(プレジデントオンライン)
PRESIDENT 2011年4月4日号 掲載
■私の人生を変えた一冊
一冊の本が自分の人生を変えた――誰もが、そのような経験を持っているかどうかは、僕にはわかりません。
だからもしかしたら、僕がハッキリと「35歳の頃、そういう本に出会えた」と言うことができるのは、かなり幸せなことなのかもしれません。
山口県の小さな洋装店を父親から譲り受け、四苦八苦していた私が、日本を代表する経営者の末席に加えていただいて、こうして「経営者のあるべき姿とは?」などという取材まで依頼されるようになったのも、まさにその一冊の本、ハロルド?ジェニーンというアメリカの経営者が書いた『プロフェッショナルマネジャー』のおかげだからです。
ジェニーン氏はニューヨーク証券取引所のボーイからスタートし、ITTという通信会社を、20世紀を代表するようなコングロマリット企業に成長させた人物。
58四半期連続増益を果たしたという伝説の人で、その彼が語る“経営の真実”は、それまで「1日1冊読破」を課して濫読していた他のどんな経営書をも凌駕する、圧倒的な迫真力を持っていました。
“ブレない上司像”とは何か、真のリーダーシップとはどういったものか、それらの多くの答えを、僕は、この『プロフェッショナルマネジャー』から教わったと言っても、過言でありません。
このたび、この本の速習版である『プロフェッショナルマネジャー?ノート』の解説をしましたので、その中の一部から例をとって、私が考える理想の経営者像をお話ししていこうと思います。
■常に目標を掲げることのできる経営者か?
ジェニーン氏は、経営とは「本は始めから終わりへと読むが、経営はそのまったく逆。終わりから始めて、そこに到達するためにできる限りのことをすることだ」と述べています。
実はジェニーン氏のこの言葉を知る前は、経営というのは現実の延長線にあることを1つ1つ形にしていくこと、だと思っていました。つまり、努力さえしていればその歩いた先に、なにかしらの“結果”が待っていると僕は考えていたのです。
しかし、それでは「できるかできないか」がよくわからないうちに、「自分たちにはできない」と規定しがちになる。ちょっとでも障壁があると、すぐに方向転換したり、目標の修正をしてしまうわけです。経営におけるブレとはこういうメカニズムで生まれてくる。
ジェニーン氏が言うように、最終的な目標を明示して、その実現のための方法を行動単位で考え、組織全体で実行していくことこそ“本当の経営”です。「そんなことは当たり前だ」という人は多いでしょう。しかし、それが骨身に染みている経営者はそう多くないというのが現実なのです。
ジェニーン氏の言葉に、自分の経営の甘さを思い知らされた僕は、山口県の宇部市という田舎で、「世界一のカジュアルチェーンになる」と社員たちに宣言し、その実現のために、まず「100店舗の達成と株式公開」というゴールを設定し、さらに「日本一のカジュアルチェーンになる」という目標を立てたのです。
とりあえず、日本一という中間目標は達成しました。まだ道の途上ですが、目標から逆算して行動することで、日々の仕事をブレさせずに最短距離を進んだ結果でしょう。そして、いまも世界一の企業になるために、何を実行するべきか――このことを考えることを僕は心から楽しんでいます。
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