動物の生存において

大きな体は身を守る上でも、またその相手を倒して捕食するにも

何かとメリットは多い。


過去の地球で動物が巨大化の方向へ進化する傾向が多いのは必然なのである。


陸の世界限定で言えば、地球史上においてもっとも体を大きく成長させたのは
恐竜のなかでも「竜脚形類」というグループだ!


カミナリ竜

あまりにも巨体がゆえに、その足音は雷鳴のごとく轟いただろうと
昔は「カミナリ竜」とも言われていた。


カミナリ竜とよばれた竜脚形類の代表的なものを紹介しよう。


ディプロドクス


ディプロドクス

分類  :恐竜・竜脚形類
生息年代:ジュラ紀後期
生息地 :北アメリカ
全長  :20~35mほど
他の竜脚形類に比べて体形は華奢で特に尾はきわめて長いのが特徴。
尾をムチのように振って、敵を寄せ付けないように護身用に使われたと見られる


ブラキオサウルス


ブラキオサウルス

分類  :恐竜・竜脚形類
生息年代:ジュラ紀後期
生息地 :北アメリカ
全長  :25mほど
前足が後足よりも長いため、肩から尾に向かって傾斜する。
そのため、頭が高い位置にあり、高い場所の植物を食べていた。


マメンチサウルス


マメンチサウルス

分類  :恐竜・竜脚形類
生息年代:ジュラ紀後期
生息地 :アジア
全長  :20~35mほど
体の半分以上を占める極端に長い首をもつ。体をあまり移動させずに、
首の動きだけで広範囲の植物を食べるための適応とみられる。


30mを超えるような動物は現在にも海洋にシロナガスクジラ が知られるが、
地球の重力をモロに受ける陸上において、これだけ体を大きくさせた動物は
他の時代でまず見ることはない。


「竜脚形類」が全時代のあらゆる巨大動物を抜きん出て、
体を大きくできたのは
その「素質」があったからなのだ。


その素質とは・・・。


鳥類がもつ「気嚢システム」である!

気嚢システムとは鳥のもつ呼吸器官のことで、
これは
息を吸って新鮮な空気を肺に送り込み、息を吐いて肺から古い空気を出す
私たちの呼吸器官とはまったく別次元といっていいほど違う構造をしている。


鳥の気嚢のしくみ

鳥の肺の前後には気嚢とよばれる袋があり、
息を吸ったときに
肺と後ろの気嚢に新鮮な空気がながれ、
息を吐くときは
肺から古い空気が送り込まれた前の気嚢がその古い空気を吐き出し、
それと同時に後ろの気嚢にたまっていた新鮮な空気が肺に送られる。


つまり、息を吐いても吸っても、
常に肺には新鮮な空気が途切れなく供給され続けるということになる。


これによって鳥は空気の薄い高空でも、羽ばたき飛行という激しい運動にも
絶えうることができ、
また気嚢という袋によって飛行に欠かせない体の軽量化に大きく貢献できているのだ。


この気嚢システムは
鳥類はもちろんのこと、肉食恐竜などが含む獣脚類、そして竜脚形類にも
この器官があったことは確認されており、
少なくとも獣脚類と竜脚形類を含む「竜盤類恐竜」にはこの気嚢があったといわれている。


竜脚形類の気嚢

竜脚形類のような巨体を維持するにはそれなりのエネルギーが必要となるが、
気嚢システムによるこの効率的な呼吸によって巨体を維持できるようになり、
この気嚢という袋によって
風船が詰まったような体になるため、その30mを越す巨体ながら体重はそこそこ軽く
十分に体を支えることができたと考えられる。


ディプロドクスの体重は10~40トンと推定されているが
下手をするとアフリカゾウ (体重6~7トン)を下回ることもありえなくもない。


またこれだけ巨体であれば、体に熱がこもり体温が上がってしまうという問題も出てくるが
気嚢でおかげで、体内にたくさんの空気が入ることによって
体の外だけでなく、体の中でも熱を発散できるなどと、
竜脚形類が巨大化できる条件はよりどりみどりだったようだ。