いよいよ明日が本番。もうここまで来たら開き直るしかない。

といっても緊張するし、不安に変わりはない。

「後半ほとんど勉強できひんかった。こんなんで受験して大丈夫かな」と不安になり夫に漏らすと、「今まで積み重ねてきたことが力になってるんとちゃうかな」と夫は淡々と言う。

ほんとだ。今まで26年間、中断した時期もあったけど、続いてきたじゃないか。そのことに自信を持ったらいい。

 

去年は試験当日のためにわざわざスーツを新調したが、今回は買わなかった。皆から「その服素敵」と褒められたワンピースを勝負服に選ぶ。自分の体に合う洋服が一番だ。

昨年度の口述試験で不合格がわかってから今年の口述試験まで10ヶ月もあるんだ、長いなーと思っていたが、医療事故に遭って病院通いを余儀なくさせられたり、母の入院もあり、あっという間に試験前日になってしまった。

 

しかし、なぜ自分はこんなに通訳案内士試験や通訳案内士の仕事にこだわるのだろう? 専門学校通学や勉強のために多額のお金(といっても交通費等を含め100万円以内におさまっているが)やエネルギー、時間を投入したからか。意地のためか。

それもある。

だが、原点は大学1年の頃、京都御苑のお土産屋さんで春か秋の一般公開時に1日アルバイトをした時のある出来事がきっかけじゃないかなって思う。

現在(201711月)では京都御所は通年一般公開になったが、当時は春と秋の5日間だけだった。混雑が予想されると、一日だけ学生アルバイトの募集があり、応募した。訪問者は日本人だけでなく、外国人もいた。東南アジア系の人たちが多かった。当時は英語を話す機会もなく四苦八苦しながら拙い英語で接客した。

すると服装から判断して多分インドネシアから来た中年カップルの女性が突然、私に赤い綺麗なエスニック調のハンカチを差し出し、”For you.”と言って、プレゼントしてくれたのだ。お土産屋のおばちゃんに、「いただいてもよろしいでしょうか?」と尋ねると「いいんじゃない」とのことだったので、ありがたく頂戴した。

彼女はなぜ初対面の私にハンカチをプレゼントしてくれたんだろう? 拙い英語で必死になって応対する私をいじらしく思ったのだろうか。

彼女の厚意に感激し、彼女には何もお返しできなかったけど、それから道に迷ったり、電車の乗り方、切符の買い方などで困っている外国人を見かけたら声をかけている。

日本にいて安心して、楽しんでもらって、日本をもっと好きになってほしいから。