒は、ちゃんと挨拶しよりまんねんけどねえ……」
そう言ってYさんは、奥のコートに目をやります。
女子のコートでは、生徒に混じって新任の二人の先生がラケットを振っています。
二人とも女性です。
「かいらしい先生やけど、挨拶しても返ってきまへん」
Yさんは、根っからの河内のオッサンで、若者が好きです。なり手の少ない学食を引き受けているのも、この——若者好き——があるからでしょう。
この年は、8人の移動がありました、新任4人のうち3人が女性だったのですが、三人ともYさんが声をかけても無視なのだそうです。
「ああ、そうでんなあ……」
ゆるく応えながら武者も思いました。
「先生には、どないですのん?」
「ああ、似たようなもんでんなあ、せやけど声はかけますよ」
武者もわたしも、挨拶が基本だと思ってやってきました。同僚に対しても生徒に対しても顔を知っていたら必ず声をかけます。声を掛け合う仲でないと、いざという時、話を通じさせるのに余計な時間と手間がかかります。
組織というのは一種の機械で挨拶とか無駄話という潤滑油が巡っていないと、すぐに軋むものです。
武者と、そういう話をしたことがあるのですが、武者は「なんで?」と不思議な顔をしました。
「だって、そうだろ、担任持ったら最初に話すだろ『挨拶はしろ』って」
「ああ……」
聞くと、武者は取り立てて、そういう話はしないようなのです。
「それて——生きてんねんやったら息しろ——言うみたいで恥ずかしい」
「ああ……」
何度か武者の職場に行ったことがありますが、武者と出くわす生徒のほとんどが挨拶していきます。
これから下校という者は「さいなら」とか「うっす」とか声に出すやつ、コクンと無言で頭を下げるやつ、「バイバイ」と気やすいやつ、「ウフフ( ´艸`)」だけの女子。まちまちですが、たいてい何か返ってきます。
「挨拶て九分九厘身内とか近所でやろ。それは、それぞれのやり方、大人がしてんのん見て覚えるんや。それでええと思う」
なるほど……武者は、隣近所の感覚で生徒たちに接しているのだなあと思いました。
しばらくすると、女先生たちが飲み物を買いに来ました。
自販機は三台並んでいるのですが、手前の自販機には目当てのがないようで、コインを持つ手がさ迷っています。
「○○のお茶やったら、こっちですよ(⌒∇⌒)」
Yさんがよそ行きの笑顔で教えてあげます。
「え、あ、ども……」
ぎこちない笑顔で、一人は○○のお茶、もう一人は手前の自販機でモジモジして適当に買っていきました。
「あんまり人馴れしてはらへんのんですなあ……」
採用試験の二次には面接があって、受験者のコミュ力も見るのですが、試験官は動員された管理職か指導主事。マニュアルの受け答えでこなせます。学生時代にバイト経験のある人もいますが、こちらもマニュアルにすぎません。
就職して、剥き出しのオッサン的同僚、食堂のおっちゃん、街のニイチャンネエチャンみたいな生徒相手にはマニュアルが通じません。
まあ、たいがい思い込みなんですが、慣れないことはなかなかできるものではありません。
担任室(職員室とは別ものです)に戻って、この道三十三年という女先生にさっきのことを話しました。
女先生はインターナショナルをロシア語で歌えるという女傑で、同僚からも生徒からも一目置かれている人です。
「アハハ、わたしも、そうやったわよ」
と、一笑に付されました。
どうも意を尽くせませんが、次回、この女先生のことから触れ直したいと思います。
☆彡 主な登場人物
・わたし 大橋むつお
・栞 わたしの孫娘
・武者走 腐れ縁の友人(35回より故人)
待ての勇者と急ぎの姫騎士
093 : ハイデベルク・11・神の妻シギュン
「少しは役に立とうと申しましてね……」
やっと寝付いたククをトントンしながら神の妻は話をつづけた。
「考えたんですよ、シャイロックさんたちがうちの傍を通って北に向かうのを見て」
ああ……分かったような気がしたが、続けて話を聞く。ヒルデも胸壁に身を預けて聞く姿勢を崩していない。
「ロキもわたしも逃げて来たんです、事情はロキが話した通り。荒れ野の森に棲んでいれば何事もなく過ごせるんだけれど。シャイロックさんもヴェニスから逃げてこられて、細々と荷車で商売をなさっていて、シュプルーデ川では随分のお働き。その上、あのように河川敷と岸辺を立派な湯治場の町にしておしまいになった」
俺たちも、あの戦いを思い出すと胸が熱くなる。
「それだけでもすごいのに、今度は、それをあっさり人に任せて、あなたたちの救援に駆けつける。うちの横を通った時は、まだ二十人ほどだったんですよ。それが、あとからあとから人が続いて……」
