ただ、過ぎに過ぐるもの

心友の1人に

古文担当の同僚がいました

過去形なのは

10数年前、若くして、病気のために

この世を去ったからです

 

働く女性として、妻として、母として

疾風怒濤の時代を一緒に戦った

かけがえのない友でした

 

隣り合わせの教室で授業した時

古典文学を朗々と読む彼女の美声と

英文を音読する私の大きな声が交錯し

廊下を通った他の同僚から

『日英文化を同時に味わえたよ』

と、冷やかされたこともありました

 

中古文学が専門の彼女は

とりわけ、漢詩文や和歌に詳しく

研究室や職員室でよく勉強していました

 

 

亡き友の短歌を熱く語りたる

幻の声ときおり聞こゆ

 

 

今も、生きていたら

一緒に旅をしたり、文学論を戦わしたり

時間を共有したいことが

諸々あるのに、と

残念な気持ちでいっぱいです

 

 

大納言公任 百人一首55番

 

o l i v e