今年のG7は、西のウクライナ、東の南シナ海と2つの地理的に異なる事象でありながら、「大国の周辺に対する威圧的行為に抗議する」という共通の利害を軸に7ヶ国がまとまって声明を発表した。他方、全く別の話ではあるが、つい最近話題となったイルカの追い込み漁では、日本がWAZAメンバー各国の反対に取り囲まれて苦渋の選択を迫られた。多数が参加する会議は、2人だけの相対交渉とは違って展開を読むことが非常に難しい。自分とは異なる利害を持つ他の参加者を如何に共通の利害を持つ「仲間」に変えていくか、また、同様に行動する対抗相手を如何に押さえこんでいくか、まさに合意形成プロセスの戦場である。相手が1人ではなく3人も5人も、あるいはもっといるわけだから、そうした他メンバーを制御することは至難の技である。複雑な多次元方程式でも解が求められない不可解な世界のように見える。だが、それは本当に不可解なのだろうか。合意形成にいたる様々な行動を因数分解すると、実は単純な作用・技術の組み合わせや交差により形づくられるものなのではないだろうか。それを当たり前のことのように使いこなせる人と、そういう行動に不慣れな人との間に巧拙の差が生まれるのではないか。そして当たり前のことを紐解けば、そこに論理的な行動手法、組織認識法といったマネージメントスキルとして科学的に体系立てることが出来るのではないか。これが私の問題意識である。