「そうですね、ここに着いた時は百人前後になっていた」
「それだけではないぞ、塔の上で気を澄ませていると、まだ同じくらいの人数がここを目指しているのが分かる。シュプルーデだけじゃなく、その南の方からのも混ざっている」
「ええ、そうね」
「そうなのか!?」
ヒルデもシギュンも——やぱり神さまなんだ——と感心する。
「年甲斐もなくロキも、奮い立ってしまって、ストレージからとっておきのミョルニルを取り出して……止めようと思ったんですよ、その時は」
やっぱり、妻の立場になると冷静だ。
「でもね、この子を見たんですよ、ククを」
おっぱいの夢でも見ているんだろうか、口をクチュクチュしながら平和に眠っている。
「うちで預かっていれば無事に育ちはするけれど、それでは、人や社会を知らぬままのお人形さんになってしまう」
あ……考えてみるとそうだ。
俺たちは、いつの間にか冒険者という視点でしかものを見なくなってきているのかもしれない。
人もモノも、それ相応のスパンで見なくちゃな。
「魔物の多くは元々は人間だったのよ。過酷な環境に順応していくうちに、容が変わってしまって。ククはまだ赤ちゃんだし、わたしたちは一応は神さまだし、この子を人に戻してやれると思ったのよ」
「戻せるんですか!?」
「影響は残るでしょうけど、あなたたちのところのギギも……」
シギュンの目線に倣って下を見ると、ビアンカやカリーナたちといっしょに宴会の世話をしているギギが目に入った。
「ロキは、このハイデベルクに住み着いて、みなさんを応援することにしたらしいんです」
「え、ロキが(◎◎)!?」
ヒルデが目を剥いた。
「あの人の得意技は変態ですからね。いろんな人に化けて、助言したりアドバイスしたり、そんなことを考えているみたい」
「なるほど……」「そうなんだ……」
「もともとは、ただのお調子者ですから、わたしも傍に居て気を付けてやろうと静かに決心しているところなの(^^;)」
神さまも、いろいろ考えて大変なんだなぁ……耳を傾けながら、俺も決意を新たにする。
アキを救ってやらなきゃな…………思わず拳を握る俺だった。
☆彡 主な登場人物
・鈴木 秀(すずきすぐる) 三十路のフリーター
・ブリュンヒルデ ブァルキリーの戦乙女
・エマ バンシーのメイド
・女神(甲と乙) 異世界転生の境に立つ正体不明の女神たち
・ハンス・バウマン ズィッヒャーブルグのギルドマスター
・フンメル 西の墓地に葬られている一万年前の勇者
・カルマ フンメルとパーティーを組んでいたエルフの魔法使い
・トルクビルト(工藤甚一) ズィッヒャーブルグの幻影魔法士(娘:ビアンカ、カリーナ)
・シャイロック ヴェニスの商人
・ロキ 荒れ野の神(ヒルデの義理の叔父) シギュン(妻)
・親指姫 げんこつ山のゴーレムに取り込まれていた
・秀を取り巻く人々 先輩 アキ(園田亜妃) 田中
・他の冒険者たち オンケル シュベスタ―
・魔物たち 謎かけ魔物 リーツセル(Rätsel) ガイストターレン シュプルーデ川の魔物 樹叢の魔物 セイレーン(半鳥半人) ギギとクク(元セイレーンの姉妹) げんこつ山のゴーレム 巨大唇の化け物 グズルーン(魔王に魂を売ったジークフリートの王妃)
くノ一その一今のうち 閑話休題編
108『富士市を西に』 そのいち
沼津では富士山大眺望の名所を勘違い、精霊か妖か分からんやつらに冷やかされた。ほら、タラちゃんワカメちゃんみたいなやつ! どっと疲れて、富士市のお寺に着くとグッタリしてしまった。
お寺で化かされたら……その時はその時!
意気込んだけど、普通に朝になって、地元、富士学院高校の制服になって出発した。
富士市では二つの川を渡る。一つは有名な富士川、もう一つは富士川の手前の潤井川(うるいがわ)。
「天気ええさかい、富士山の絶景拝めるかも!」
「あ、もう富士山はいいよ(^^;)」
化かされてはたまらないので——もう十分!——とおへそに力を入れて西に進む。
義経くんは通学鞄の中でまだ寝ている。
富士市の道路はおおむね碁盤目状で、南北の道は、その先30キロの富士山を慕ってチラ見させる。
むろん、建物や手前の山々に遮られてしまうし、空には雲もあるわけでクリアーに見えるわけじゃないんだけど、やっぱりチラチラ見てしまう。
そして、例の潤井川。
潤井川には県道139号線が跨いでいて、その橋の上は遮る建物とか電線とかなくって、晴れてさえいれば見事な富士山が拝めるらしい。
「「おお\(◎o◎)/!」」
百花と二人、橋の真ん中で立ち止まってしまった!
遮る電柱も建物も無く、壮大なパノラマのど真ん中、お風呂屋さんのペンキ絵デラックス! おあつらえ向きの富士山が聳えている!
