今回の記事は長いです・・・。

この記事は古世界の住人の議論用掲示板

ギャラリーしてつくりました。

白熱した議論を読んで、大変勉強になりました。

ありがとうございます!!


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1億4000万年前、ジュラ紀のヨーロッパ、

ゾルンホーフェン。

ゾルンフォーフェンの景観

当時のヨーロッパは、

浅い海に干潟(ラグーン)、湿地帯などが広がる

開けた土地が地平線まで広がる世界だった・・・。


そこにはカブトガニやカニのエビような甲殻類が

這い回り、

開けた場所なので、いつも強い風が吹き、

風吹く空には翼竜の姿が目立つ。


しかし風が止む時もある・・・。

風を待つ翼竜

潟を這い回るカブトガニなどを食べ、お腹いっぱいの

翼竜たちが空を飛び立とうとしても

風は吹かず、空を飛ぶことができない。

とりあえず、翼を広げ、風を待つことに・・・。


しかしそれは翼竜にとって危険な状態だった!


肉食恐竜子分 「アニキ!風が止みやしたぜっ!」

肉食恐竜アニキ 「よしよ~し!翼竜の間抜け姿でも拝もうやないかい!」


翼竜を襲う肉食恐竜

肉食恐竜子分 「ハハハッ!コイツら逃げることも何もできねぇでやんの」

肉食恐竜アニキ 「あたりまえだ!飛ぶことしか能がないからなっ!

       しかしあれだ。こいつらはほとんど皮とスカスカの骨だけで

       旨くねぇな。」

肉食恐竜子分 「ア、アニキ!あそこに肉づきのいいヤツいますぜっ!

       アイツも空飛びそうなヤツですけど・・・。」


始祖鳥  属名(Archaeopteryx

始祖鳥

肉食恐竜アニキ 「ああ・・・。我らと同じ地上支配者の竜族(恐竜のこと)でありながら、

       変な毛なんぞ生やし、空を飛ぼうなんて中途半端なヤツだ」

始祖鳥の父親 「しまった!ヤツラに見つかってしまった!!」

始祖鳥の息子 「見つかったって、こんな見通しのいい所だから

        普通に見つかっちゃうよ!父ちゃん!」

始祖鳥の父親 「息子よ、大丈夫だ!我われは風がなくと・・・」

肉食恐竜に襲われる始祖鳥

始祖鳥の父親 「グハッ!」

始祖鳥の息子 「父ちゃ~ん!!

       全然大丈夫じゃないじゃないか~っ!!」

始祖鳥の父親 「ワシはもうダメだっ!

       息子よ、翼を広げ走れ!!そして飛べ!!」

始祖鳥の息子 「何言ってんだよ!風もないのに飛べるわけないじゃないか

       翼竜たちを見てみろよ!」

始祖鳥の父親 「いいから、早く言われたとおりにしろっ!ウグッ!」

始祖鳥の息子 「わかったよ!」

走る始祖鳥

始祖鳥の息子 「ハッ!何だこれは

        こ、これはなのか!?」

始祖鳥の父親 「そうだ!走ることによって、風を自らつくるのだ!」

肉食恐竜アニキ 「1匹逃げやがるな!させるかっ!!」

始祖鳥の息子 「な、何だ!しだいに自分の体が軽くなってくるよ!!」

始祖鳥の父親 「そういうことだ!おまえの翼に風が確かに宿っている!!」

飛び立つ始祖鳥

始祖鳥の息子 肉食恐竜アニキ 肉食恐竜子分 「飛んだ~!!」


始祖鳥の父親 「フフフッ・・・、いいぞ息子よ

       われらの祖先である竜族の脚力を生かし

       風をつくり、そして翼にその風を宿すことのできる。

       これこそが我らの持ち味。

       そして、我らはいずれ大空を支配するだろう。

        

       新たな飛翔伝説の始まりだ・・・グフッ!」


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■鳥類の翼■


風がなければ翼は「無用の長物」・・・


始祖鳥は鳥類の祖ともいうべき動物であるが、

鳥類の翼というものは他の飛行動物には見られない

機能性に富んだ翼だ。じつに風をよく知っている。

そして現在の大空を支配しているわけだ。


そんな翼の機能性について紹介。



■次列風切~それは揚力。■

空を飛ぶにはまず、揚力(下から押し上げられる力)が必要だ。

その揚力を生み出すのが次列風切だ!!

次列風切


次列風切羽は湾曲して重なり合い

翼上面が盛り上がる

「円弧翼」を形成している。

揚力を生み出すにはこの円弧翼が有効なのだ!

その理由はこれだ!


揚力を生み出す鳥の翼


翼で風を切るとき翼上面を通る空気は曲がった分

流れる距離が長くなり、流れる速度も早くなるという。


「水や空気などの流体が、速く流れると圧力が低くなる」

というベルヌーイの定理から

翼上面の気圧は低くなり、

翼上面と翼下面の気圧差が生じる。


圧力というものは高い方から低い方へ流れるので

下から上へ向かう力が働くわけだ

これが「揚力」だ!!


とにかく翼で空を飛ぶには前方から来る空気の流れ

が必要不可欠なのだ!!


先ほど記述で始祖鳥が飛べたという設定は

走ることのできる始祖鳥が走りながら翼を広げ

揚力を得たということである。



■初列風切~それは推進力。■

やはり空を飛び、前に進むには推進力が必要だ。

鳥は羽ばたくことによって推進力を得るわけだが

この推進力を生み出すのが初列風切だ!


初列風切


鳥は大空を羽ばたくわけだが、

それは水面をバタフライ泳法で泳ぐのと同じことらしい。

というわけで

翼を振り下ろすときにこの初列風切で

上斜めから下斜めへと空気を掻くわけだが、

翼を振り上げる時はどうするのだろう。


それは初列風切の左右非対称の風切羽が

役に立つのである。


翼を振り下ろす  翼を振り上げる


この左右非対称の風切羽によって、

空気の抵抗を利用して

ブラインダーのように閉じたり開いたりできるのだ!

翼を振り上げる時の空気抵抗は皆無に等しい。


これでいつでも一定方向に空気を蹴ることが

できるわけだ!



■揚力アップ■

鳥の飛行だけに限らないが

揚力アップ方法がある。

それは飛行中、翼を立てる

つまり迎え角を上げることによって

容易に揚力が上げられるという!


揚力アップ


というわけだ!

もっと翼を立てればさらなる揚力アップが・・・。


しかし迎え角の限度があるらしい


それを越えると・・・。空を飛ぶものにとって

最も恐ろしい事態が起こる。


失速(ストール)だ!

失速とは速度が落ちることではない

いわゆる風を失った翼。

翼が無用の長物に変わる瞬間である


風を失った翼


こうなると墜落である。

なんでも失速して墜落し

地面に叩きつけられた鳥もいるのだという。



■小翼羽~それは制御■


しかし鳥は着地するとき

飛ぶ速度を急激に落とす必要がある。

速度が落ちると揚力も落ちることになり、

翼を立てて、揚力を上げる必要がある。

しかし上げすぎると失速だ!


その失速を防ぐ羽が鳥にはあるという。


小翼羽

「小翼羽」がそれだ。

この羽を立てることによって

高い迎え角でも翼上面の空気の流れを

スムーズにしているのだ。

小翼羽

鳥も着地するときは

大きく翼を立てているが、

よく見ると小翼羽も立てているのだ。



このように、鳥の翼はいろんな機能をもち、

大空を自由に飛ぶ。

これほど、大空での自由度の高い翼をもつ

飛行動物は他にはいない。