ラーメンの麺の硬さ「バリカタ」の「ばり~」の語源 | オメガのブログ

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目次

  1. はじめに
  2. 「ちかっぱ(い)」とは?
  3. 「ばり~」とは?
  4. 実は「ちかっぱ(い)」も「ばり~」も博多弁ではない。
  5. 「ちかっぱ」と「ばり~」の副作用
  6. おわりに

はじめに

博多弁には、”程度の度合いを表す言葉”として「えらい」などの言葉があります。それとは別に多くの人々が博多弁だと思っている「ちかっぱ」や「ばり」という言葉がありますが、実は勘違いで博多弁ではありませんし、勿論福岡弁でもありません。

 

※現在の福岡市や周辺地域には博多弁が広く浸透していますが、福岡弁とは一部の旧家で受け継がれ使われている福岡藩士も使用した方言の事です。福岡弁については過去の記事をご覧下さい。

「ちかっぱ(い)」とは?

「ちかっぱ」は、元々は「力一杯(ちからいっぱい)」という言葉で、それを略して「ちかっぱい」や「ちかっぱ」と短縮した言葉です。意味は「力一杯」の文字通り”一生懸命”や”滅茶苦茶”のニュアンスで相手に必死な思いを伝える言葉として使っていました。

'80年代当時は、「ちかっぱ言いよー。」(滅茶苦茶言うなよ!)、「ちかっぱやけん!」(滅茶苦茶だから!)、などと主に不満を口にする時にも使っていたかと思います。

元々は北九州地区の方言だとか、北九州とは違う博多弁だとか言われる事もある様ですが、どの様にして誕生し広まったのかまでは分かりませんが、当時世代の親世代では使っておらず、'70~'80年代になり使われ出した比較的新しい言葉である事は間違いないでしょう。

「ばり~」とは?

「ばり~」は、「バリバリ」の略で、'80年代当時初めの頃は、凄く恰好が良い事を「バリバリカッコイイ!」、短縮して「バリカッコイイ!」、更に短縮して「バリカッケー!」と言っていましたが、後に「ばり」を「カッコイイ」以外の言葉の頭に接続して”とても”や”凄く”の意味で使う様になりました。

ちなみに「現役バリバリ」などの様に使う「バリバリ」は、資料によれば江戸時代には使われていた様です。

実は「ちかっぱ(い)」も「ばり~」も博多弁ではない。

「ちかっぱ」も「ばり~」も'80年代の福岡で小中学生の男子児童の間で流行した言葉であり、博多弁ではありません。当時を知らない世代や移住者の多くが勘違いをしています。また、元々は男子が使っていた言葉なので粗暴で品が無く、女子は勿論のこと大人の女性が口にする様な言葉ではありません。某CMでばりよかよ。家の中ちかっぱ暖かいっちゃん。などと壇蜜さんが言っていますが、今は男女平等のご時世とはいえ、男言葉(そもそも子供の言葉)を恥じらいも無しに使う女性は如何なものでしょうか?時代が時代ならば育ちを疑います。

当時は、まだ幼い小中学生の頃に使っていた言葉なので、成長して高校生になっても使っている男子はまだ”ばり”やら言いよるとや?(まだ”ばり”なんて言ってるの?)などと子供っぽさが抜けてない事を同級生に揶揄されたこともあり、流行当時に使った世代では気が付くと廃れており高校生になる頃には完全に死語と化した言葉なのですが、その後も下の世代や他の地域に伝播し続けたのでしょうね。また後に、長浜ラーメンの麺の硬さの選択肢に「バリカタ」が誕生した影響が多大にあるのでしょう。流行当時を知らない特に若い世代に博多弁の言葉だと勘違いされ使い続けられています。

余談ですが、福岡の方言では「柔く」は「やおう」、「硬く」は「かとう」と言います。つまり、麺の硬さの「ヤワ」も「カタ」も「バリカタ」と同様に方言ではありません。最近では、「ずんだれ」(凄く柔らかい麺)を提供するお店もある様ですが、「ずんだれ」は服装がだらしがない事(例えば、腰パンツなど)を意味する九州で使われている方言です。

「ちかっぱ」と「ばり~」の副作用

「ちかっぱ」と「ばり~」という言葉は、どんな言葉にも接続できて誰でも簡単に強調の意味で使う事ができます。例えば、朝早起きしたならば、「ばり早起きした」等と使えます。然しながら、博多弁には早起きを「ごすとおき」と言う方言があります。他にも、美味しいラーメンを食べれば「ばりうま!」、博多弁で「こら旨か」や「あごたんの落つるごと旨か」等と言います。真夏の暑い日には、博多弁で「うだんしかごと暑か」等の言い回しがありますが、「ばり暑っ!」と短い一言に置き換えられます。

まだ方言を上手く使いこなせない子供には大変便利な言葉なのですが、何にでも接続して使える簡単便利さ故に、大の大人が使うには伝統的な方言の言葉や言い回しを単純な言葉に置き換え語彙力の低下を招く副作用がある"諸刃の剣"なのです。

貴方の周りに何でも「ちかっぱ」や「ばり~」と口癖の様に言っている人はいませんか?くれぐれも使い過ぎは禁物です。

おわりに

この様にして、博多弁ではない言葉が流行当時を知らない世代に博多弁だと勘違いされ浸透していますが、同様に関西地方では「めっちゃ」('80年代の漫画「Dr.スランプ」の主人公・アラレちゃんの言葉「めちゃんこ」が語源)が、北海道では「なまら」('80年代に地元ラジオ番組から生まれた流行語)が方言だと勘違いされて浸透したそうです。他県にもそういった類の言葉がもっとあるのかも知れませんね。

今では全国的に”心温まる”意味で使われている「ほっこり」という言葉は、元々は京都の方言で”ぐったり”(例「葬式が終わりほっこりした」)することを表す方言だそうです。

最後に念を押して繰り返しますが、「ちかっぱ」も「ばり~」も博多弁ではありません。私たち世代が子供の頃に流行り使っていた言葉で流行当時に使った世代では疾うの昔に死語で大人になった今では使う事がありません。

 

ちなみに、歴とした博多弁では、魚のアイゴの事を「バリ」と呼びます。また、「ばりでる」(はみ出るの意味)という言葉もあります。'80年代に「ばり~」が男子児童の間で流行る以前は「ぶり~」(ぶりぶり)と言う言葉もありましたが、古くからの地元民でも知っている人は非常に少ないでしょうね。

 

余談ですが、福岡弁について、「福岡弁 ~あなたの知らない福岡弁~」にネット上でどこよりも詳しく記載しています(話者なので当然ですが)。こちらも是非ともご覧下さいませ。

屋台・ラーメン

写真提供:福岡市

ラーメンの麺の硬さは、やっぱり普通が一番ですが、好みでヤワかカタがお勧めです。小麦粉は完全に火を通さないと消化不良を起こしお腹に悪いのでご注意下さいませ。