橋の上は、車道の他に幅広の歩道があって、立ち止まっても迷惑にはならない。
少し気にして前後を見ると、女王卑弥呼かエジプトの神官とかが神を崇めてるみたいな人たち。外国の観光客ばかりと思ったら、日本人もけっこういる。みんな両手を空に掲げ、掲げた手の間には、もれなく呪具のようなスマホがホールドされて、この瞬間を異星人が見たら、富士山を地球で最も偉い神さまだと思うだろ。
「ネットでさぁ『富士山の写真を撮ったら幸せになれる』とか暗示したら、一年で日本を支配できるんちゃうか」
「もう物騒なことを」
「義経くんはええのんか?」
鞄の義経くんに聞くと「もうちょっと寝てる……」だった。
そして、一号線に出て富士川に向かう。富士川には、新富士川橋という四車線の橋が架かっているんだけど、ちゃんと歩道が付いている。
「長いなあぁ……」
百花が呆れたように言う。
「ああ、今まで渡った橋で一番長いよ……」
「忍者やさかい、長いとか遠いいうのんは気になれへんねんけど、単調やいうのは面白ないなあ……」
富士山にもあいにくレインコートみたいな雲がかかって姿を隠している。
「まあ、30分も歩けば向こうに着くよ」
「うっひゃー、1・5キロもあるで!」
よせばいいのにスマホで調べて声を上げる相棒。
等々力渓谷が700メートル。往復散歩しても——あ、もうおしまい?——って感じなんだけど、それと同じ長さが真っすぐ一本棒というのは疲れる。
「歌でも歌おか?」
「そうねぇ……」
「10曲も歌うたら渡れるで」
「そだね」
「がっかりして めそめそして どうしたんだ~い♬」
「お、にんたま!」
それは幼いころ、お祖母ちゃんといっしょにテレビを見ながら歌った忍者アニメのテーマソング!
「「……そうさ 百パーセント勇気 もう がんばるしかないさ~((^^♪^^♪))」
サビのところにかかった時、異変が起こった!
☆彡 主な登場人物
風間 その(そのっち) 世襲名・そのいち ノッチと約めて呼ばれることが多い
風間 その子 風間そのの祖母(下忍)
百地三太夫 百地芸能事務所社長(上忍) 社員=力持ち・嫁持ち・金持ち
鈴木 まあや アイドル女優 豊臣家の末裔鈴木家の姫
中村 百花 薩摩の山潜衆の忍者
義経 藤沢の首洗い井戸で出くわした。
猿田毘古神 箱根から東を担当
忍冬堂 百地と関係の深い古本屋 おやじとおばちゃん
徳川社長 徳川物産社長 等々力百人同心頭の末裔
服部課長代理 服部半三(中忍) 脚本家・三村紘一
十五代目猿飛佐助 もう一つの豊臣家末裔、木下家に仕える忍者
多田さん 照明技師で猿飛佐助の手下
杵間さん 帝国キネマ撮影所所長
えいちゃん 長瀬映子 帝国キネマでの付き人兼助手
豊臣秀長 豊国神社に祀られている秀吉の弟
まりあ戦記・044
『そいつ!?』
四菱のCM撮影に付き合ったので三十秒のロスが出た。
むろん進んで付き合ったんじゃない、司令さえ従わざるを得ない軍産複合体への屈折したイラ立ちからだ。
えーーと……あれぇ……?
三十秒前には目視できたヨミの姿が見えない。
え!?
コンマ5秒遅れて、バイザーコンソールの隅、ヨミの存在を示すドットに気づいた。
三十秒前とは逆方向の丘の陰になっていたのだ。
なんで?
これまでの戦闘でヨミを見失ったことなど無かった。
ぬかったか(~_~;)!?
CM撮影と、それに付き合ってしまった自分がが恨めしいまりあだ。
一瞬思ったが、すぐに気を取り直しアサルトライフルを構え直す。
シュ
構え直したライフルの先端を何かがかすめた。
ドーーーーーーーン!
反射的に首をすくめると、丘の向こうから衝撃波がやってきた。
衝撃波に続いてヨミが煙を吐きながら燕のように急上昇、その後ろを赤い人型兵器が追っていく。
人型兵器はウズメよりも二回りほども小さく、蜂を思わせる軌道を描きながらヨミに迫っていく。両手で抱えたアサルトはウズメのそれよりも小型に見えたが、それでも子供が大人用のそれを構えているような滑稽さがある。
それに、なによりそいつはバイザーコンソールには映っていない。
なに? ステルス!?
ステルス効果はヨミに対しても有効なようで、ヨミが発する対空ビームは大きくバラけている。
そいつはヨミと並行になって初めてアサルトの引き金を引いた。
ドドドドドドドドド!
速射タイプのアサルトは確実にコアに当てているようで、シールドの破片が飛び散る。
ヨミのシールドは高いリペア機能があるので、小口径の弾を食らわせても回復が早い。早いが、この局面だけを見ていると、圧倒的にそいつが強いように見える。
数発がリペアの間隙を縫ってコアを貫通、ヨミのコアからは血しぶきが上がり二筋ほど煙が尾を引いている。
――あれじゃ、バレルが焼きついて使い物にならない、弾だって……――
懸念した通り、そいつはアサルトをパージして、直近のポッド目がけて急降下に入った。
――なにボサっとしてんのよ! 次はあんたの番でしょ!――
え、ええ(*△*)!?
