日本では下のような和訳本が出ていますが、Kindle版がなかったので原作をKindleで買って読みました。
が、なんと今日見たら日本語版も今月Kindleで発売となっていました!(価格は洋書のほうが安いです)
アメリカ最強の特殊戦闘部隊が「国家の敵」を倒すまで NO EASY DAY/講談社
![](https://img-proxy.blog-video.jp/images?url=http%3A%2F%2Fecx.images-amazon.com%2Fimages%2FI%2F51D4gy%252BqbuL._SL160_.jpg)
¥価格不明
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なんでしょ。年明けからの連続のテロ事件や今話題になってる映画「アメリカン・スナイパー」(これも原作本あり)の宣伝なんかに触れたせいか米海軍特殊部隊の話を読んでみたくなったんです。
本書「No Easy Day」はウサマ・ビン・ラディン襲撃作戦(2011年)の実行部隊元隊員が偽名を使ってその作戦の様子を語ったノンフィクションです。
作戦チームのリーダーであったこと、実際にビン・ラディンを銃撃した二番目の人物であったことなど、この世で真実を語れる立場にある数少ない証言者の一人が書いたという点で読む価値があると思いました。決して面白味のある話ではないけれど。
作者の簡単な生い立ちやSEALS→GreenTeam→DEVGRU(対テロ特殊部隊)へと選考されていく過程などの他、ビン・ラディン作戦以前に就いた任務についても二、三語られています。メインの襲撃作戦についてはもちろん一番ページを割いてかなり詳細に書かれています。
が、やはり身元が割れないようにするためか、基本隊員名は偽名を使用、また、ぼかした表現がところどころ意図的に使われているようで、読んだ後なんとなくぼんやりとしかつかめない部分もあります。私の英語力不足もあるでしょうが。
個人的には魅力的な人物についてはもっと掘り下げてほしかったし、ドラマチックな描写もあったらもっと楽しめたかもしれない。でも、読み終わってみると何とも言えずこの訥々とした描写にこそ意味があるような気がしてきて、作者の執筆の意図がより明確につかめたように思います。
本書出版のきっかけはホワイト・ハウスをも含めたこの襲撃内容の報道には偽り・誤りがあって、この歴史的な襲撃について真実を書き残したいと思ったことにあるとのこと。
公的なサービスに就くものが国家に反旗を翻すようなこの行動について、元海軍の仲間を含め眉をひそめる人も少なからずいるだろうし、だいたいいかなるものでも暴露本を出すというだけで十分軽蔑されやすい傾向にあることでしょう。ですが、本を読んでみると、作者がそういうことを全く意に介さず書いている姿勢が伺われます。
そもそも読む人が読めば作者が誰なのかすぐ分かってしまうしね(実際実名は割れている)。
彼をここまで決意させたのは何なのだろうとずっと考えていたのだけど、真実を記録しておくこと以外に実はほんの僅かな「褒められたい」という気持ちがあったのではないかと思っています。
それと同時に「世界の敵を己の命も顧みず抹殺しに挑み、成功して帰ってきたのは俺たちなんだぞ」とたとえ偽名でも胸を張って皆に知らしめたかったんだと思う。あくまで個のためでなくチームのために。
これを実際にやることは立場上絶対に不可能なことなんだけど、たとえば宇宙飛行士のように任務を完遂した隊員が笑顔で全世界に向けて華々しく手を振れたらどれ程「報われるだろう」と夢見ているんじゃないか、そんな気持ちが屈強な男たちの心の中にもあるんじゃないかと、そう思わされるところがあるんです。
これは富や名声を得るということとは全く別物です。
彼らがどれほど私生活を、否、全人生を犠牲にして日々訓練に励んでいるか、襲撃任務にひとたび就けばどれほどの危険に身をさらすか、これらをこの本で読むことによって知ることができます。日本人である私には想像を絶します。それらの犠牲に見合った報酬は果たしてお金だけでしょうか、勲章だけでしょうか、大統領からのねぎらいの言葉だけでしょうか――?
