母の退院の日、父の車に叔父も乗ってもらい、荷物を積んで帰宅する。私は部屋を予め暖めておき、待機。ただボンヤリと待つのは時間がもったいない。どうせなら労働しよう! 部屋をクリーナーで掃除し、年末に向けて窓ガラスを拭く。1階は自宅で一泊したときに拭き終えていたので、2階の窓を拭いていると、母が帰ってきた。インターフォンを鳴らしても中々私が出てこないからイライラしている。
「窓ガラスを拭いていた」というと、「そんなんどうでも良いのに。家の中に中々入られなくて、このしんどいのに」と母は鬼のような形相をしている。
酸素の機械の使い方を説明してくれというので、前もって業者から母の入院中聞いていた通り作動しようとしても動かない。
「おかしい」「おかしい」とみんなでワーワー言うと、さらに母のイライラは加速し、「こんな大の大人が3人(叔父、父、私)もいて、何聞いていたんよ!」と怒鳴った。少ししてコンセントが外れていることに気づく。掃除したときにクリーナーのコンセントをここから取り、酸素の機械に繋げておくのを忘れたのだ。
「何やってんのよ。もう! 私がどれだけ苦しくてしんどいかわからないのか!」と母が怒るので、もういい加減にせーよ!と今までずっと我慢していたが、ついに私もキレてしまった。
「そんなのわかるわけないやろう!! 甘えんのもいい加減にせー!!!」と思い切り母の顔を睨み付ける。
心根が優しくて辛抱強い叔父は私たちのやりとりをハラハラしながら眺めていた。
自宅で仕事から帰ってきた夫に一連の出来事を話した。
「往復3時間以上かけて実家と家を行き来して、掃除や料理や洗濯、買い物とか家事労働だけでも疲れるのに、母のイライラや父への暴言でダブルにしんどいわ」
言いながらふとあることに気づき、夫の手の甲をつねった。
「イタタタタ、何すんの!」と夫は叫ぶ。
「私にはあなたのその(つねられた)痛みはわからない。相手の痛みや苦しみに思いを馳せることは大事だけど、本人にしかその痛みや苦しみはわからないんや」
愚痴を聞かされるだけでなく、痛い思いもさせ、夫には申し訳ないことをした。例を挙げるんだったら自分の手の甲を思い切りつねればよかったな。