いきなり、そいつの思念が飛び込んできて、マリアは驚きから回復した——くそ!——の勢いで、そいつとヨミの間に割り込んだ。
☆彡 主な登場人物
・舵 晋三 永遠の16歳 法名・釋善実
・舵 まりあ 晋三の妹 高校2年 ウズメのパイロット
・舵司令 特務旅団司令 晋三とまりあの父
・高安みなみ 特務旅団大尉
・中原光子少尉 みなみ大尉の副官
・金剛武特務少佐 ベースのコンピューターの保守を任務とする技術士官
・テレジア(元マリア)ガイノイド戦士(031から)まりあのガード(VR10201改)
・徳川曹長 みなみの世話係
・まりあの友達 釈迦堂観音(お堂さん) 矢治公男と喜田伸晃 鈴木さん 佐藤さん
・学校の先生 瀬戸内美晴(担任)
・時子 舵司令がたまに入れ替わる義体
滅鬼の刃 エッセーラノベ
62:『武者のメモ・2・停学くん』
浅い経験と知識ですが、高校における停学は最大三週間でした。
土日は勘定に入れていませんから、実質15日ぐらいです。無期停学は名称では無期なのですが、たいてい16日間です。制度的には何日にでもできるのですが、そんなところです。ですから、有期停学と無期停学の差は1日だけというのが、わたしや武者の勤務校では相場でした。
「今度は、ほんまもんの無期停や……」
そう言って武者がため息をついたことがあります。
前回で触れた50日停学の件です。
「薬物に関わる事案やさかいなあ、本来は退学やねんけどなあ……前に一回停学やっとるし……」
最後まで言葉にはせずに、ため息を重ねておりました。
詳しくは言いませんでしたが、こじれて間に弁護士が入っているのかもしれません。マスコミも興味を持っているのかもしれません。学校というのは、そういうものには無力です。
ただ、学校は15日プラス一日ではなく、本来の意味での無期停学にしました。
停学というのは、自宅に留め置いて反省文を書かせたり課題を与えたり。途中、担任や生活指導の教師が二回以上家庭訪問(訪問指導)して様子を見ます。そして、特段の問題が無ければ会議に諮られ解除ということになります。
しかし、本人の気力や性格、家庭環境で——やりとげられない——と判断されるときは、適宜登校させます。適宜でダメなら毎日登校させます。他の生徒と登下校が被らない時間を設定しますが、別室に居させて課題をやらせたり、対面指導をしたり。
この間、武者は毎日当該生徒に付き合いました。朝、出迎えて一日のことを報告させ、日報をチェックし、その日の課題を説明します。課題の合間に、たいてい掃除をさせます、広い校内ですので掃除や草むしりはいくらでもできます。
その指導に、武者は毎日付き合いました。週に一度の家庭訪問も欠かしません。担任には相当な負担になりますので、生活指導部で複数の教師に振り当てるのですが、武者は、ほとんど一人でやりました。
「教室に戻さならあかんからなあ」
停学が明けて教室に戻すのが大変です。生徒にもよるのですが停学でハクの付く場合があります。いわゆる『オツトメ帰り』で一目も二目もおかれ、悪い意味でクラスや学校の顔になっていきます。そういうことにならないよう、当該生徒とのパイプを維持して、できれば無事に進級・卒業させてやる。
そのために、言葉は悪いですが——マウントをとる——ことが必要なんですねえ。
「いやあ、お母ちゃんやら弟妹とも仲良ぅなったで(^^;)」
生徒と、その保護者との人間関係や一定の信頼関係が無ければ、その後の指導が入らず、下手をすれば「うちの担任はダメだ」と思われ、高い確率で学級崩壊してしまいます。
当時は、やつの詳しい事情も知らずに「大変だったなあ」ぐらいの言葉で済ませていましたが、いやはや、壮絶な仕事ぶりのようです。
「すまん、今日の忘年会、途中で抜けるわ」
そう言って、仲間内の忘年会を中座して、お開き直前に戻ってきたことがあります。
むろん武者の事です。
年末でもあり、他の仲間もいましたので、その時は聞きませんでしたが、メモというか備忘録を読むと、例の停学くんのことでした。
停学くんは、そのころほとんど学校には来なくなっていたのですが、ある日『今から行くわ』と電話がありました。
職員室の作業テーブルに着くと、停学くんは、こぶしを握り締めて俯いてしまいます。
「どないしたんや……言わなら分からへんやろ」
水を向けると、嗚咽しながら言いました。
「妹が自殺した……」
「え?」
武者は、立ち上がると、作業机をグルっと回って後ろからハグしてやりました。
隣のデスクで作業をしていた教務助手の女性の手が一瞬、停まってしまいました。
武者は、家庭訪問を繰り返していて、その妹のことも知っていました。不登校で、たまにバイトに行きますが、ほとんど家に籠って寝ているかテレビゲームをしているだけの少女だったそうです。
ある日、停学くんが家に帰ると妹は自死していました。
まだ体が暖かく駆け付けた救急隊員に「まだ間に合うやないか!」と言って縋りましたが、その場で死亡が確認され、入れ替わりに警察がやってきたそうです。
その妹のお通夜と忘年会が重なって、武者は中座したんですね。
仲間の一人が「大変やったねえ……」と労いますと「アハハ、アリバイアリバイ」とアリババの呪文のように笑って、温くなった酎ハイをあおりました。
そうなんですねえ、アリバイという呪文を呟いて、首の皮一枚のところで『仕事』と割り切っていないと、この仕事は持ちません。
簡単に書きましたが、奴の残したのは備忘録、普通に言えばメモか落書きの類です。捨てずに残していたのは、いつかまとめて書き直そうと、たぶん思っていたんでしょう。
「ゲ、この紙屑から順番に探したわけぇ……」
驚くというより、呆れ顔の孫娘でした。
☆彡 主な登場人物
・わたし 大橋むつお
・栞 わたしの孫娘
・武者走 腐れ縁の友人(35回より故人)
待ての勇者と急ぎの姫騎士
092 : ハイデベルク・10・向こうの塔にも人影が
シャイロック!?