特殊部隊員が誇りを持ってその職を全うし、見返りのためにやっている訳ではないことは大前提として、それでも尚人間である彼らに何か人間らしい「報い」を捧げられたらどれだけいいだろう、というのが今私が感じていることです。
作者がちょうどビン・ラディン殺害のニュースの直前に数日家を空けていたことに気づいた近所の人が彼に言葉を掛けるというエピソードが印象的です。
アメリカの中東政策や対テロ戦略が是か非かについては棚に上げての感想です。他にもたくさん思うところがあったけど、書ききれないので以下気になったところなどメモしときます。ネタバレ要素も含まれるので未読の方はご注意願います。
※ 洋書Kindle版はこちら↓
No Easy Day: The Firsthand Account of the Missi.../NAL
![](https://img-proxy.blog-video.jp/images?url=http%3A%2F%2Fecx.images-amazon.com%2Fimages%2FI%2F417lYFKMMPL._SL160_.jpg)
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■ SEALSのチーム間の信頼関係は絶大。文字通り、背中を預けられる仲間。だから戦闘中は誰がどういう動きをするか分かっているし、体が自然にそう動いてしまうので何の指示もいらない。静寂の中で任務遂行。
■ SEALSにいれば大概みな顔見知り。その中で「できる」奴の名が上がる。関心事は出世というよりはどれ程「優れているか」ということらしい。
■ 隊員は長髪にヒゲと結構むさい男が多い。
■ 訓練→任務→短期休暇のくり返し。招集がかかれば真夜中だろうがヘリで砂漠に連れられサバイバル訓練開始。
■ 実際の任務は「Get ready and wait」。身体が覚えこむまでシミュレーション訓練をし準備万端でも、お上の承認が下りなければ実行できず、大抵の場合待たされる時間が長い。
■ 結婚し家庭を持つ隊員もいるが任務優先が徹底しているので離婚する人も多い。仕事か家庭かなら仕事を取るような男しかいない。意識が高い。
■ ビン・ラディンの居場所を突き止める10年にも及ぶ諜報活動はCIAの女性情報分析官が担った模様。(映画「ゼロ・ダーク・サーティ」のモデルか?)アルカイダ囚人からの些細な情報と、サテライトやドローン(小型無人飛行物体)の映像分析でビン・ラディン邸を特定。情報官は100%の自信を持っていたが、実際突入するまで本当に本人なのかは分からなかった。
■ デッド・オア・アライブとのことだったが、誰が本気で生きて捕獲できると思っていたのだろう。茶番にしか思えない。
■ 戦闘員と政治家との温度差、上層部への不満は極力控えめに書かれているが相当あるように思われる。
■ 隊員間のいたずらやジョークがすさまじい。映画化されたら誰が誰の役をやるかがもっぱらの話題になるって言うんだから・・・かなり意識してるのね。
■ 海賊にとらわれた船長の救出作戦が面白かった。海へのパラシュート落下。通信要員も一人抱えての落下だったが、その隊員は「聞いてなかった」&「初めての落下」だったため顔面蒼白だった。
■ 一般に知らされる襲撃任務はごく僅かで失敗も含め数々の危険な任務は日々行われている。その過程で命を落とした隊員も少なくない。巻末に彼らの実名が列挙されている。死んでから実名を公表される(公表できる)ことの皮肉を感じる。
読了日 2015年2月15日
が、なんと今日見たら日本語版も今月Kindleで発売となっていました!(価格は洋書のほうが安いです)
アメリカ最強の特殊戦闘部隊が「国家の敵」を倒すまで NO EASY DAY/講談社
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作戦チームのリーダーであったこと、実際にビン・ラディンを銃撃した二番目の人物であったことなど、この世で真実を語れる立場にある数少ない証言者の一人が書いたという点で読む価値があると思いました。決して面白味のある話ではないけれど。
作者の簡単な生い立ちやSEALS→GreenTeam→DEVGRU(対テロ特殊部隊)へと選考されていく過程などの他、ビン・ラディン作戦以前に就いた任務についても二、三語られています。メインの襲撃作戦についてはもちろん一番ページを割いてかなり詳細に書かれています。
が、やはり身元が割れないようにするためか、基本隊員名は偽名を使用、また、ぼかした表現がところどころ意図的に使われているようで、読んだ後なんとなくぼんやりとしかつかめない部分もあります。私の英語力不足もあるでしょうが。
