海外では、脱酸素社会に向けて、建築物や土木構造物の「炭素排出量」をISO規格に準拠して算定することが拡大しています。
ここでの「炭素排出量」は、温室効果ガス排出量を二酸化炭素排出量に換算したカーボンフットプリント(CFP)を指しています。
建築物や土木構造物は個々の設計に基づいて多種多様な資機材を使用するため、従来の紙ベースでCFPを算定することは極めて困難であると言えます。

そこで、登場するのが、ISO規格に準拠したBIMです。

今回は、​​​​​​BIMによる炭素排出量(CFP)の算定手順を紹介したいと思います。


BIM(Building Information Modeling)を活用したCFP算定は、建物のライフサイクル全体における温室効果ガス排出量を詳細かつ正確に評価する強力なツールとして注目されています。従来の概算的な方法とは異なり、BIMは建物の3Dモデルに基づいて材料、施工方法、エネルギー消費量などを詳細に分析し、より精度の高いCFP排出量を算出することができます。


BIMによるCFP算定の具体的な方法は、以下の5つのステップに概ね分けられます。


1. BIMモデルの作成
まず、ISO規格に準拠して、BIMモデルを作成します。このモデルには、建物の形状、構造、材料、設備、内装など、あらゆる要素が詳細に表現されます。精度の高いCFP排出量算定のためには、可能な限り詳細な情報をモデルに盛り込むことが重要です。(少なくとも竣工モデルではLOI500が必須)


2. ライフサイクルスコープの定義
次に、ISO規格に準拠して、算定対象となるライフサイクルスコープを定義します。一般的には、建物の製造・搬送、建設、運用、解体までの全段階を対象とします。


3. 原単位CFPの適用
各材料、施工方法、設備、エネルギー源に対して、ライフサイクル全体のCFPをBIMモデルの属性データに適用します。これらの原単位CFPは、ISO規格に準拠したLCAデータベースや個々の製品のEPDなどの資料から取得することができます。


4. 排出量の計算
BIMモデルに適用した原単位CFPを基に、建物のライフサイクル全体のCFPを計算します。この計算には、専用のソフトウェアツールを用いることが一般的です。


5. 結果の分析・可視化
算出したCFPを、建物の部位やライフサイクル段階ごとに分析し、可視化します。これにより、CFPの多い部位や段階を特定し、効果的な削減対策を検討することができます。


BIMによるCFP算定の利点を改めて纏めると、以下の通りです。
1 詳細かつ正確な算定: 建物の3Dモデルに基づいて詳細な分析を行うため、従来の概算的な方法よりも高い精度で排出量を算出することができます。
2 ライフサイクル全体を考慮: 建物の製造から解体までの全段階を対象とするため、ライフサイクル全体の環境負荷を評価することができます。
3 設計段階での対策: 設計段階からCFPを算定することで、設計変更による排出量削減効果を検証することができます。
4 コスト削減: CFPを可視化することで、省エネや省資源対策によるコスト削減効果を検討することができます。


BIMによるCFPは、建設業界のカーボン・ニュートラリティの実現に向けた最も重要なツールとして、日本でも早期に普及していくことが期待されます。