花火を打ち上げながら南門から入ってきたのは……シャイロックだ!
俺が気づくと向こうも花火の筒を持ったままの手を振る。カフェレストラン『げんこつ山』の開店をやけくそで祝っていた新旧の住民たちも、前に倍する勢いで手を振り旗を振る。振るものの無い者はシャツやチュニックを脱いで振りまわし、いっしょになって歓喜している。
「シャイロック、どうして!?」
訊ねる俺も声が弾んでしまう(^^;)。
「フ……タイミングのいいやつだ」
ヒルデは不足そうだが、分かってる、こいつデフォルトはツンデレ……
「だれがツンデレだ!」
「ウフフ、スグル様、声に出ていますよ(^^;)」
「聞こえてんなら言えよぉ(>▢<)」
アハハハ ワハハハ エヘヘヘ
陽気にテンションが上がる中、ヴェニスの商人は馬を飛び降りて俺の手を取ってブンブン振る。
「避難してきた人たちが、みなさんの活躍を伝えてくれましてな。いささかの苦難も年寄りには良い刺激、いや、一人で来るつもりだったのですが、シュプルーデ川の者たちも『スグルさまたちの助けになるなら!』と付いてきてしまいました」
荷車や荷馬車が続いて、総数は100人、いや、それ以上いるかもしれない。
「シュプルーデの方は足りているのですか?」
エマが訊ねると、シャイロックは子供のように手を広げて「いやあ、シュプルーデが隣のウンターヴェークスを追い抜くのも時間の問題ですよ。街の面積はともかく、人数も倍ほどになり、売り上げでは、もう肩を並べていますよ」と満面の笑顔。
声が大きいうえに、恵比須と大黒を掛け合わせたような笑顔に、街も人も心が弾み『げんこつ山』開店祝いは文字通りハイデベルク再出発のお祭りになった!
シュプルーデの一行が加わってバージョンアップしたお祭り騒ぎは夜になっても続く。
まだ壁が半分しかできていないげんこつ山だったが、みんなで有り合わせの椅子やテーブルをかき集める。いつの間にか小さなステージも出来上がり、ステージの前には壊れた桶の縁を並べて即席のオケピットも作られて、破壊されたことがかえって融通を利かせて盛り上がった!
