フランスでBIMについて進められている国家研究プロジェクトMINnDの正式名称は、Modélisation des INformations INteropérables pour les INfrastructures Durablesです。

日本語では、「持続可能なインフラストラクチャのための相互運用可能な情報モデリング」となります。
「持続可能なインフラストラクチャ」とは、環境への負荷が少なく、長期的に使用できるインフラストラクチャを指し、BIMを活用することで、持続可能なインフラストラクチャの構築に必要な情報を、各段階で共有・活用しやすくすることを目的にしています。
 

MINnDは、2014年から第1期が始まり、第2期が2019年から2023年まで継続され、さらに、2024年1月1日からMINnD2050として新たにカーボンニュートラルを2050年に実現することを明示的な目的として打ち出して、さらに5年間進められることになっています。
正式名称から、MINnDが2014年から既に持続可能なインフラを目指していたことが解りますが、MINnD2050ではより鮮明にカーボンニュートラル実現を目的として、BIMをベースに、AI, デジタルツウィンなどの新技術を活用して行く統合的なシステムを開発しようとしています。


MINnD2050は、ヨーロッパの脱酸素政策とISOなどの国際基準に基づき、持続可能な社会の実現に向け、インフラ、建設、地域管理のデジタルトランスフォーメーションを促進する触媒的なツールとして位置づけられています。


具体的には、以下の取り組みを行います。
1.相互運用性とオープンソース性を確保しながら、、BIM、GIS、データベース、GMAO(コンピューター支援管理)、文書管理、接続型オブジェクトなどの連携を促進する。
2.人工知能を活用した信頼できるアプリケーションを開発し、利用に役立てる。
 

MINnD2050は、協会として組織され、そのメンバーによって管理され、共通の利益のために投資を共有するコミュニティであり、協働プロジェクト(シンクタンクとドタンク)です。

4つの課題と方向性
 

MINnDは、以下のような4つの課題と方向性を定めて研究開発を進めることとしています。
 

データガバナンス
1.データガバナンスは、データの品質、セキュリティ、プライバシーを維持することを目的として、データの収集、使用、共有、保管、廃棄を管理するプロセスを指す。
2.資産データを活用して大きな転換を促進し、変化をサポートするための共通のガバナンスルールを定義する。これには、データのアクセスと使用に関するポリシー、データの品質とセキュリティに関するガイドライン、データの共有と再利用に関するプロセスを含む。


気候変動と循環型経済
1.ライフサイクル全体での環境影響を抑制および削減するための、共有データとサービスのコンテンツルールを定義する。
2.これには、エネルギー使用、廃棄物排出、環境汚染に関するデータを含む。


業務利用
1.関係者の環境に係る業務システムにデジタル化を展開する。
2.デジタル化は、企業の効率性と生産性を向上させるための強力なツールであり、データ分析、機械学習、人工知能の活用を含む。


協働
1.データ主導の社会を実現するためには、研究開発とイノベーションプロジェクトとの連携が不可欠であり、研究開発とイノベーションプロジェクト間のシナジーとパートナーシップを創出するとともに、資金調達を模索して、メンバーから提案された活動を推進する。


ワーキンググループとプロジェクト(想定されているもの)


MINnDは、上記の課題と方向性について研究開発を進めるために、全体の進行管理を行う運営委員会の下に、以下のような5つのワーキンググループを設置して、25のプロジェクトを進行管理をすることにしています。


1.ガバナンスと価値創出

  1.1 カーボントラジェクトリー(CO2e排出量削減の軌跡)
  1.2 トランジションのための資金調達
  1.3 データの管理/権利
  1.4 利用管理
  1.5 価値創出
  1.6 変革の推進
  1.7 オープンソース
2.気候変動と循環型経済
  2.1 脱炭素化の管理
  2.2 ライフサイクル分析
  2.3 気候変動への適応
  2.4 エコ設計/建設
  2.5 エコ運用/保守
3.業務利用
  3.1 トレーニング
  3.2 設計
  3.3 建設
  3.4 運用/保守/資産管理
4.デジタルトランスフォーメーション(DX)
  4.1 ホスティング、アーカイブ、サイバーセキュリティ
  4.2 データ標準
  4.3 デジタル継続性
  4.4 デジタルツイン
  4.5 人工知能
5.協働
  5.1 サービスプラットフォーム
  5.2 ソフトウェアの実装/認定
  5.3 デモ
  5.4 オープンソース・コンポーネント
 

資金調達
  1.会員費と自治体からの助成金   組織の種類と規模に応じて、年間0〜18,000ユーロ 
  2.助成金             フランス政府、欧州連合、その他の機関からの助成金
  3.プロジェクト          会員からの追加的な資金/助成金、

                    プロジェクトごとに調達する外部資金(France 2030、欧州クレジットなど)
   4.研究開発税額控除(民間企業の場合、 基準に応じて)


MINnD2050の成果としてのデータ標準などをISO規格にすることを前提としており、国際会計基準(IFRS)のサステナビリティ情報開示基準の動向と併せて、MINnDの動向から目を離せません。