それは「燃える氷」と呼ばれた・・・。
海底に眠る
低温、高圧で封印されしエネルギー。
メタンハイドレート!
メタンハイドレートとは
ガスがシャーベット状に閉じ込められたものであり、
世界で推定埋蔵量は100兆立方メートル!
実に日本の天然ガス消費量の1600年分という
エネルギー資源だ!
まだそのエネルギーの実用化に至ってはいないが
石油に依存し続ける世界じゅうの人々が、
今もなお、エネルギーを求め続ける人類が、
それに代わる次世代エネルギーとして期待されている!
そして
日本周辺海域が世界有数の
メタンハイドレート埋蔵地帯なんだという!
これは
エネルギー自給率わずか4%。資源小国であり続けた日本にとって
自前の国産エネルギーをもつことの意味はあまりにも大きい!
実用化、商業化が実現できれば
日本は悲願のエネルギー資源大国となる!
しかし、その夢の資源メタンハイドレートは
世界を急変させるほどの力を秘めていた・・・。
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それは2億5000万年前。ペルム紀末期のこと
「P/T境界事変」
約2億5,000万年前の古生代ペルム紀(Permian)と
中生代三畳紀(Triassic)の境目に相当する
この時期は95%もの生物種が死滅したという
恐ろくべき時代であった!
なぜ、これほどまでの大量絶滅に引き起こしたのか・・・!
当時、世界のすべての大陸が1ヶ所に集合し
超大陸パンゲアと形成していた。
これは地球内部へと沈み込む海洋プレートが
1箇所に集中して沈み込むことを意味する。
スーパーコールドプルームという地球の核へ
大規模なマントル下降流が生じたのである!
その反動で
大規模なマントル上昇流スーパーホットプルームが発生!
その上昇流は地殻まで達し
大量のマントルが噴出する空前絶後の火山噴火を引き起こす。
この大規模な火山活動はシベリアで起こっており、
現在でも「シベリア洪水玄武岩」という世界最大規模の溶岩台地が存在し、
実に日本の面積の5倍にも及ぶという!
シベリアの玄武岩は他と比べてその規模が最大級だということがわかる
このような大規模な火山活動、怒涛の二酸化炭素が放出され
地球温暖化が進んだのは言うまでもないだろう。
しかし、それだけではなかった!
高温化が進む世界に追い討ちをかけるのごとく、
気温の上昇は深海底にある低温で封印された
メタンハイドレード層のメタンガスの融解・気化を引き起こしのだ!
メタンガスの温室効果は実に二酸化炭素の20倍ともいわれている
そして気温はますます上昇し、さらなるメタンハイドレートが溶け出す悪循環!
まさにそれは
世界熱暴走へのデススパイラル!!
メタンハイドレートの融解によって、赤道付近では気温が10℃あがり、
極地では、20℃~30℃も上昇したといわれている!
しかし、またしてもそれだけではなかった!
メタンガスの真の恐ろしさは酸素と反応し、別の物質に変ってしまうことだ
つまり、これは酸素が大量に消費されることを意味する
当時、酸素は大気の30%程度を占めるほどまで蓄積されていたが
大量のメタン放出によって10%程度までに急減してしまったのだ!
酸素が生命維持に欠かせない生物にとって
このような環境激変であらゆる種の生物が淘汰されて
いったのは言うまでもないだろう。
それ以降、長きにわたり低酸素時代が到来する。
この時代に生まれ、繁栄したのが
鳥類にある酸素供給に効率的な気嚢システムをもつ恐竜と
腹肋骨を消失させ、そこに横隔膜でき、
腹式呼吸ができるようになったキノドン類の子孫、哺乳類であった・・・。
↑哺乳類の祖先にあたる獣弓類。大量絶滅後の低酸素時代は
腹部の肋骨を退化させ腹式呼吸が可能となった獣弓類が見られるようになった。
まさに「P/T境界事変」は生物史の転換点といえよう。
そして現在・・・。
日本近海に多く存在するメタンハイドレード。
その扱いを間違えれば
それは生物絶滅を引き起こす「禁断のエネルギー」なるのかもしれない。
夢の国産エネルギーはまだまだハードルが高そうだ!
「P/T境界事変」の様子の映像。「地球大進化」より
http://www.youtube.com/watch?v=YGGRXt_xIt4