三度目の乾杯の後、俺は、一人でアリユール(城壁通路)に上がった。
アリユールを半周歩いて酔いがさめたら戻るつもりだ。もっとも一周できるほど城壁は無事ではない。それに、祭りのシメには居ないとな。
塔にぶち当たって登ってみると先客がいた。
「「またか」」
お互いに声が出てしまう。
先客は、宴会が苦手な戦乙女だ。
「気が合うな」
「というよりは、それほど、このハイデベルクは破壊しつくされている。落ち着ける場所はいくらもない」
「そうだな。しかし、シャイロックが来てくれた。どうやら腰を落ち着けて街を再建するつもりのようだ」
「ああ、成功すれば、川辺の温泉町など目じゃないだろうからな」
「勢いを取り戻せば、ここはズィッヒャーブルグをも凌ぐようになるだろう」
「ここが新たな始まりの街になるんだな……」
「ああ、この異世界も昭和の日本ほどに安定し繁栄するかもしれん」
「フフ、昭和を生きてきたようなことを言うんだな」
「まあな……」
言われて気づいた、昭和を懐かしむのは先輩の口癖だった。
「ロキの姿が見えない……気づいていたか?」
「あ、ああ、世を忍んでいたから戻ったんじゃないか、元々荒れ野の神さまなんだし。いや、ミョルニルのハンマーの威力はすごかったな。あれは、ヒルデのとは別物なのか?」
「複数あるとトールは言っていたが、わたしも見るのは初めてだった。武器には相性があるが、ことミョルニルのハンマーに関してはロキの方が上手のようだ」
「そうだな、わたしも認識を改めなくては……」
「どうかしたか?」
「あそこ……」
ヒルデが指さしたのは西に取り残された城壁の塔。わずかにアリユールが残って小学校の近くで気を付けしていたお巡りさん人形を思い出した。
「人が居る……」
まだまだ宴はたけなわ、誰だろうかと目を細めると、その人影が振り向いた。
「「あ」」
それは、赤ん坊のククを抱っこしたロキの奥さんだった。
☆彡 主な登場人物
・鈴木 秀(すずきすぐる) 三十路のフリーター
・ブリュンヒルデ ブァルキリーの戦乙女
・エマ バンシーのメイド
・女神(甲と乙) 異世界転生の境に立つ正体不明の女神たち
・ハンス・バウマン ズィッヒャーブルグのギルドマスター
・フンメル 西の墓地に葬られている一万年前の勇者
・カルマ フンメルとパーティーを組んでいたエルフの魔法使い
・トルクビルト(工藤甚一) ズィッヒャーブルグの幻影魔法士(娘:ビアンカ、カリーナ)
・シャイロック ヴェニスの商人
・ロキ 荒れ野の神(ヒルデの義理の叔父) シギュン(妻)
・親指姫 げんこつ山のゴーレムに取り込まれていた
・秀を取り巻く人々 先輩 アキ(園田亜妃) 田中
・他の冒険者たち オンケル シュベスタ―
・魔物たち 謎かけ魔物 リーツセル(Rätsel) ガイストターレン シュプルーデ川の魔物 樹叢の魔物 セイレーン(半鳥半人) ギギとクク(元セイレーンの姉妹) げんこつ山のゴーレム 巨大唇の化け物 グズルーン(魔王に魂を売ったジークフリートの王妃)
くノ一その一今のうち 閑話休題編
107『沼津 香貫山(かぬきやま)公園』 そのいち
箱根山を西に下りると三島を掠めて沼津に入る。
沼津から富士市に向かうために海沿いの道を行く。陽のあるうちに到着しようと思うんだけど、とりあえずはお昼ご飯。
いつものようにコンビニでお弁当を買う。景色のいいところで食べたいので忍者スマホで調べてみると『香貫山(かぬきやま)公園』というのがヒット。標高200メートルほどの香貫山は、忍者にすれば山というよりも丘。ヒョイヒョイと登って…………足が止まった!
「ああ!」「ここやったんや!」
百花と二人で驚く!
登り詰めたところは広場になっていて、広場の正面に見覚えのある五重塔が目に飛び込んできたんだ!
それは、SNSで有名な『日本を象徴する、おあつらえ向きのロケーション』だった!
初めて見た時はAIかなんかの合成かフェイクだと思ったもんだ。
真ん中に富士山、左下に桜、そして右には緑青(ろくしょう)の緑と丹塗りの柱が美しい五重塔。アメリカの教科書に『日本』という項目があったとしたら、その扉絵になっていそうな景色だ。
「ちょっと、義経くんも出てきて見いや!」
箱根でくたびれた義経くんは、箱根の関所からこっち鞄に潜ったままだ。
それでも、百花には逆らえなくて、わたしの横で実体化。そして、動かなくなった。
「え?」「ちょ、どないしたん?」
「塔を残して滅んでしまったんだね……」
「「え?」」
「平泉には中尊寺とか毛越寺(もうつじ)とか、規模は違うけどこんな感じだった。僕が死んだあと兄貴が攻め滅ぼして、その寺々も無事ではなかったと聞いている……鞍馬のお寺はどうなんだろう……まだ子供だったとはいえ、義経を匿ったんだ、無事ではないような気がする……ここは、なんというお寺なの?」
「えと……」「どうだろうね……」
詳しくないけど、これはお寺じゃないと思う。塔はきれいだけど、なんというか観光のために作ったオブジェ? うん、他にはお寺らしい建物も、跡も残ってないし、インスタグラム的にバエ過ぎだし。
「ちょっと見てくる」
百花が塔の前まで駆けていき、すこしキョロキョロして案内板を見つける。
「なるほどぉ……慰霊平和塔なんだぁ」
「ほんとうだ……」
それは、大東亜戦争で戦死したり空襲で亡くなった沼津の人たちを祀った慰霊の塔だった。中には3000を超えるお位牌が安置してあって、塔の真ん中では仏さまがお位牌を護って立っている。
「そうかぁ……それで、沼津の街でいちばん見晴らしのええとこに建てたんやねえ」
三人で手を合わせた後、塔の横、インスタ映えで有名なアングルで沼津の街を見下ろす。
「あいにく……」「富士山は見えへんねえ」「そうだねえ……」
富士山までは40キロも無いんだろうけど、あいにく雲か霞か日本一の姿は拝めない。
とりあえず、下界の見えるベンチでお昼を食べる。食べたカラはコンビニで回収してくれるというのでちゃちゃっと片して、未練たらしくもういちどさっきのインスタ場所。
あら?
