パリ出版社の襲撃事件や日本人人質事件など、昨今のイスラム過激派のテロ行為を目の当たりにし、「イスラム国」とは何ぞや、一体今中東はどうなっているのだ、という疑問が湧きました。

素人でも分かるいい解説本はないかと探していたところ見つけたのがこちら、今日本で最も人気の?ジャーナリスト池上彰さんと恐るべきインテリジェンス佐藤優さんの対談集「新・戦争論」。

タイトルは物騒ですが、中身はいたってまともな世界情勢解説です。

中東の国々がそれぞれ何派でどんな対立関係か(しかし大きくはイスラム教徒として時に手を組むからややこしい)、イスラム国の目指すものは何か、とても一般人には総括的に調べられない内容がざっと読めます。

ウクライナとロシアの問題もヨーロッパ情勢を含めて、宗教・民族の色分けをしながら論じてくれています。自分の無知が恐ろしくなる内容。

白人警官の黒人射殺事件で再びアメリカの人種問題がクローズアップされましたが、アメリカが人口逆転を恐れている、つまり白人の数が黒人やヒスパニック系に逆転されると困るといった問題もあるようでなかなか興味深かったです。

「遠隔地ナショナリズム」なんて言葉ははじめて聞きましたが、たとえば慰安婦問題、言われてみれば変なことにアメリカで慰安婦の像が建てられている。これは在米韓国人の運動ですよね。そういう遠隔地にいる人々の祖国愛がこの移民時代、今後様々な地域に様々な形で出てくるんじゃないかというのは興味深かった。

日本・中国・韓国、そして北朝鮮の話も出てきます。
中国主席が、中国には世論調査が無いから毎朝ネットで人民の声を調べているなんて話はぞっとしますね~。ホントかな。

今後の展望について、歴史は繰り返すではないけど、やはり将来を見据えるのには過去のモデルが必要なわけで全く同じことは繰り返さないけれど、発想という点では随分と歴史を遡るらしいですよ。

「過去の栄光を再び求める動き」が各国に見られると。

佐藤氏「嫌な時代を生き抜くためには嫌な時代だと認識できる耐性を身につけること。通時性においては歴史を知り、共時性においては国際情勢を知ること」。おっしゃるとおりです。

最後の方ではお二方がどのように普段情報収集しているか教えてくれています。99%は公開されている情報だけで十分なのだとか。一般人も閲覧できる公官庁の公式ウェブサイトとか新聞がいいそう。ただし、それを読んでどう解釈するかが問題なんですよね。やはり日ごろから培った膨大な歴史、文化、宗教、政治、経済、社会などの知識がなければそのニュースの「意味」を量ることはできません。


2014年年末に出版されているので内容もフレッシュ。まさに今こそ読むべき本です。電子版で読みましたが、あまりにためになる箇所が多く、ハイライトしまくりでした。でも、民族間対立の部分なんかは読んだそばから忘れていくので似たような本をいくつか読まないと私なんかはだめかなと思いました・・・。



読了日 2015年1月22日