開発が続けられていた、カーボンニュートラルに関するISO規格が、COP28期間中の2023年11月30日にリリースされました。
この規格は、組織や製品(建築物やイベント等の商品やサービス)において、定量化、削減、オフセットを通じてカーボンニュートラリティを達成・実証するための原則、要求事項、ガイダンスを提供した規格です。
規格の名称は、「ISO 14068: 2023(Climate change management-Transition to net zero-) Part1 : Carbon neutrality」です。
さて、GHGに関しては、ISO14064-1、−2、-3、14065、14067 など、GHG の定量化、報告、妥当性確認、 検証に関する既存のファミリー規格がありますが、このISO14068-1は、これらの国際規格の上位に構築されています。
ISO14068-1の中に、各規格間の関係性を示す以下の図があります。
ISO14068-1より
組織の排出量やカーボンフットプリント(製品のライフサイクルによる排出量)についてISO規格を用いてバウンダリー内における排出量を算定、プロジェクト排出量をISO規格を用いてクレジット量を算定、両者の関係性から「カーボンニュートラリティ」を判断することになっています。
プロジェクト排出量の算定には、ISO19650に準拠したBIMを活用することが欠かせなくなることは言うまでもありません。
さて、この規格の用語の定義について、「カーボンニュートラリティ」に注目すべきでしょう。
GHGの排出量と除去量が等しく、大気中のGHGを増加させない状態のことを「カーボンニュートラリティ」と定義しています。
具体的には、「GHG排出量」から「GHG除去量」を差し引いた結果が「カーボンフットプリント」であり、これをカーボンクレジットを購入して相殺(オフセット)して「正味の排出量(Net Results)」をゼロにした状態を「カーボンニュートラリティ」と定義しています。
ここで注意が必要なこととして、一般的にカーボンクレジットには、たとえば石炭火力発電を自然エネルギー発電で置き換えるような「GHG排出量の削減により生成されたカーボンクレジット」と、植林面積の増加のような「GHGの吸収・除去で生成されたカーボンクレジット」があります。
ISO14068-1:2023では、組織(企業など)で長期的に削減努力をしても2050年段階でどうしても残る「残余GHG排出量」のオフセットには、「置き換え」だけのクレジットは認めず、後者の利用しか認めていません。大気中のCO2を除去することが重要だからです。
また、吸収・除去系クレジットでも、パリ協定第6条2項及び4項に準拠したクレジットのような「高品質」なものでなければ認められません。
これから、14068-1に準拠した高品質なクレジットの創生、利活用に関するビジネスが建設分野でも活発になっていくことと期待しています。