除湿機女がゆく~田辺聖子「言い寄る、私的生活、苺をつぶしながら(乃里子三部作)感想~ | oliveのドラマ帳~風に吹かれて~

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朝ドラ「スカーレット」から、連続ドラマの感想を、
ひと味加えて、自分味に料理します。
ゆるりとご試食くださいませ♪

SNS時代になり、誰かとつながっていなと不安になる。
グループの枠から外れたくない。
ますます加速する承認欲求。
自称でなく正真正銘のおばちゃんと呼ばれる世代の私でもそうなんだから、若者たちの心の不安たるやと想像。

だからなのか昨今では、小説でもドラマでも、
世間のしがらみや生きづらさに寄り添う物語が多いような気がします。

寄り添うことも力になるけど、遠くから傍観しつつ憧れを抱くのも悪くないと私は思うのです。
そう、それはまるで
女子高生が憧れの先輩を見つけてときめくような気持ち。
生きる活力になるはずだーーー!

田辺聖子さん描いた「乃里子三部作」は、私にとって女子高の憧れの先輩でした。

「言い寄る」「私的生活」「苺をつぶしながら」

 

 

 

 

 


主人公、乃里子31歳から物語がスタートする。
フリーのデザイナーでおきゃんという言葉がふさわしく、
体も言動もポンポンと跳ねるポップコーンのような女性。
女の賞味期限はクリスマスケーキなんて叫ばれていた時代に31歳の年齢設定。
女性の自立をあざとくなく描く田辺さんは凄いな~

男性にも仕事にも積極的で野心的な乃里子なのに本命には言い寄れない女心をわかる!わかる!と見せておいて、
言い寄ってくる興味のある男とは躊躇なく寝ちゃうのだ。
結局は、失恋しちゃう乃里子なのだけど、言い寄ってきた相手の一人で金持ちで豪快でセクシーな男、剛と、二作目「私的生活」で結婚。

お金持ちな剛との暮らしはゴージャスそのものだが結婚ともなると自分たちだけじゃない。
傲慢な家族とも我儘な夫ともつきあわなくてはいけない。
上手くやっているように見えたが剛との生活に窮屈さを覚えはじめる。

そうだ、幸福という言葉を忘れてた。
私は、剛と食欲に充たされた生活を、「贅沢」と表現するけど、「幸福」と呼んだことはないのだった。(本文より)


この行に昔の私に後ろから不意打ちに殴られたようだった。
何回も何回も繰り返して読んでいる私。
求めたのは「幸福」だっただけなのに、別れの決意を贅沢だと揶揄されたあの日。

夫婦生活の中で、家族の暮らしの中で、社会の暮らし中で、
人によって大なり小なりではあるが、相手の機嫌を伺いながら暮らさない生活はない。
乃里子はそれを、
「玉が出尽くした」と表現するのよ。
我慢できない、これ以上は耐えられないでもなく「玉が出尽くした」
この言葉に私は救われた。
そう、玉が出尽くするから離婚するのよ。

結果、離婚となり三作目「苺をつぶしながら」では、ひとり暮らしを満喫する乃里子。
ひとり暮らしは自由ばかりではない。
自由と背中合わせにあるのが孤独だ。
その孤独についても描かれている。
友人の死。独身女性が独りで死んでいく。
その時、乃里子は・・・

本書が書かれたのは40年近く前で、まだ男女雇用機会均等法が成立する前後の時期で、夫である剛は男尊女子の考え。
それが当たり前の時代だった中での女性の自立に自尊心の確保や、夫に家族に同調するのがフツーだとする考えを撥ね退ける強さ。

乃里子は、世間でいう「いい子」ではない。
そこがいい!!そこが好き。
いいな~と思ったらすぐに男と寝るし、安心感よりスリルを好むし本能のままに生きる人だし・・・
反発を覚える人も少なくないと思われるに下品じゃないのよ。
関西弁で書かれた田辺節。
関西弁のえげつさと柔らかさが絶妙だから下品じゃないのかなと思えた。


とにかく、時代を先読みしていた田辺聖子さんの凄さを本書で確認してほしいし、最大の魅力は乃里子の人柄。
除湿機のような女性で、世間のしがらみとか生きづらさとか、
ジメっとしそうな話をカラッと爽快に除湿させる乃里子が好き。

女性が割を食っていると思ったらこの本を読めばいいよ。
人間のプロの乃里子が救ってくれる。
こうなりたいではなく、こう楽しむが人間のプロの一歩かも♪

 

 

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