個人的には魅力的な人物についてはもっと掘り下げてほしかったし、ドラマチックな描写もあったらもっと楽しめたかもしれない。でも、読み終わってみると何とも言えずこの訥々とした描写にこそ意味があるような気がしてきて、作者の執筆の意図がより明確につかめたように思います。
本書出版のきっかけはホワイト・ハウスをも含めたこの襲撃内容の報道には偽り・誤りがあって、この歴史的な襲撃について真実を書き残したいと思ったことにあるとのこと。
公的なサービスに就くものが国家に反旗を翻すようなこの行動について、元海軍の仲間を含め眉をひそめる人も少なからずいるだろうし、だいたいいかなるものでも暴露本を出すというだけで十分軽蔑されやすい傾向にあることでしょう。ですが、本を読んでみると、作者がそういうことを全く意に介さず書いている姿勢が伺われます。
そもそも読む人が読めば作者が誰なのかすぐ分かってしまうしね(実際実名は割れている)。
彼をここまで決意させたのは何なのだろうとずっと考えていたのだけど、真実を記録しておくこと以外に実はほんの僅かな「褒められたい」という気持ちがあったのではないかと思っています。
それと同時に「世界の敵を己の命も顧みず抹殺しに挑み、成功して帰ってきたのは俺たちなんだぞ」とたとえ偽名でも胸を張って皆に知らしめたかったんだと思う。あくまで個のためでなくチームのために。
これを実際にやることは立場上絶対に不可能なことなんだけど、たとえば宇宙飛行士のように任務を完遂した隊員が笑顔で全世界に向けて華々しく手を振れたらどれ程「報われるだろう」と夢見ているんじゃないか、そんな気持ちが屈強な男たちの心の中にもあるんじゃないかと、そう思わされるところがあるんです。
これは富や名声を得るということとは全く別物です。
彼らがどれほど私生活を、否、全人生を犠牲にして日々訓練に励んでいるか、襲撃任務にひとたび就けばどれほどの危険に身をさらすか、これらをこの本で読むことによって知ることができます。日本人である私には想像を絶します。それらの犠牲に見合った報酬は果たしてお金だけでしょうか、勲章だけでしょうか、大統領からのねぎらいの言葉だけでしょうか――?
特殊部隊員が誇りを持ってその職を全うし、見返りのためにやっている訳ではないことは大前提として、それでも尚人間である彼らに何か人間らしい「報い」を捧げられたらどれだけいいだろう、というのが今私が感じていることです。
作者がちょうどビン・ラディン殺害のニュースの直前に数日家を空けていたことに気づいた近所の人が彼に言葉を掛けるというエピソードが印象的です。
アメリカの中東政策や対テロ戦略が是か非かについては棚に上げての感想です。他にもたくさん思うところがあったけど、書ききれないので以下気になったところなどメモしときます。ネタバレ要素も含まれるので未読の方はご注意願います。
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■ SEALSにいれば大概みな顔見知り。その中で「できる」奴の名が上がる。関心事は出世というよりはどれ程「優れているか」ということらしい。
■ 隊員は長髪にヒゲと結構むさい男が多い。
■ 訓練→任務→短期休暇のくり返し。招集がかかれば真夜中だろうがヘリで砂漠に連れられサバイバル訓練開始。
■ 実際の任務は「Get ready and wait」。身体が覚えこむまでシミュレーション訓練をし準備万端でも、お上の承認が下りなければ実行できず、大抵の場合待たされる時間が長い。
■ 結婚し家庭を持つ隊員もいるが任務優先が徹底しているので離婚する人も多い。仕事か家庭かなら仕事を取るような男しかいない。意識が高い。
■ ビン・ラディンの居場所を突き止める10年にも及ぶ諜報活動はCIAの女性情報分析官が担った模様。(映画「ゼロ・ダーク・サーティ」のモデルか?)アルカイダ囚人からの些細な情報と、サテライトやドローン(小型無人飛行物体)の映像分析でビン・ラディン邸を特定。情報官は100%の自信を持っていたが、実際突入するまで本当に本人なのかは分からなかった。
■ デッド・オア・アライブとのことだったが、誰が本気で生きて捕獲できると思っていたのだろう。茶番にしか思えない。
■ 戦闘員と政治家との温度差、上層部への不満は極力控えめに書かれているが相当あるように思われる。
■ 隊員間のいたずらやジョークがすさまじい。映画化されたら誰が誰の役をやるかがもっぱらの話題になるって言うんだから・・・かなり意識してるのね。
■ 海賊にとらわれた船長の救出作戦が面白かった。海へのパラシュート落下。通信要員も一人抱えての落下だったが、その隊員は「聞いてなかった」&「初めての落下」だったため顔面蒼白だった。
■ 一般に知らされる襲撃任務はごく僅かで失敗も含め数々の危険な任務は日々行われている。その過程で命を落とした隊員も少なくない。巻末に彼らの実名が列挙されている。死んでから実名を公表される(公表できる)ことの皮肉を感じる。
読了日 2015年2月15日