今度は先客がいた。ワカメちゃんとタラちゃんと言ったらピッタリの姉弟風。
やっぱり富士山は見えなくて、タラちゃんが寂しそう。
すると、ワカメちゃんが景色を撫でるように腕を回して……え?
スイッチを切り替えたようにクッキリと富士山の姿が現れた。
みんな並んで、今は世界中で有名になったインスタ映えの風景を堪能する。
ウフフ( ´艸`)
可愛く横顔が笑ったかと思うと、ワカメちゃんはタラちゃんの手を引いて行ってしまった。
「……あれは人じゃなかったね」
山道を下りながら義経くん。
「「ええ!?」」
「サルタヒコが言ってたじゃないか——これから先、妖やら魔物やら——って」
「ええ、せやけど」「富士山見せてくれたし」
「僕の勘なんだけどね、あそこから見える富士山は……なんというか、越前岳とかの山にさえぎられて、ほんの先っぽしか見えないはずさ」
「ええ」「そうなの!?」
「あのあたりは生きてた頃に何度も通ってるからね」
「「そんなあ」」
泣きそうな顔で忍者スマホを取り出す。
ググってみると、SNSで有名な『日本を象徴する、おあつらえ向きのロケーション』は、富士吉田市の新倉山浅間公園の景色だった。
そして、さっき見た絶景は、その新倉山浅間公園の景色だった!
どう評価していいか分からない化かされようだった(;^ω^)。
☆彡 主な登場人物
風間 その(そのっち) 世襲名・そのいち
風間 その子 風間そのの祖母(下忍)
百地三太夫 百地芸能事務所社長(上忍) 社員=力持ち・嫁持ち・金持ち
鈴木 まあや アイドル女優 豊臣家の末裔鈴木家の姫
中村 百花 薩摩の山潜衆の忍者
義経 藤沢の首洗い井戸で出くわした。
猿田毘古神 箱根から東を担当
忍冬堂 百地と関係の深い古本屋 おやじとおばちゃん
徳川社長 徳川物産社長 等々力百人同心頭の末裔
服部課長代理 服部半三(中忍) 脚本家・三村紘一
十五代目猿飛佐助 もう一つの豊臣家末裔、木下家に仕える忍者
多田さん 照明技師で猿飛佐助の手下
杵間さん 帝国キネマ撮影所所長
えいちゃん 長瀬映子 帝国キネマでの付き人兼助手
豊臣秀長 豊国神社に祀られている秀吉の弟
まりあ戦記・043
『三か所のカメラ 二機のドローン』
イラ立ちの原因は予感だ。
ウズメはパルスという固有兵器を内蔵している。パルスの出力は臨機応変に変えられる。
肌に密着するコネクトスーツはまりあの筋電や脳波をリアルタイムで拾って、ウズメのアクティビティーを制御している。
だからこそ、まりあはウズメを意のままに動かせる。
リアルで喧嘩したとする。相手のパンチを屈んで躱しながら、お返しのフックを炸裂させるのは、ほとんど連続した反射運動だ。躱すとフックを別々にやっていたら、その隙に相手にぶちのめされてしまう。
パルス攻撃も同様で、呼吸するような自然さの中で発揮される。
しかし、まりあは、その自然さを封じられているのだ。
カルデラの周辺に配置された携帯兵器をリリースすることを義務付けられている。いちいち拾って装着し、攻撃姿勢をとらなければ使えないので、タイムロスが大きいだけではなく、戦いのテンポを崩されて、はなはだ精神衛生に良くない。
「今度のヨミは成熟体ではない、二度ほど装備を替えれば仕留められる」
司令は、そう言って出現したばかりのヨミを映すモニターを指さした。
確かに、ヨミの体はあちこちいびつでバランスが取れていない。装甲も均一ではなく、一部はムーブメントが透けて見えるほどに薄い。
――アサルトライフル装着!――
ズドン
指令が届くと同時にカルデラ南端のポッドからライフルが射出された。
ライフルが高度二百メートルに達し、上昇速度を失う寸前にキャッチし、セーフティーを解除すると同時に初弾を装填する。
反動をつけて高度をとろうとすると指令が入る。
――もう一つリリースする、二丁拳銃でやってくれ――
チ!
舌打ちはしたが、分かってる。
地上のポッド周辺に三か所カメラの反応がある。ドローンも二機待機していて映像を撮っている。
ライフルを製造している四菱工業がPR映像を撮っているのだ。
たぶん司令の横にはディレクターが居て「二丁拳銃でいきましょう!」とか言い出したんだろう。
「こんなもの、生成AIにやらせりゃいいのに!」
『足下で大勢の人間がリアルタイムで見ている、フェイクを流すわけにはいかん』
「じゃ、サービスしてあげる!」
セイ!
