好きなものが少数派であるという意識を抱いていると、
同じものを好きだという人にめぐり合うとそれだけで気が合うように感じられる。
ある冬の朝、駅から高校へダッシュしていたとき。
風来坊の家はその途中にある。
悠長にバイクのエンジンを掛けていた。
「おいっ、何やってんだよ、遅刻しちゃうぞ!」
そう声を掛けて走り去ろうとすると、
「おぅ、先行けよ」
なんという余裕の発言。
逆に足を止めてしまった。
だって、彼の家から徒歩でも3分の距離。
それなのに、バイク通学しようとすること自体、意味不明。
当然禁止されているから
校門からさらに隠すための場所まで乗り付けてから歩いて行かないといけない。
にもかかわらず冬だからなかなか掛からないエンジンを
ずっと掛け続けている。
「一緒に行こうぜ」
ふしぎな気持ちになったおいらはその場に立ち竦んだ。
それでもエンジンは掛からない。
とうとうバイク通学はあきらめ、
しかし、バイクを手で押しながら一緒に歩いて登校。
ほんのちょっとの距離だったが、
それでも彼と会話をしたのは貴重なことだった。
風来坊はどこか魅せられるところはあったんだけど、
高校時代はあまり会話を交わすこともなく終わった。