都立駄菓子菓子高校1年Z組日誌より抜粋
悲しいことに彼は生まれつきのド器用で、大抵のことはちょっぴりこコツを教えれば
そのコツをあっさりと掴み、素晴らしい結果を望まずして生み出してしまう才能の持ち主であったのだ。
加えて、動機は不純であるが、その真面目さ。
中学校の絵画部でなんとなく制作した版画は「北斎様の生まれ変わりじゃぁぁ!!!」と絶賛されてしまい、
しばらく芸術界からのスカウトから逃げるのに必死だった。
そんなこんなで大量の高校からの勧誘。
特待扱いで授業料免除、なんてものも多数あった。
正直飛びつきたい話だったが、金時にはある理由から、この町を離れる気はさらさら無かった。
そしてタイミングを計ったかのような駄菓子菓子高校の開校計画。
道理でここしばらく、工事がうるさかったわけだ、と納得した。
普通、創立初期の学校は宣伝に大いに力を注ぐものだが、何故か駄菓子菓子高校は
入試3ヶ月ほど前からPRを開始した。
その内容とは。
《なんと、授業料は全て無料!!!条件は入試をクリアすることのみ!!
施設はとても綺麗で使い放題、冷暖房施設に24時間常時使えるPCルームもあり!!
夢のような学園ライフ、君も体感しちゃおうよ!!》
かなり頭の悪そうなPR文句だが、内容は入試を控えている学生にとってはかなり
魅力的だった。
これだ。
金時は難易度ランクAAAの駄菓子菓子高校を迷うことなく受験しあっさりクリア。
小中勉強ばかり(部活もしていたが)していたことに加え、生まれついての要領のよさから
自然と人より頭の構造がよくなっていたらしい。
受験結果発表からの帰り道。駄菓子菓子高校正門から出たところで待ち構えていた勧誘教師達に
「何故うちでバスケをしない」「何故うちでサッカーをしない」「何故芸術を…」「今からでも遅くは無い!!」
とまくし立てられた。
そして金時はこういった。
「ここ、近いから」
唖然とする教師達を後目に、不思議なデジャブを感じながらぽてぽてと歩く。
そして入学式の朝。正門をくぐる。また、不思議な、デジャヴを感じる。
誰もいない体育館の裏までぽてぽて歩いてきた金時はホログラム装置を起動させる。
これは携帯用ホログラム装置、「チビホロ」だ。
「おはよーーっ金時!!!」
「はいはいおはよ。団子、入学式くらい来いよ。」
「嫌に決まってるじゃない、あの人の群れ、くだらない教師や生徒の言葉。
そして何より大量の人間の匂い!!!三次元は有機物がばかりで辟易する!!」
「・・・はいはい。ま、おかげで俺が新入生総代でスピーチしなきゃいけなくなったんだけどね・・・」
「ふふん、せいぜい頑張ってきなさいよ!!あ、そういえば」
団子は言葉を切って、金時をみつめた。
「・・・なんだよ」
「あんた!!!夢かなったじゃん!!忘れたの?幼稚園のときさ、
なんかのバスケ漫画の天才少年みたく「近いから」って理由で
数多の高校からの勧誘を断るの!!!あんたマンガに影響されやすいから
、そのクールっぷりに目茶目茶あこがれてたわよねぇ。
あんときは笑ったけどさー!!実現してよかった!!」
そういって極上の笑みを金時に向けた。
「・・・・あ、おれ、夢かなったんだ。てか、俺、夢、持ってたんだ。
ここ最近の退廃した生活で忘れてたぜ。」
そうか、勧誘を断るときに感じてたデジャヴ、朝感じたデジャヴの原因はこれか。
幼い頃何度も夢に見た、あのマンガのあのシーン、
幼い頃何度も妄想した、近いからと言う理由で選んだ高校の正門を自らくぐるシーン。
自分が全て想像した事が、現実となった。その現実の渦中にいたため、度重なる
デジャヴのような感覚を覚えていたのか。
「そうよ!!もっと喜びなさい!!あんたの夢が叶えばあたしも嬉しい!!」
「おまえ、恥ずかしいことさらっと言うなよ。それに」
「それに?」
「勿論近いからここを選んだけど、他にも理由がある。
お前が、いるから。俺が夢もってたこと、覚えていてくれて嬉しかったぜ」
「・・・・・・・あんたこそ、そういう台詞はそれこそマンガみたいに
もっと恥ずかしそうに顔から耳の端まで
真っ赤に染め上げて、言いなさいよ・・・」
そーいや俺昔、不流川カナデのファンだったじゃん。
税金の元は取ったし、おかげでかつての夢も勝ち取った。
夢、忘れてたけど。
なんか、なるべくしてなった結果のような気もするが、
こういうの結果オーライっていうんだよな、確か。
昔描いた夢の中に、俺はいるんだなぁ。
こういうの、普通のやつらは「幸せ」とか思うんだよなぁきっと。
そう思いながら、彼は一人、入学式が始まるまで
体育館の裏でホログラムの団子と、幼少の頃の
思い出について語り合った。
★解説★
金時偏、まだつづくかも!!!