生活保護制度 ④

 

前回の続き

 

 

以下、生活保護制度をより深く理解いただくために、知っておいていただきたい点をピックアップして解説していくことにする。

 

. 許されるなら一人で申請には行かない
【前記、11にて記述した支援団体所属員(職員でなくて構わない)の同行を要請するのが最善策】

. 申請書の書式/様式は法律、施行令、施行規則、省令、通達等で決められていないので、申請する意思表示が記されて/為されていれば問題ない
【極端な例示だが、一文「生活保護を申請する。」だけで要件は整う 口頭申請も有効だが“言った、言わない(聞いていない)”の水掛け論になる危険性を有するので文書化する方が賢明】

. 申請書用紙が交付されない場合を想定して、事前に申請書を持参の上、用紙交付が為されない場合は事前用意した申請書 正・控 を置いて帰る(要写真撮影)かファックス送信して送信記録を取っておく
【担当部署ではなくても市区町村役所/役場の代表ファックス番号で構わない】

. 預貯金はできる限り引き出し、現金化しておくことをお勧めする
【申請後の資産調査で不要な詮索を避けるため】

. 如何なる申請であっても、拒絶することができないことをしっかりと理解しておくこと
【虚偽でない限り罰則はない また、生活保護行政の執行官吏に申請拒否権限は与えられていない】

. 他法他施策優先を口実に申請書の受領拒否をされたとしても、申請書提出して何ら処罰されることはない
【虚偽申請/申告は触法行為とされる可能性あり】

. 対応に当たった地方公共団体/地方自治体職員の氏名と所属(大抵生活保護課、生活支援課、生活援護課、福祉課等の所属)を必ず記録か撮影しておくこと

. 申請時に地方公共団体/地方自治体職員に断った上で会話を録音しておくと、後日不利な処分に対して抗弁、審査請求することが容易になる
【本年3月横浜市役所 神奈川区役所で職員の虚偽説明で申請を一度断念した女性のケースが現にある
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. 申請が認められなかった場合、上級庁に当たる都道府県知事に対して審査請求する権利を有する
【その上級庁は厚生労働大臣】

10. 弁護士と雖も一般的に生活保護に関する知識は希薄な場合が多いので不明点や質問事項は前記11記載の支援団体等に相談されることが望ましい
【一部県では生活保護申請に弁護士が無料で同行する弁護士会独自の制度が提供されている】

11. 生活保護受給の事実は戸籍や住民票等公機関管理個人情報/記録に記載されることは一切ない
【これは自己破産や任意債務整理も同様で、破産公告が官報に記載される以外は一切ない】

12. 選挙権/被選挙権等公民権が制限、停止されることはない
【これは自己破産や任意債務整理も同様】

13. 生活保護受給中であれば法テラス利用(相談と依頼/委任契約時費用等)、各都道府県弁護士会法律相談、職業訓練校における講座受講と通学交通費若しくは寮費/宿泊費(支給にあたって要件確認は必要)、テレビ視聴(NHK受信料支払免除)等が無償で利用できる

14. 国民健康保険の利用は原則できなくなる
【医療扶助により国民健康保険適用医療は原則全額扶助され受診者負担はなく、通院と処方薬受領に要した必要最小限度の交通費は全額支弁される(医療移送費の一時扶助申請が必要)
 協会けんぽ(政府管掌健康保険)、所属組織等健康保険加入者は引き続き保険証が利用可能で、自己負担1割、3割負担分に対して医療扶助が適用されるので実質自己負担はない】

15. 国民年金保険料支払いが免除される
【厚生年金保険料は給与所得額(収入認定額)から控除/除外される】

16. 保育に係る費用負担が不要となる
【生活保護受給者となることにより費用負担が求められなくなる】

17. 幼稚園、学校通学(義務教育のみ)に要する費用は原則全て扶助される

【生活保護受給者となることにより費用負担が求められなくなる また、教育扶助により小学校、中学校の教材費、学習支援費等の支給がある】

18. 同居家族等が死亡した場合、本人に葬儀費用を支弁する資力がない時は生活保護申請によって葬儀に必要な費用が扶助される 【葬祭扶助】

 

 

水際作戦【目に見えない(証拠が残らない)申請受領拒否作戦】の代表的な事例

「まだ若くて働けるので生活保護は使えません」

「住所がない人/持ち家がある人は生活保護を使えません」

「借金がある人は生活保護を使えません」

(上記3件は認定NPO法人自立生活サポートセンター・もやい より引用転載)

高齢ではない女性申請者に対して多いのが「女性ならではの働き方があるでしょ」と、性風俗店/業界での就労を暗に求める

「就労できるでしょ」と決めつけ申請書受領を拒絶する

「就労努力が足りない」と断定して対応する

「生活保護を受給するなんてみっともない」「恥ずかしくないか」「子供がいじめの対象になる」と申請者の事情を勘案しない発言をする

相談に当たる地方公共団体/地方自治体職員の高圧的対応(地方公共団体/地方自治体職員は市町村民に雇用されている立場の官吏、公僕なので申請者の方が立場上上席であることを忘れずに だからと言って高圧的態度、敬意を伴わない態度は関係を悪くするだけです)

「申請には所定の書式/様式と記載要件があるので、指定外の申請書では認められない」と虚偽説明をする
【余談だが、これはよく警察においても使われる手法】

 

改めてお伝えするが、生活保護申請において窓口対応官吏(役所職員)は如何なる理由であろうと一切拒否/拒絶することができない国民の権利であることを決して忘れないことだ。

12https://nordot.app/741983249023467520

 

 

生活保護申請書作成Webアプリケーション「フミダン」

必要事項を入力することで生活保護申請書が作成できる。また、今のところ東京都内限定だが作成した申請書を最寄り福祉事務所へファックス送信もできるようなので積極的に活用することをお勧めする。

https://fumidan.org/

 

ここまで現役福祉職職員への質疑応答による確認作業を行い情報の正確性を担保してきた。

現在、EXCELにて生活保護申請/受給可否判断用のアプリケーションを開発している。

受給判定に必要な要件を入力、選択することで申請可否、申請可であれば申請書(正・控)の印刷、受給可判定の場合の給付額総額が計算され毎月の受給額が表示され印刷することが可能となるものだ。

いま現在、「神戸公務員ボランティア」という団体が生活保護制度の基準を基に計算するアプリを公開しているが、大変初心者にはわかりにくく容易に使用するにはかなりハードルが高いと感じている。

神戸公務員ボランティアが公開しているアプリケーション 【○生活保護基準計算ツール(2020年10月改定分)Excelシートのダウンロードができるので、ご興味ある方は参考にされたし。

 

 

次回に続く