ウルトラマンのように僅かの屈伸で背筋を伸ばすと、その勢いでウズメは跳躍! 二丁のライフルを放り上げ、新体操のバトントワリングのように旋回! 直後、前転でキャッチして決めポーズ!
周囲のカメラが撮りやすいように、それぞれのカメラに向かって三度決めてやった。
地上でカメラマンが親指を立てるのが分かった。
まりあも親指を立てて応えたが、立てた親指でカメラマンをダニのように潰してやりたい衝動に駆られるまりあであった!
☆彡 主な登場人物
・舵 晋三 永遠の16歳 法名・釋善実
・舵 まりあ 晋三の妹 高校2年 ウズメのパイロット
・舵司令 特務旅団司令 晋三とまりあの父
・高安みなみ 特務旅団大尉
・中原光子少尉 みなみ大尉の副官
・金剛武特務少佐 ベースのコンピューターの保守を任務とする技術士官
・テレジア(元マリア)ガイノイド戦士(031から)まりあのガード(VR10201改)
・徳川曹長 みなみの世話係
・まりあの友達 釈迦堂観音(お堂さん) 矢治公男と喜田伸晃 鈴木さん 佐藤さん
・学校の先生 瀬戸内美晴(担任)
・時子 舵司令がたまに入れ替わる義体
まりあ戦記・042
『大尉とまりあのイラ立ち』
疑似ペーパーチケットは、ゲート横のマシンにスマホをかざすと記録され、列で待っている家族や恋人の所に戻ってゲートを潜ると、自動改札に似たディスペンサーから疑似チケットが吐き出される。
これだと、ほんの数分列に並んで入場を待つという体験ができる。
たいていの客は、それで入場する。
金剛少佐は完全アナログで、チケットを買うところから並んで、アナログチケット専用のゲートを使う。
おかげで待ち時間は十五分ほどと、疑似ペーパーチケット組の五倍ほどの時間がかかる。
『だって、おかしいだろ。入場してからチケットを受け取るなんてさ。親とか恋人が列に並んで買ってきたチケットを手に取って『ああ、これから入場するんだ!』というワクワクを感じて入るのが仕来たりだ。な、これから楽しむんだって気になってきたろ?』
少佐の言うことは分かったが、I lobe You! のネオンサインが背中で点滅するスタジャンを着せられているみなみ大尉は面白くなかった……。
ウズメの発進を一時間後に控え、数日前のサンオリデートのことを思い出しては腹立たしいみなみ大尉。デートの最後は『海が見える丘公園』のメモリアル塔だった。塔と言っても高さは10メートルほどで螺旋の階段が付いた簡素な鉄塔。
鉄塔には螺旋に沿って五線譜のような鉄棒が三段に巡らされている。鉄棒には何百個も南京錠がかけられている。愛を誓った恋人たちが記念に掛けていく令和のころからの伝説の鉄塔だ。そこに少佐は鍵をかけた。
カチャン
『ちょ、なにするんですか!?』
『よく見てみろよ』
『『TAKESHI ♡ MINAMI』って、ありえないんですけど!』
『だから、よく見ろって』
言われて手に取ると、鍵の底に1000の数字がある。
『印字してあるように見えるけど、カウンターだ』
『カウンター?』
『ああ、0になるまでに鍵を入れて回さなければ、自動的に外れる仕かけになってる』
『え?』
『キャンセルしたければ何もしなくていい。もし、ほんとうに嫁さんになってもいいと思ったら、ここにきて鍵を回してくれ……』
『え、あ、ちょ……』
大尉は言葉が継げずに、そのまま二人でベースに戻った。
――システムオールグリーン、インターフェースクリアー、リリースインジェクション完了――
ヨミの変異体が数週間ぶりに出現。バージョンアップしたCICからのオペレーションは快適でさえあったが、先日サンオリで並んだ時のようなイライラがある。
コントロールチーフの自分がこんなことではいけないと思う大尉であったが――おや?――と思った。
まりあのコクピットコンソールも、まりあのイラ立ちを示すゲージが上がっているではないか。
あのあと、金剛少佐は約束通りまりあを担当してくれて、脱走も問題行動も無かった。さすがは少佐と思った大尉だったのだが……。
☆彡 主な登場人物
・舵 晋三 永遠の16歳 法名・釋善実
・舵 まりあ 晋三の妹 高校2年 ウズメのパイロット
・舵司令 特務旅団司令 晋三とまりあの父
・高安みなみ 特務旅団大尉
・中原光子少尉 みなみ大尉の副官
・金剛武特務少佐 ベースのコンピューターの保守を任務とする技術士官
・テレジア(元マリア)ガイノイド戦士(031から)まりあのガード(VR10201改)
・徳川曹長 みなみの世話係
・まりあの友達 釈迦堂観音(お堂さん) 矢治公男と喜田伸晃 鈴木さん 佐藤さん
・学校の先生 瀬戸内美晴(担任)
・時子 舵司令がたまに入れ替わる義体