昨夜、7時過ぎだったと思う。いつも通る道路の両側に立派な車が100メートル以上にわたって並んで駐車していた。それなのにとおりには人影が見えない。動きがないだけにむしろ静かでさえある。何だろうとおもいながらはっと気づいた。黒塗りの車が止まっているタイヤ屋さんの奥に田子の浦部屋がある。横綱稀勢の里3連敗。報道では8連敗を強調して、負け続けながらも横綱の仕事を全うしようとする稀勢の里の「引退」を期待しているかのごとくである。稀勢の里連敗、引退はニュースとしての価値があるだろうからこのような報道になるのはやむを得まい。案の定部屋の前のせまいとおりは「騒然」としたらしいが、地元の人はその「騒然」の輪には加わっていない。報道陣でごった返しているだけだったらしい。今朝も部屋前では報道陣が壁越しになかをのぞき込んでいる。
昨年11月に事実上の引退勧告を受けた稀勢の里にとって、土俵に臨む稀勢の里の心中は計り知れないものだろう。期待されながらもなかなか横綱になれなかった稀勢の里が横綱になり、日本人横綱としての責任と矜持、それだからこそ感じる周囲の期待のプレッシャー。それは稀勢の里1人に負わされた過酷で計り知れぬ重圧であるだろう。多くを語らず黙々と土俵に向かう稀勢の里は立派である。土俵に上がり続けてもよし、引退してもよし。いまは、静かに稀勢の里の決断を待てばよい。どのような決断であっても、それが稀勢の里自身のものであるなら、周囲の 評価など気にしなくていいではないか。
